平泳ぎをしていると股関節が痛くなってしまう経験が一度はあるかもしれません。
股関節の痛みを改善するためにストレッチをやっているのになかなか良くならないという声も珍しくありません。
ここで平泳ぎの股関節の痛みの原因と改善方法についてご紹介していきたいと思います。
平泳ぎの股関節の痛みの原因
柔軟性不足
平泳ぎでは股関節の大きな動きが求められ、股関節の柔軟性が低いと股関節に変な力がかかりやすくなります。
平泳ぎにおいては特に股関節の内旋や外旋の可動域が重要になります1・2。
一般的に股関節の柔軟性というと開脚などが定番のストレッチではありますが、開脚の柔軟性は平泳ぎとは求められるものとは少し違います。
過度な柔軟性
柔軟性が高いほど平泳ぎで股関節を痛めにくくなると思うかもしれませんが、高すぎる柔軟性には怪我や痛みのリスクがあり、注意が必要です。
そもそも股関節を大きく動かすような平泳ぎの動きは股関節の負荷が大きいのですが、柔軟性が高まると平泳ぎをする時の股関節の動きがさらに大きくなってしまい、股関節の負荷もさらに増えていきます。
他の例になってしまいますが、綺麗な開脚ができるような高い股関節の柔軟性を持つバレエダンサーは意外にも股関節を怪我してしまうことが多いのです。
高すぎる柔軟性は必ずしも怪我を減らすわけではありませんし、むしろ逆効果になってしまうことがあります。
-
バレエダンサーの高い柔軟性と股関節の怪我
続きを見る
このように股関節の痛みを防ぐためには過度のストレッチは避けることが大切であり、ストレッチをやり過ぎると股関節を痛めてしまうことがあります。
筋力不足
平泳ぎでの股関節の痛みには筋力不足も関係しています。
柔軟性が高いほど股関節周りが不安定になってしまうため、股関節周りの筋力を強くしてバランスを取ることが大事になります。
特に重要なのが平泳ぎではあまり使われにくい筋肉を鍛えることであり、筋肉のバランスの偏りを解消することです。
過剰な運動
過剰な運動量は平泳ぎでの股関節の痛みの原因になり、特に普段よりも泳ぐ量が多くなっている時や泳ぐスピードが速くなっているときには股関節を痛めるリスクが高まります。
高い可動域で股関節を大きく動かす平泳ぎのキックは通常よりも股関節のダメージが大きくなりやすいため注意が必要です。
慣れていないのに急に練習を増やすと怪我のリスクが高まり、徐々に身体を慣らして適応させていくことが股関節の痛みを防ぐポイントになります。
痛みがある時には無理をせずに練習を中止することが痛みの悪化を防ぐポイントであり、なかなか痛みが解消されない場合には医療機関に行くことが大切です。
平泳ぎの股関節の痛みの改善方法
休養
平泳ぎにおける股関節の痛みの改善の基本は十分な休養を取ることです。
平泳ぎにによって股関節へのダメージの蓄積によって痛みが起こっていることが多く、休養を取ることで股関節のダメージを回復させていくことが大切です。
回復するのに思っているよりも時間がかかってしまうこともよくあり、焦らずに余裕をもって休養を取ることがポイントになります。
ストレッチ
ストレッチで柔軟性を高めることは平泳ぎのパフォーマンスを高めるのに役立ちます。
股関節の前部分を伸ばすようなストレッチは股関節の内旋の可動域を向上させるのに役立ちます。
また、お尻の後ろを伸ばすようなストレッチは股関節の外旋の可動域を改善するのに役立ちます。
ちなみに開脚ストレッチは股関節の負荷が大きく、痛みを悪化させてしまう可能性があるため、股関節に痛みを抱えているときにはあまりオススメできません。
股関節のトレーニング
平泳ぎの股関節の痛みの予防・改善には、股関節周りの筋肉を鍛えることも大事になります。
平泳ぎでは内転筋、大臀筋、ハムストリングスなどの筋力も求められ、こういった筋肉を鍛えることで股関節が安定しやすくなります。
まずは体重をかけずにできるようなエクササイズから始めていくことがポイントであり、いきなり体重をかけるような重いエクササイズをやってしまうと痛みを悪化させてしまう可能性があるため注意が必要です。
まとめ
平泳ぎの股関節の痛みは股関節の柔軟性不足、過剰な柔軟性やストレッチ、股関節周りの筋力不足、過剰な運動が原因になります。
股関節の痛みを改善するには十分な休養、ストレッチ、弱い筋肉をトレーニングで鍛えることが役立ちます。
<参考文献>
- Jagomägi G, Jürimäe T. The influence of anthropometrical and flexibility parameters on the results of breaststroke swimming. Anthropol Anz. 2005 Jun;63(2):213-9. PMID: 15962572.
- Kippenhan CB. Lower-extremity joint angles used during the breaststroke whip kick and the influence of flexibility on the effectiveness of the kick. ISBS - Conference Proceedings Archive, XX International Symposium on Biomechanics in Sports, ISSN 1999-4168; International Society of Biomechanics in Sports, University of Konstanz. 2002. pp. 31–34.
- Nicol E, Pearson S, Saxby D, Minahan C, Tor E. The Association of Range of Motion, Dryland Strength-Power, Anthropometry, and Velocity in Elite Breaststroke Swimmers. Int J Sports Physiol Perform. 2022 Jun 20;17(8):1222-1230. doi: 10.1123/ijspp.2021-0544. PMID: 35728807.
- Strzała M, Krężałek P, Kaca M, Głąb G, Ostrowski A, Stanula A, Tyka A. Swimming speed of the breaststroke kick. J Hum Kinet. 2012 Dec;35:133-9. doi: 10.2478/v10078-012-0087-4. Epub 2012 Dec 30. PMID: 23486737; PMCID: PMC3588692.
関連記事
-
水泳の呼吸の苦しさを改善するトレーニング
続きを見る
-
水泳の後半の失速を防ぐ持久力トレーニング
続きを見る
-
水泳における足首の柔軟性の重要性について
続きを見る
-
水泳肩(スイマーズショルダー)の原因と改善方法
続きを見る
-
水泳の後半の失速を防ぐ持久力トレーニング
続きを見る