肩の痛み

水泳肩(スイマーズショルダー)の原因と改善方法

2024年2月10日

 

水泳肩(スイマーズショルダー)とは

水泳肩(スイマーズショルダー)とは水泳によって引き起こされる肩の痛みの総称であり、繰り返しの水泳動作によって引き起こされる肩の怪我を言います。

水泳肩

水泳肩による怪我には様々なものがあり、腱板損傷、肩関節唇損傷、肩のインピンジメントなどなど色々な可能性が考えられます。

重大な肩の損傷の疑いがある場合には整形外科で診断を受けることが大切です。

 

水泳肩の原因

柔軟性の低下

肩の柔軟性の低下は水泳での肩を痛めるリスクが高まることが報告されています1・2

肩関節の柔軟性だけでなく肩甲骨の柔軟性も泳ぎに大きく関わっており、水泳肩へとつながる可能性があります。

他にも股関節の柔軟性も水泳肩に影響している可能性が指摘されており、水泳肩を抱えているスイマーはローリング動作において股関節の可動域が低下していることが報告されています

水泳ローリング

 

関節の緩さ

水泳選手は長年泳いでいると徐々に肩が緩くなってくることが報告されていて2・4、肩が柔らかすぎることで肩を痛めてしまう可能性があります。

実際に柔軟性が低い水泳選手だけでなく、柔軟性が高すぎる水泳選手の肩の怪我が多いことが報告されています

高い柔軟性がある場合には適度な筋力がないと、うまくバランスをとることができず、肩を痛めやすくなってしまいます。

水泳選手

 

肩甲骨の機能不全

水泳選手は日々のスイムで肩周りの大きな筋肉は十分に発達していることが多いのですが、肩のインナーマッスルや肩甲骨周りの筋肉などの細かい筋肉が弱くなりがちで、これが水泳の肩の痛みにつながるリスクがあります1・2

肩甲骨周りの筋肉のバランスが乱れていると、肩甲骨の動きに問題が生じてしまったり、肩に負担がかかりやすい泳ぎ方になってしまう可能性があります。

水泳選手肩甲骨

 

泳ぎ方のクセ

肩に負担のかかりやすい泳ぎ方のクセというものがあり、水泳のフォームが悪いことで肩の痛みにつながることがあると言われています。

例えばクロールなどのストロークの時に肩が必要以上に力んでいて、肩が上がっていたり前に出ていたりすると、肩に負担がかかりやすくなります。

他にもストロークからのリカバリー時に肘が高く上がっている状態では、肩がニュートラルポジションから外れた状態で水圧を受けるわけで肩の痛みにつながりやすくなります。

さらにはストロークが水面に入る時に手を必要以上に遠くに伸ばしていると、肩が不安定な状態のままストロークをしてしまうことになり、肩の痛みへつながる可能性があります。

一方で既に肩を痛めている水泳選手は肩を守るためにスイム時の肩の動きが小さくなっている場合もあります。

 

多すぎる運動量

慢性的なダメージの蓄積は水泳肩と関係していて、スイムの量が多いと肩の痛みにつながりやすいことが報告されています

特に普段の練習量に比べて急激にスイムの量を増やすと肩を痛めるリスクが高くなります

水泳選手

練習でのスイムの距離が長いほど疲労が蓄積して肩の柔軟性も落ちやすく、またトレーニング強度が高いほど肩の柔軟性も落ちやすいことが報告されています8・9

激しい練習をするほどに肩のケアが重要になってくるかと思います。

 

水泳肩の改善方法

柔軟性の向上

ストレッチなどで肩の柔軟性を高めることは水泳での肩の痛みを防ぐのに役立ちます。

肩の柔軟性向上は怪我を防ぐだけでなく水泳のパフォーマンス向上にも役立つので、日々の肩のケアをしっかりと行うことが大切です。

水泳選手の肩の柔軟性を上げるストレッチとトレーニング

続きを見る

 

肩甲骨のトレーニング

水泳選手は肩の柔軟性だけでなく肩周りの筋肉もしっかりと鍛えておくことが肩の痛みを防ぐために大切です。

肩を痛めた水泳選手は肩甲骨周りの筋力が低下している傾向にあり、肩のローテーターカフや菱形筋など肩甲骨周りのトレーニングに取り組むことで水泳肩を防ぎやすくなることが報告されています10〜12

 

 

まとめ

水泳肩は繰り返しのスイミングによって肩にダメージが蓄積されて引き起こされ、肩の柔軟性不足や肩甲骨の機能不全、泳ぎ方のクセや肩関節が緩すぎることなどによってリスクが高まります。

運動量の調整や十分な休養、日々の肩のケアや肩甲骨周りのトレーニングなどが水泳肩の改善に役立ちます。

 

