ランニング時のニーインとは?
ニーインとは膝が内側に入ってしまう状態であり、ランニング時に膝が内側に入ってしまうようなニーインの状態で走ると膝の負担が増えると言われています。
特にランナーにとってはニーインは好ましくなく、ニーインを抱えているランナーはランナー膝に繋がりやすいと言われています。
ランナー膝とは膝の外側が痛くなってくる疾患であり腸脛靭帯炎とも呼ばれ、ランニングで腸脛靭帯が何度もこすれることによって炎症を引き起こし、膝の外側に痛みが生じると一般的には考えられています。
ランニング時のニーインは腸脛靭帯をより大きく引っ張ってしまうため、ランナー膝に繋がりやすいと言えるわけです1。
ランニング時のニーインの原因
筋肉のバランスの乱れ
膝周りの筋肉のバランスの乱れがランニング時のニーインを引き起こすと考えられています。
特定の筋肉が強すぎると膝がその方向に引っ張られやすくなり、特定の筋肉が弱かったりすると拮抗する力が働かなくなってしまいます。
また、特定の筋肉が硬いことでも同様に膝を引っ張ってしまうので、過剰な筋肉の硬さがニーインを生み出しているという可能性も考えられます。
足首やシューズの乱れ
ランニング時のニーインは膝ではなく、足元が原因であるという考え方もあります。
例えば足首が外側に傾いていると、そのバランスを取るために膝は内側に入らざるを得ないといった具合に足首やシューズの乱れがニーインを生み出す可能性があるわけです。
関節の不安定さ
股関節や膝関節に不安定さがあるとニーインなどの動きを誘発する可能性が考えられ、ランナー膝へと繋がっていく可能性があります2。
関節が不安定だとグラつきやすい状態であり、ランニング時などに膝がブレやすくなるというわけです。
関節の不安定さは主に全体的な脚力が不足していることやインナーマッスルの働きが低下していることが原因として考えられます。
他にもバランス感覚の低下なども膝関節が不安定になる要因になることもあります。
骨格によるもの
生まれつきの骨格の歪みがランニング時のニーインの原因になる可能性も考えられます。
この場合には先天的な骨の形が要因になっているため解決することは難しいと言われています。
私自身も先天的な骨の形がニーインの原因であると日本トップクラスの駅伝チームのトレーナーさんから言われたことがあり、10年近くニーインの症状がありました。
しかし、試行錯誤の末に私自身のニーインはかなり解消されました。
先天的な骨格の歪みというのは簡単に診断できるものではなく、誤診も多いのではないかと思います。
ランニング時のニーインの改善方法
シューズ
ニーインなどの動きがランナー膝につながりやすいことから、インソールなどでランニングフォームを修正することがランナー膝を防ぐのに役に立つ可能性があります。
一般的にオーダーメイドのインソールは精度が高く、ランニング時の負荷を軽減しやすいのですが、費用が高くなりやすい傾向にあります。
一方でスポーツ用品店で市販されているインソールなどは比較的安価ではありますが、うまく調整できなかったりすることも多く見受けられます。
柔軟性の向上
膝周りの硬い筋肉をほぐすことで膝が内側に入ることを防ぎやすくなり、ストレッチやフォームローラーなどの筋膜リリースが使われることが多々あります。
ストレッチやフォームローラーは一時的な効果があり、ランナー膝の痛みを減らすなどの効果がみられることが実際に報告されています4。
しかし、柔軟性の向上による長期的な効果は微妙であることも報告されています5。
簡単なニーインならばストレッチやフォームローラーで改善できるかもしれませんが、筋肉をほぐすだけでは簡単に解消できないようなしつこいものも多い印象です。
トレーニング
ランナー膝を発症しているランナーは大臀筋や中臀筋などのお尻の筋肉のうまく働いていないことが報告されています2・3。
お尻の筋肉にはニーインなどを防ぐ働きがあり、お尻の筋肉を鍛えることがランナー膝などの怪我を防ぐのに役立つと言われています4。
しかし、どんなにお尻を鍛えてもニーインが解消されないというケースも珍しくありません。
医学論文などではお尻の筋肉が中心に報告されていますが、他の筋肉が原因になっていることも多く、筋力不足が見逃されてしまっていることが多々ある印象です。
例えば内転筋の筋肉の重要性は比較的認識されていますが、内転筋の鍛え方が悪かったりします。
また、股関節の前部や足部の筋肉についてはその重要性がそもそも認識されていないケースも多々あります。
ランナー膝が治らない場合に考えられる原因
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<参考文献>
Hamill J, Miller R, Noehren B, Davis I. A prospective study of iliotibial band strain in runners. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2008;23(8):1018-1025.
Foch E, Brindle RA, Pohl MB. Lower extremity kinematics during running and hip abductor strength in iliotibial band syndrome: A systematic review and meta-analysis. Gait Posture. 2023 Mar;101:73-81. doi: 10.1016/j.gaitpost.2023.02.001. Epub 2023 Feb 4. PMID: 36758425.
Baker RL, Souza RB, Rauh MJ, Fredericson M, Rosenthal MD. Differences in Knee and Hip Adduction and Hip Muscle Activation in Runners With and Without Iliotibial Band Syndrome. PM R. 2018;10(10):1032-1039.
- Friede MC, Innerhofer G, Fink C, Alegre LM, Csapo R. Conservative treatment of iliotibial band syndrome in runners: Are we targeting the right goals? Phys Ther Sport. 2022 Mar;54:44-52. doi: 10.1016/j.ptsp.2021.12.006. Epub 2021 Dec 27. PMID: 35007886.
- Opara M, Kozinc Ž. Stretching and Releasing of Iliotibial Band Complex in Patients with Iliotibial Band Syndrome: A Narrative Review. J Funct Morphol Kinesiol. 2023 Jun 4;8(2):74. doi: 10.3390/jfmk8020074. PMID: 37367238; PMCID: PMC10299000.