ランナーの疲労骨折は長期離脱を余儀なくされるため、休んでいる間にも走力やコンディションがどんどん落ちていくため、積み重ねてきた努力や目標達成を大きく阻害する可能性がある怪我です。
しかし、疲労骨折は適切な知識と対策によって予防できる可能性があります。
疲労骨折とは?
疲労骨折はランニングによる繰り返しの負荷で微細な損傷が蓄積し、最終的に骨折に至ります。痛みなどの症状が出始めた時には既に重症化していることが珍しくありません。
疲労骨折がある場合には直ちにランニングを止めて休養することが大事ですが、適切な対処をしないと回復までの期間が長くなりやすく、2~3か月と長期離脱を余儀なくされることが多々あります。
ランナーの場合には足部の疲労骨折や脛骨の疲労骨折が多く、疲労骨折の疑いがある場合には整形外科を受診することが大切です。
ランナーの疲労骨折の原因
痛みの有無による判断誤り
疲労骨折の難しいところは走ろうと思えば走れることができる点で、初期症状や治りかけの時に練習をしてしまうことが珍しくありません。
そんなに痛みがないから大丈夫だ、という考えでランニングをすると泥沼にハマってしまうことが多々あります。
痛みの有無ではなく骨が回復しているかどうか、十分な休みを取れているか?という点で考えることがポイントになります。
また、疲労骨折を早い段階で適切に診断できるか?というのも大事なポイントになります。
初期症状の時に疲労骨折だと気が付くことができれば十分な休息をとるという判断ができるかもしれませんが、
単なる筋肉系の痛みで簡単に治るだろうと誤った判断をしてしまうと疲労骨折が重症化してしまうリスクがあります。
ランニングフォーム
ランニングフォーム次第で骨の負荷に違いが生まれ、特にフォアフット着地でのランニングフォームは足部の疲労骨折のリスクが高まる可能性があります。
フォアフット着地ではつま先付近に体重がかかりやすいため骨のダメージが蓄積しやすいため、ミッドフット着地など足裏全体で体重を分散することで骨へのダメージを減らしやすくなります。
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また、ランニング時の着地衝撃も疲労骨折につながる可能性があり、着地衝撃を和らげるようにソフトな接地を心がけることも疲労骨折の予防に役立ちます。
不適切なシューズ
踵が高いシューズ
踵が高いシューズはつま先や中足骨への負荷がかかりやすく、繰り返しのランニングでダメージが蓄積して疲労骨折へとつながりやすいと言えます。
クッション性
アスファルトなどの硬い路面を走っている場合には着地衝撃が大きくなってしまうため、クッション性の弱いランニングシューズでアスファルトを走るのは注意が必要です。
特にスピードが出やすいランニングシューズはクッション性が弱いため、そういったシューズで走行距離が増えてしまうと疲労骨折のリスクが高まります。
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変形したシューズ
クッション性の高いシューズであったとしても走行距離が増えてくるとクッション性能が落ちてくるので、骨へのダメージが徐々に大きくなってくるので注意が必要です。
また、走り込んでいるうちにシューズが変形してしまい、体重がうまく分散されずに一箇所に集中してしまうと着地衝撃によって骨へのダメージが知らず知らずのうちに大きくなることがあります。
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栄養不足
カルシウムが骨の強さと関係している印象が強いかもしれませんが、ランナーが一番注意しなくてはいけないのは十分なカロリーを摂取することです。
実際に疲労骨折を発症した人は炭水化物の摂取が少なく、カロリー摂取量も少ない傾向にあることが報告されています2〜4。
ランナーは走行距離が多くなることが珍しくなく、カロリー消費も激しいので骨に十分な栄養が行き渡らないことが多々あります。
体重が軽い方がマラソンのタイムが良くなるなど、カロリー制限を課してしまうランナーは疲労骨折のリスクが高いと言えます。
もちろんカルシウムやビタミンDなどのビタミン・ミネラルの摂取不足が疲労骨折に関係しているので十分な量を摂取することが大切です5・6。
カルシウムは骨の主成分であり、ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、タンパク質も骨の形成に必要な栄養素となります。
睡眠不足
睡眠不足、心理的なストレスなどによるホルモンのバランスの乱れなども骨の生成に影響を及ぼし、疲労骨折につながることが報告されています7。
日々の生活習慣が練習でダメージを負った骨の回復に影響しているため、生活習慣や思考をいい方向に変えていくことも疲労骨折の予防につながる可能性があります。
理想的な睡眠時間は個人差がありますが、睡眠時間が7時間未満の場合には注意が必要です。
過剰な負荷での練習
練習量が多くなってくると骨へのダメージが蓄積されていき疲労骨折につながる可能性がありますが、適切な練習量を見極めることが難しいこともあるかもしれません。
普段よりも練習量が増えているときや練習の強度が高くなっているときには注意が必要になります。
基本的に練習量を増やすことと、走るスピードを上げることを同時に行うことはリスクが高いため、量か質のどちらか一方のみを上げることが賢明です。
練習量を増やす場合にも走行距離を増やすのは1か月に10%以内と慎重に進めることが大切です。
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走るスピードも疲労骨折に関係していて、速いスピードでのランニングは負荷が大きく疲労骨折のリスクになります。
例えば走るスピードを1キロ3分42秒から4分45秒に減らすことで疲労骨折の発生可能性を7%減少でき、1キロ4分45秒ペースから6分40秒にスピードを落とすことで疲労骨折の発生可能性を10%減少できるという研究結果が報告されています8。
