肩の痛み

ウェイトトレーニングによる肩の痛みの原因と対策

2024年2月4日

 

ウェイトトレーニングの肩の怪我の種類

ウェイトトレーニングをやり過ぎてしまうと肩を痛めてしまうことがあり、軽微な損傷から治るのに数ヶ月かかってしまうもの、酷いものになると選手生命を左右してしまう怪我を負ってしまうこともあります。

ウェイトトレーニング肩の痛み

例えばベンチプレスによってベンチプレスショルダーと呼ばれる小胸筋などの損傷、上腕三頭筋の損傷、酷い場合には大胸筋の断裂などが起こり得ます

他にもウェイトトリフターズショルダーと呼ばれる鎖骨の骨溶解、肩関節の脱臼、上腕二頭筋腱鞘炎や断裂など、これらにとどまらず様々な怪我が考えられます

怪我の種類によって対処方法が変わってくることがあるため、酷い損傷の疑いがある場合には整形外科で精密検査を受けることが大切です。

 

ウェイトトレーニングの肩の痛みの原因

トレーニング時のフォーム

誤ったフォームでウェイトトレーニングをすると過剰に肩に負担がかかりやすく、怪我へとつながってしまいます。

最近では動画などで良いフォームを学べるので、肩に関するトレーニング種目のフォームが著しく悪いという事例は少なくなってきている印象はあります。

しかし、重量が重くなってくるほどフォームに注意が必要であり、軽い重量ではちゃんとできていたものが、重い重量ではフォームが乱れやすくなるので注意が必要です。

ベンチプレス

明らかに誤ったトレーニングフォームとは言えないものの、怪我のリスクがあるベンチプレスのフォームとしてグリップの幅が広いというものが報告されています

グリップの幅が広いとベンチプレスで重い重量を上げやすくなるというメリットがあるのですが、このフォームは肩の負担も大きくなるというデメリットもあります。

 

過剰な負荷

重量、回数、セット数などウェイトトレーニングの負荷が多すぎる場合にもウェイトトレーニングで肩を痛める原因になります。

例えば10回3セットがウェイトトレーニングの回数として使われることが多いかと思いますが、これで怪我をしないかというと微妙なところではあります。

このトレーニング量は明らかな誤りではないのですが、トレーニングの負荷がその人のキャパシティを超えてしまうと10回3セットのウェイトトレーニングですら怪我をしてしまうことがあるわけです。

ウェイトトレーニング肩の違和感

普段は問題なくできているトレーニングだったとしても数ヶ月と続けていると肩を痛めてしまうこともあります。

ウェイトトレーニングの負荷は少しずつ蓄積されていって、数ヶ月後に遅れて痛みとして表れるということは珍しくありません。

 

トレーニングメニューの組み立て方

好きなトレーニングばかりやる、見栄えをよくするために特定の筋肉ばかりを鍛える、といったことをやっている人はウェイトトレーニングで肩を痛めるリスクが高まります。

具体的な例として、ムキムキの肉体を披露するために胸筋ばかりを鍛えて背筋を鍛えていないと、バランスが乱れやすく、肩を痛めるリスクが高まります。

他にもベンチプレスや懸垂などビッグリフトなどのトレーニングは積極的だけれども、腕の筋肉や僧帽筋などの筋肉は鍛えないというのも好ましくありません。

インナーマッスルなどの細かい筋肉を鍛えることも肩の怪我を減らすためにはとても大事で、肩を痛めている人は僧帽筋下部の働きが弱いことなど報告されています

 

ウェイトトレーニングの肩の痛みの対策

休養

ウェイトトレーニングで肩を痛めてしまった場合には、十分な休養を取ることが大切です。

休養を取るというのは歯痒いかもしれませんが、ウェイトトレーニングでの肩を痛めた場合というのはトレーニング量がキャパシティを超えてしまっている可能性が高いわけです。

オーバートレーニングによる痛みには十分な休息を与えることが必要で、ストレッチや身体のバランスを修正すればすぐに痛みが収まるわけではありません。

ウェイトトレーニング中に肩の痛みが出て数日や1週間で肩が「おかしいんです」という方がいらっしゃるのですが、ウェイトトレーニングによる肩の痛みが数日や1週間といった短い休養期間で治ると考えるのは認識が甘いかなと思います。

まずは2〜3週間くらい休んでみて様子を見てみることをお勧めしています。それで痛みが軽減されるようでしたら、オーバートレーニングが肩の痛みの原因の可能性が高く、十分に回復するまで休息を与えることが効果的です。

 

運動量の調整

ウェイトトレーニングが肩によくないかというと、決してそうではありません。

むしろ、適度な量でウェイトトレーニングをやっている人のほうが肩を痛めにくいという研究結果があります

適度な負荷は身体を丈夫にしてくれますし、続けていくことでより大きな負荷に耐えられる身体を作り上げることができます。

急激にトレーニング量を増やすと過剰な負荷になりやすいので、普段やっているトレーニングから少しずつゆっくりと負荷を増やすということが大切です。

ウェイトトレーニング肩上腕

肩を痛めない適度なトレーニング量ががあるかというと万人に共通するものはないと報告されています

例えば週1回のトレーニングでも週3回のトレーニングでも肩の痛みに大きな違いはないという研究結果があります

トレーニングの負荷に絶対的な正解はなく、その人によってキャパシティが違ってくると考えられます。

一方で自己ベストが大きいパワーリフターほど怪我をしやすいという報告もあり、もっとできるはずだと過信している場合には怪我を引き起こしやすいので注意が必要です。

 

インナーマッスルのトレーニング

インナーマッスルなどの細かい筋肉を鍛えることも重要で、僧帽筋下部や菱形筋、肩のローテーターカフなどの筋肉が十分に鍛えられていないことが多い印象を受けます。

普段こういったインナーマッスなどのトレーニングをやっていない場合にはしっかりと取り組んでみる価値があると思います。

こういったトレーニングはベンチプレスなどに比べると地味でつまらないことが多いのですが、高重量が扱えるようになってくるほど、こういった地味なトレーニングが後々役に立ってきます。

肩甲骨

 

まとめ

ウェイトトレーニングの肩の痛みは過剰な負荷によるオーバートレーニング、十分な休息が取れていないこと、細かい筋肉が鍛えられていないなどの原因が関わっていることが多くあります。

現状のキャパシティを見極めながら、上手にトレーニングを組み立ていてくことがウェイトトレーニングの肩の痛みを防ぐ大事なポイントです。

 

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