膝痛

ランナー膝が治らない場合に考えられる原因

2024年8月22日

 

ランナー膝とは?

ランナー膝とは膝の外側が痛くなるスポーツ障害であり、正式には「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」と言います。

ランニングによって膝に繰り返し負荷がかかることで発生し、太ももの外側にある腸脛靭帯がランニング時に擦れることで炎症が起こり、膝のに痛みを引き起こすと考えられています。

膝を痛めているランナー

近年ではスポーツ医学の発展によってランナー膝の予防や治療が進化してきていますが、いつまで経ってもランナー膝が思うように治らない、ランナー膝を繰り返してしまうような事例も起こり得ます。

 

ランナー膝が治らない原因

膝に負荷がかかる走り方である

膝に負荷がかかりやすいランニングフォームや着地衝撃が大きい路面で走っていると、ランナー膝になりやすいと言われています。

ランニングシューズが合っていないと膝に負担がかかりやすく、最初はフィットしていたとしても徐々に劣化するので定期的にシューズを変えることも大切です。

しかし、こういった要因は膝の物理的な負荷が10%〜20%くらい変わるというものに過ぎません1・2

アスファルトのランニング

ランニングフォームやランニングシューズが悪いことで走行距離が少し落ちてしまうことや、少しばかり怪我をしやすいということは起こり得ますが、

ランナー膝がいつまで経っても治らないことの直接的な原因にはなりにくいと言えます。

 

ランナー膝が治らないからとランニングフォームの改良を続けたり、いくつものランニングシューズを試してみても思うような結果を得られない事例というのは珍しくない印象です。

怪我なく走れる距離を増やすにはこういったことは確かに役に立つのですが、いつまでもランナー膝が治らない原因をここに求めるのは合理的ではないかと思います。

 

ニーインが改善されていない

ランナー膝の原因として有名なものがランニング時のニーインであり、これに悩まされ続けているランナーも多いのではないでしょうか。

ストレッチやマッサージなどで一時的にニーインが改善されるのですが、すぐに元に戻ってしまうことも珍しくありません

ニーインを改善するためには地道なことを続ける必要があります。

ランニングニーイン
ランニング時のニーインの原因と改善方法について

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しかしながら、ランニング時のニーインも膝の物理的な負荷がせいぜい10%〜20%くらいの違ってくるものに過ぎません4・5

このためニーインは怪我をしないで走れる走行距離が若干落ちる原因にはなるものの、いつまでもランナー膝が治らない原因であるとは言い難いと思います。

 

休養期間が足りていない

ランナー膝を治すための基本は十分な休養を与えることであり、無理して走っているとランナー膝をいつまでも引きずってしまうことが珍しくありません。

また、ランナー膝を抱えている時にリハビリ目的での筋トレや自転車に乗っている場合には膝にダメージが溜まり続けている可能性があり、十分な休養を取れていない可能性も考えられます。

他にもストレッチやマッサージで一時的に膝の痛みが軽減することをランナー膝が治ったと勘違いして走ってしまう事例もあります。

ストレッチやマッサージでランナー膝のダメージが回復したわけではなく、下手に走ってしまうとランナー膝が悪化してしまうことがあります。

そして、十分な休養期間が取れない理由のひとつに休養期間の見積もりが甘いことも珍しくありません。

ランニングのパフォーマンスを高めるためには走り続けることが大事であり、できるだけ少ない休養に抑えておきたいという心理もあるかもしれません。

数週間休むことでランナー膝の痛みが完治していなくとも、休むことで痛みが軽くなっているのならば休養が効いていると言えるので、膝が回復するまでしっかりと休むことが賢明であると言えます。

ランナー膝の痛みを改善するには想像しているよりも時間がかかることは珍しくありません。

 

練習メニューの組み立て方がイマイチ

ランナー膝を繰り返してしまう原因のひとつに、ランナーのキャパシティを超えたハードな練習をしてしまうというものがあります。

例えば高強度のランニングを頻繁に取り入れたり、長距離のロング走を頻繁に行うなど、負荷が高すぎる練習は怪我を引き起こしやすいと言えます。

どんなに休養を取ろうとも、どんなに優れた医療を受けようとも、過酷な練習メニューが課されているようではランナー膝を繰り返してしまいます。

ランニング

 