<参考文献>

  1. Struyf F, Tate A, Kuppens K, Feijen S, Michener LA. Musculoskeletal dysfunctions associated with swimmers' shoulder. Br J Sports Med. 2017 May;51(10):775-780. doi: 10.1136/bjsports-2016-096847. Epub 2017 Feb 11. PMID: 28189997.
  2. Hill L, Collins M, Posthumus M. Risk factors for shoulder pain and injury in swimmers: A critical systematic review. Phys Sportsmed. 2015 Nov;43(4):412-20. doi: 10.1080/00913847.2015.1077097. Epub 2015 Sep 14. PMID: 26366502.
  3. Vila Dieguez O, Barden JM. Body roll differences in freestyle swimming between swimmers with and without shoulder pain. Sports Biomech. 2022 Nov;21(10):1277-1290. doi: 10.1080/14763141.2020.1760923. Epub 2020 Jun 5. PMID: 32500807.
  4. De Martino I, Rodeo SA. The Swimmer's Shoulder: Multi-directional Instability. Curr Rev Musculoskelet Med. 2018 Jun;11(2):167-171. doi: 10.1007/s12178-018-9485-0. PMID: 29679207; PMCID: PMC5970120.
  5. Mise T, Mitomi Y, Mouri S, Takayama H, Inoue Y, Inoue M, Akuzawa H, Kaneoka K. Hypomobility in Males and Hypermobility in Females are Risk Factors for Shoulder Pain Among Young Swimmers. J Sport Rehabil. 2022 Feb 1;31(1):17-23. doi: 10.1123/jsr.2020-0488. Epub 2021 Sep 20. PMID: 34544902.
  6. Feijen S, Tate A, Kuppens K, Claes A, Struyf F. Swim-Training Volume and Shoulder Pain Across the Life Span of the Competitive Swimmer: A Systematic Review. J Athl Train. 2020 Jan;55(1):32-41. doi: 10.4085/1062-6050-439-18. PMID: 31935141; PMCID: PMC6961642.
  7. Feijen S, Struyf T, Kuppens K, Tate A, Struyf F. Prediction of Shoulder Pain in Youth Competitive Swimmers: The Development and Internal Validation of a Prognostic Prediction Model. Am J Sports Med. 2021 Jan;49(1):154-161. doi: 10.1177/0363546520969913. Epub 2020 Nov 19. PMID: 33211610.
  8. Yoma M, Herrington L, Mackenzie TA. Cumulative Effects of a Week's Training Loads on Shoulder Physical Qualities and Wellness in Competitive Swimmers. Int J Sports Phys Ther. 2021 Dec 1;16(6):1470-1484. doi: 10.26603/001c.29875. PMID: 34956735; PMCID: PMC8637267.
  9. Yoma M, Herrington L, Mackenzie TA, Almond TA. Training Intensity and Shoulder Musculoskeletal Physical Quality Responses in Competitive Swimmers. J Athl Train. 2021 Jan 1;56(1):54-63. doi: 10.4085/1062-6050-0357.19. PMID: 33176360; PMCID: PMC7863595.
  10. Tavares N, Dias G, Carvalho P, Vilas-Boas JP, Castro MA. Effectiveness of Therapeutic Exercise in Musculoskeletal Risk Factors Related to Swimmer's Shoulder. Eur J Investig Health Psychol Educ. 2022 Jun 2;12(6):601-615. doi: 10.3390/ejihpe12060044. PMID: 35735465; PMCID: PMC9222170.
  11. Yoma M, Herrington L, Mackenzie TA. The Effect of Exercise Therapy Interventions on Shoulder Pain and Musculoskeletal Risk Factors for Shoulder Pain in Competitive Swimmers: A Scoping Review. J Sport Rehabil. 2022 Feb 23;31(5):617-628. doi: 10.1123/jsr.2021-0403. PMID: 35196648.
  12. Kennedy J, Otley T, Hendren S, Myers H, Tate A. Sink or Swim? Clinical Objective Tests and Measures Associated with Shoulder Pain in Swimmers of Varied Age Levels of Competition: A Systematic Review. Int J Sports Phys Ther. 2024 Jan 2;19(1):1381-1397. doi: 10.26603/001c.90282. PMID: 38179580; PMCID: PMC10761606.
  13. Matzkin E, Suslavich K, Wes D. Swimmer's Shoulder: Painful Shoulder in the Competitive Swimmer. J Am Acad Orthop Surg. 2016 Aug;24(8):527-36. doi: 10.5435/JAAOS-D-15-00313. PMID: 27355281.

-肩の痛み

© 2020 biomechclinic.com