股関節の痛み

平泳ぎの股関節の柔軟性を高めるストレッチと痛みの対策

2024年9月14日

 

平泳ぎのキックがうまくいかない、ストレッチをしているのに動きが悪いといった悩みがあるかもしれません。

ここで平泳ぎのキックにおける柔軟性、ストレッチ、痛みの対策についてご紹介していきたいと思います。

 

平泳ぎの股関節の柔軟性

平泳ぎにおいて股関節の柔軟性は重要であり、特に股関節の内旋(膝の外旋)の可動域が平泳ぎのパフォーマンスとの関連性が強いことが報告されています1・2

股関節の内旋の可動域

股関節の内旋の可動域が大きいとキックの際により広い面積で水を捉えることができるため、推進力を生み出しやすくなります。

平泳ぎキック

また、股関節の外旋の可動域や足首を内側に動かす内反の可動域も平泳ぎのキックに影響を及ぼします1・2

股関節の外旋の可動域平泳ぎのキック

 

股関節の痛みや怪我のリスク

平泳ぎのパフォーマンスを高めるために開脚などで高い柔軟性を獲得しようと考えるかもしれませんし、柔軟性が高い方が怪我をしないと思うかもしれません。

股関節開脚ストレッチ

しかし、高すぎる柔軟性には怪我や痛みのリスクがあり、注意が必要です。

例えば高い柔軟性で開脚ができるバレエダンサーは股関節にダメージを受けていることが多々あり、高すぎる柔軟性は必ずしも怪我を減らすわけではありません。

バレエダンサー
バレエダンサーの高い柔軟性と股関節の怪我

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股関節の痛みを防ぐためには過度のストレッチは避けることが大切で、ストレッチをやり過ぎると股関節を痛めてしまうことがあります。

また、高い可動域で股関節を大きく動かす平泳ぎのキックは通常よりも股関節のダメージが大きくなりやすいため、練習量が多くなりすぎないように注意することが大切です。

平泳ぎ

慣れていないのに急にストレッチや練習を増やすと怪我のリスクが高まり、十分な休養を取りながら、徐々に身体を慣らして適応させていくことが股関節の痛みを防ぐポイントになります。

痛みがある時には無理をせずに練習を中止することが痛みの悪化を防ぐポイントであり、なかなか痛みが解消されない場合には医療機関に行くことが大切です。

 

平泳ぎのパフォーマンスを高めるストレッチ

ストレッチで柔軟性を高めることは平泳ぎのパフォーマンスを高めるのに役立ちます。

股関節の前部分を伸ばすようなストレッチは股関節の内旋(膝の外旋)の可動域を向上させるのに役立ちます。

股関節のストレッチ

また、お尻の後ろを伸ばすようなストレッチは股関節の外旋の可動域を改善するのに役立ちます。

股関節ストレッチ

太ももの内側を伸ばすようなストレッチなども股関節を大きく使ったキックをするのに役立ちます。

開脚ストレッチ

開脚なども股関節の柔軟性を高めるのに役立ちますが、平泳ぎでは上体を前傾した状態で開脚するわけではないため、平泳ぎとは求められる柔軟性が少し違います。

開脚ストレッチ

ストレッチで伸ばすだけではほぐせない筋肉もあるため、フォームローラーやボールなどを使ってお尻や太ももの内側をほぐすことも役立ちます。

フォームローラー

 

股関節のトレーニング

平泳ぎの股関節の動きは柔軟性だけでなく、股関節周りの筋力も関係しています

股関節周りの筋力が弱い場合には平泳ぎの際の股関節の可動域が小さくなってしまい、キックの推進力が弱まってしまうことがあります。

股関節の筋力と言えばスクワットやジャンプなどが一般的ですが、ワイドスクワットのように平泳ぎに近い形での筋力発揮も大事なポイントになります。

ワイドスクワット

ワイドスクワットを綺麗に行うためには内転筋、大臀筋、ハムストリングスなどの筋力も求められ、こういった筋肉を鍛えることでキックがスムーズになります。

内転筋ハムストリングス大臀筋

また、内転筋や中殿筋などの股関節周りの細かい筋肉を鍛えることで平泳ぎでの股関節の痛みが出にくくなります。

内転筋エクササイズ

中殿筋エクササイズ

まとめ

平泳ぎのキックでは股関節の内旋・外旋の柔軟性が重要であり、可動域が高いことでキックの際により水を捉えて推進力が高まります。

高い可動域での平泳ぎのキックは股関節へのダメージも大きく、練習量が多くなり過ぎないように注意が必要であり、徐々に身体を慣らすことが大事になります。

股関節周りの細かい筋肉を鍛えることで股関節の痛みの予防、平泳ぎのキックの改善にも役立ちます。

 

<参考文献>

  1. Jagomägi G, Jürimäe T. The influence of anthropometrical and flexibility parameters on the results of breaststroke swimming. Anthropol Anz. 2005 Jun;63(2):213-9. PMID: 15962572.
  2. Kippenhan CB. Lower-extremity joint angles used during the breaststroke whip kick and the influence of flexibility on the effectiveness of the kick. ISBS - Conference Proceedings Archive, XX International Symposium on Biomechanics in Sports, ISSN 1999-4168; International Society of Biomechanics in Sports, University of Konstanz. 2002. pp. 31–34.
  3. Nicol E, Pearson S, Saxby D, Minahan C, Tor E. The Association of Range of Motion, Dryland Strength-Power, Anthropometry, and Velocity in Elite Breaststroke Swimmers. Int J Sports Physiol Perform. 2022 Jun 20;17(8):1222-1230. doi: 10.1123/ijspp.2021-0544. PMID: 35728807.
  4. Strzała M, Krężałek P, Kaca M, Głąb G, Ostrowski A, Stanula A, Tyka A. Swimming speed of the breaststroke kick. J Hum Kinet. 2012 Dec;35:133-9. doi: 10.2478/v10078-012-0087-4. Epub 2012 Dec 30. PMID: 23486737; PMCID: PMC3588692.

 

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