理論にこだわりすぎている

オーバートレーニングは良くないと頭でわかっていても、過剰なトレーニングによって身体を痛めてしまうことは珍しくありません。

トレーニング理論やトレーニング計画にこだわり過ぎていると、自分自身の現実的なキャパシティを冷静に見極めることが難しくなります。

ランニングの理論ではこういう練習メニューをこなさないといけない〜、スポーツ医学の理論では〇〇をやった方がいい〜、こういった理論に囚われ過ぎてしまうことが起こることは珍しくありません。

陸上トラックレース

世界的に有名なランナーやランニングコーチなどから理論や練習メニューを学び、完璧と思えるようなプランを作り上げることが逆に首を絞めてしまうことは珍しくありません。

プラン通りにならない、私の身体はおかしいのではないか?と医学的な問題があると勘違いしてしまうランナーも少なからずいる印象です。

この場合には現実を冷静に見つめなおして、現実的な練習メニューにすることで怪我が解決に向かうことが多々あります。

 

他にも医療が悪いという勘違いもよくある事例です。

治療家の腕が悪いからランナー膝が治らない、どんなに優秀な治療家を探し続けても怪我が解決しないという事例も珍しくありません。

どんなに優秀な治療家をつけようとも、本人の認識に歪みが生じている状態では無茶なトレーニングによって怪我が思うように治らないということが起こり得ます。

怪我に悩まされるほどに「自分は悪くない、他の誰かが悪い」という気持ちになりやすいので、自分自身を冷静に見つめ直すことは難しいと思いますが・・・

 

脳神経に異常をきたしている

2〜3ヶ月休んでもランナー膝の痛みが少しも軽減されない、だけど整形外科でのレントゲンやMRI検査では異常が見つからないというケースも少なからず起こります。

十分な休養を得られないまま無茶苦茶な練習を繰り返してしまうと、こういった珍しい現象が起こることがあります。

放っておくと無茶苦茶な練習をしてしまうので身体を守るために痛みを発して動けないようにする、というように脳神経が無理矢理ブレーキをかけていることが原因として考えられます。

ランニング

この複雑で厄介な症状を解決するためには負荷の軽いトレーニングからやり直して、安心して身体を動かせるということを身体に覚え込ませることが役に立ちます。

安心安全にランニングができるということを学習すると、本能的なブレーキが少しずつ解除され、原因不明かと思われた痛みが少しずつ楽になっていくことが珍しくありません。

 

まとめ

ランナー膝が治らない原因としてランニングフォームやランニングシューズなどに原因があると思うかもしれませんが、こういった要因は膝の物理的な負荷が10〜20%しか変わらないことが多々あります。

自分自身のキャパシティを冷静に見極めることができず、十分な休養がないまま負荷の高い練習を繰り返すとランナー膝が泥沼化してしまうことがあります。

 

<参考文献>

  1. Bonacci J, Vicenzino B, Spratford W, Collins P. Take your shoes off to reduce patellofemoral joint stress during running. Br J Sports Med. 2014 Mar;48(6):425-8. doi: 10.1136/bjsports-2013-092160. Epub 2013 Jul 13. PMID: 23850795.
  2. Bonacci J, Hall M, Fox A, Saunders N, Shipsides T, Vicenzino B. The influence of cadence and shoes on patellofemoral joint kinetics in runners with patellofemoral pain. J Sci Med Sport. 2018 Jun;21(6):574-578. doi: 10.1016/j.jsams.2017.09.593. Epub 2017 Oct 6. PMID: 29054746.
  3. Opara M, Kozinc Ž. Stretching and Releasing of Iliotibial Band Complex in Patients with Iliotibial Band Syndrome: A Narrative Review. J Funct Morphol Kinesiol. 2023 Jun 4;8(2):74. doi: 10.3390/jfmk8020074. PMID: 37367238; PMCID: PMC10299000.
  4. Noehren B, Davis I, Hamill J. ASB clinical biomechanics award winner 2006 prospective study of the biomechanical factors associated with iliotibial band syndrome. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2007 Nov;22(9):951-6. doi: 10.1016/j.clinbiomech.2007.07.001. Epub 2007 Aug 28. PMID: 17728030.
  5. Noehren B, Schmitz A, Hempel R, Westlake C, Black W. Assessment of strength, flexibility, and running mechanics in men with iliotibial band syndrome. J Orthop Sports Phys Ther. 2014 Mar;44(3):217-22. doi: 10.2519/jospt.2014.4991. Epub 2014 Jan 22. PMID: 24450366; PMCID: PMC4258688.

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