水泳をしていると肩の痛みに悩まされることはありませんか?それはもしかしたら『水泳肩』かもしれません。水泳肩は肩の痛みの原因になるだけでなく、パフォーマンス低下の原因にもなります。
本記事では水泳肩の原因を詳しく解説し、効果的な改善方法をご紹介します。
水泳肩(スイマーズショルダー)とは
水泳肩(スイマーズショルダー)とは水泳によって引き起こされる肩の痛みの総称であり、繰り返しの水泳動作によって引き起こされる肩の怪我を言います。
水泳肩による怪我には様々なものがあり、肩の骨同士がぶつかるインピンジメント症候群、腕を動かす筋肉を損傷する上腕二頭筋長頭腱炎やインナーマッスルの腱板損傷などなど色々な可能性が考えられます。
重大な肩の損傷の疑いがある場合には整形外科で診断を受けることが大切です。
水泳肩の原因
柔軟性の低下
肩の柔軟性の低下は水泳での肩を痛めるリスクが高まることが報告されています1・2。
肩関節の柔軟性だけでなく肩甲骨の柔軟性も泳ぎに大きく関わっており、水泳肩へとつながる可能性があります。
他にも股関節の柔軟性も水泳肩に影響している可能性が指摘されており、水泳肩を抱えているスイマーはローリング動作において股関節の可動域が低下していることが報告されています3。
関節の緩さ
水泳選手は長年泳いでいると徐々に肩が緩くなってくることが報告されていて2・4、肩が柔らかすぎることで肩を痛めてしまう可能性があります。
実際に柔軟性が低い水泳選手だけでなく、柔軟性が高すぎる水泳選手の肩の怪我が多いことが報告されています5。
高い柔軟性がある場合には適度な筋力がないと、うまくバランスをとることができず、肩を痛めやすくなってしまいます。
肩甲骨の機能不全
水泳選手は日々のスイムで肩周りの大きな筋肉は十分に発達していることが多いのですが、肩のインナーマッスルや肩甲骨周りの筋肉などの細かい筋肉が弱く、肩甲骨の機能不全になりがちで、これが水泳の肩の痛みにつながるリスクがあります1・2。
肩甲骨の動きが悪いと肩関節の可動域が制限されてしまい、腕の力に頼りがちで肩の負担が大きくなりますし、力が入りにくく水泳のパフォーマンス低下にもつながります。
このため肩甲骨の機能不全は肩に負担がかかりやすい効率の悪い泳ぎ方につながります。
泳ぎ方のクセ
肩に負担のかかりやすい泳ぎ方のクセというものがあり、水泳のフォームが悪いことで肩の痛みにつながることがあると言われています。
例えばクロールなどのストロークの時に肩が必要以上に力んでいて、肩が前に出ていたりすると、肩に負担がかかりやすくなります。
他にもストロークからのリカバリー時に肘を上げるときに、体幹部や胸椎の回旋動作が少なく、肩だけで動かしている場合には肩関節が詰まってしまうような高い負荷がかかりやすくなります。
さらにはストロークが水面に入る時に手を必要以上に遠くに伸ばしていると、肩が不安定な状態のままストロークをしてしまうことになり、肩に負荷がかかりやすくなります。
一方で既に肩を痛めている水泳選手は肩を守るためにスイム時の肩の動きが小さくなっている場合もあります。
多すぎる運動量
慢性的なダメージの蓄積は水泳肩と関係していて、スイムの量が多いと肩の痛みにつながりやすいことが報告されています6。
特に普段の練習量に比べて急激にスイムの量を増やすと肩を痛めるリスクが高くなります7。
練習でのスイムの距離が長いほど疲労が蓄積して肩の柔軟性も落ちやすく、またトレーニング強度が高いほど肩の柔軟性も落ちやすいことが報告されています8・9。
このため激しい練習をするほどに肩のケアが重要になってくるかと思います。
水泳肩の改善方法
柔軟性の向上
ストレッチなどで肩の柔軟性を高めることは水泳での肩の痛みを防ぐのに役立ちます。
肩の柔軟性向上は怪我を防ぐだけでなく水泳のパフォーマンス向上にも役立つので、日々の肩のケアをしっかりと行うことが大切です。
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水泳選手の肩の柔軟性を上げるストレッチとトレーニング
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肩甲骨のトレーニング
水泳選手は肩の柔軟性だけでなく肩周りの筋肉もしっかりと鍛えておくことが肩の痛みを防ぐために大切です。
肩を痛めた水泳選手は肩甲骨周りの筋力が低下している傾向にあり、肩のローテーターカフや菱形筋など肩甲骨周りのトレーニングに取り組むことで水泳肩を防ぎやすくなることが報告されています10〜12。
まとめ
水泳肩は肩の柔軟性不足、肩甲骨の機能不全、不適切な泳ぎ方、過剰な練習量など、様々な要因が複合的に関与して発生します。
水泳肩の予防と改善には肩甲骨周りのトレーニング、柔軟性の向上、適切なフォームの習得、練習量の調整などが重要です。痛みを感じたら無理せず専門家に相談することも忘れてはいけません。
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