パフォーマンスの向上には速いスピードで走ることが大切ではありますが、スピード練習が多くなっている時には注意が必要です。
疲労骨折の対処方法
休養
疲労骨折がある場合には十分な休養を確保することが重要であり、痛みがなくなったからとすぐにランニングを再開することは痛みが再発してしまうリスクがあります9。
まずは完全に痛みがなくなるまで休養を取り、そこからしばらく経過してから徐々にランニングを再開していくことが大切です。
より正確なランニングの再開の判断には整形外科医の意見が重要になります。
ランニングに復帰する場合にもいきなり長距離を走るのではなく、最初は1日に100m、200m、400mと少ない距離を走って痛みがないことを確認しながら徐々に距離を伸ばしていくことで痛みが悪化してしまうことを防ぎやすくなります。
疲労骨折の再発予防には我慢することが極めて大切で、走りたいという気持ちに流されずに冷静な判断をすることが求められます。
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怪我を予防するために週に1~2回の休養を取っているランナーも多いかと思いますが、数か月に一度まとまった休みを取ることも疲労の予防につながります。
これは疲れた心身を回復させ、オーバートレーニングを防ぐことにつながり、結果的にランニングのパフォーマンスの向上をもたらす可能性があります。
ランニングシューズ
ランニングでの疲労骨折に対してインソールでシューズを調整することが役立つ可能性があり、足部の疲労骨折に対してはクッションシューズを取り入れることでランニング時の衝撃を減らすことができます11。
特にジョグ用のクッションシューズは衝撃吸収の性能が高く、疲労骨折のリスクを防ぎやすいと言えます。
クッション性の薄いシューズで骨を強化していくという考え方もあるかもしれませんが、クッション性の高いシューズを履いて走行距離を増やしていく方が疲労骨折のリスクを減らしながら丈夫な身体を作りやすいと言えます。
また、走り込んでいるとシューズが変形していくため数ヶ月に1度はシューズを買い替えた方が無難であると思います。
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足部のトレーニング
骨も刺激に応じて強くなる性質があり、ウェイトトレーニングなどに取り組むことによって骨が強くなり、疲労骨折のリスクを下げることができます13。
とはいえウェイトトレーニングは負荷が大きすぎるので、疲労骨折が完治した状態、疲労骨折がない状態で予防のためにウェイトトレーニングを取り入れることがポイントになります。
疲労骨折を抱えて体重をかけることができない期間には足部のトレーニングを行うことが大事で、痛みを悪化させるリスクを減らしながら疲労骨折への耐性を強化することができます。
実際に足部や足首のトレーニングで筋肉を鍛えることも疲労骨折を防ぐのに役立つことが報告されています11。
カロリーの十分な摂取
疲労骨折を防ぐためには十分な栄養を摂取することが大事ですが、まずは必要なカロリーを摂取することの優先度が高いと言えます。
長距離のランニングでは多くのカロリーを消費してしまうため、それを補うように十分なカロリーを摂取することが大事です。
長距離ランナーの場合には低体重のほうが記録向上に有利に働くという側面もあるので、減量をする場合には急激に体重を減らすのではなく1ヶ月に1kgなどゆっくりしたペースで体重を落とすことが疲労骨折などの障害を防ぐポイントです。
カルシウムやビタミンDなどを摂取することも重要ですが、長距離ランナーの場合にはランニングの量が多いため通常よりも多くのカルシウムが必要になってきます。
サプリメントだけでは簡単に補えない栄養が必要となる場合も珍しくないので、しっかりと牛乳を飲むということも必要になってくるかと思います。
疲労骨折の事例
マラソンの東京オリンピック日本代表の服部勇馬選手の疲労骨折の事例です。
2017年に東京マラソン後に疲労骨折で約5ヶ月間の休養14、2023年のパリオリンピック選考の時期には両脚の疲労骨折も起こしています。
五輪以降はケガに苦しみ続けてきた。5月のプラハマラソン以降はレースから遠ざかったが、実は「両股関節を疲労骨折していて、4ヵ月走れませんでした」
服部勇馬選手の疲労骨折の原因はわかりませんが、少なくとも両脚の疲労骨折をしていた時期のインタビュー動画では顔が痩せこけていることが確認できます。
食事制限をしているのかはわかりません。走行距離を増やすようなトレーニングをしている時期でもあるようなので、練習でのカロリー消費が増えているのかもしれません。
少なくとも東京オリンピックや大学時代など、調子が良かった時期は顔がここまで痩せていない印象です。
疲労骨折の直接の原因はわかりませんが、食事量が不足している可能性、練習量が多すぎる可能性、休養が十分に取れていない可能性が疑われます。
オリンピック出場という高いを目指しているため、普段はやらない月間走行距離1000kmなどの負荷の高い練習を取り入れている様子が伺えます。
食事についてもケニア人ランナーの質素な食事を目の当たりにして、普段の食事よりも質素なものにしてしまったら栄養不足に陥ってしまうことが考えられます。
目標達成のために必死に頑張っていることが、知らず知らずのうちに疲労骨折の要因をつくってしまうことがあります。
まとめ
疲労骨折は繰り返しのランニングで骨に微細な損傷が蓄積されて引き起こされ、走行距離が多すぎたり、筋力不足や栄養不足などが疲労骨折のリスクを高めます。
疲労骨折を防ぐためには日々のトレーニングや生活習慣を見直し、適度な休養を取ること、シューズの調整や栄養補給、足部のトレーニングなどが役立ちます。
もし痛みを感じたら、無理をせずに専門医に相談することも忘れてはいけません。
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- トヨタタイムズ https://toyotatimes.jp/spotlights/0007.html