ランニング

フォアフット走法は怪我のリスクを高めるのか?

2020年7月15日

近年ではつま先から着地するフォアフット走法を取り入れている選手が好記録を出したりすることがあり、フォアフット走法が注目を集めています。

フォアフット着地が怪我のリスクやパフォーマンスにどのように影響するのか?科学的根拠を交えて解説していきたいと思います。

ランニングフォアフット着地

 

フォアフット走法とは?

フォアフット走法とは、足の前足部(つま先と指の付け根の間)で着地するか走り方のことを指します。

多くのランナーはかかとから着地するリアフット走法であり、足裏全体で着地するミッドフット走法などと比べると、フォアフット走法は前部分に重心があると言えます。

マラソンの日本記録を更新した大迫選手がフォアフット走法で走っていることなどから注目を浴びることがあるかと思います。

 

マラソンランナーの中ではフォアフット着地は少数派であるため、フォアフット着地をしている選手が活躍すると注目を集めやすいのかもしれません。

 

フォアフット走法のランニング動作解析

フォアフット走法を解析した研究によると、フォアフット走法はブレーキの力が働きにくく、推進力が得られやすいのではないか?という意見があります

下の図の薄い線がフォアフット走法であり、この線がなだらかになっており、地面に対する急激な衝撃やブレーキがかかりにくいことがわかります。

フォアフットとリアフットにおける地面反力

(Hamill and Gruber 2017より引用)

しかし、フォアフット走法でもかかと着地でもランニングに必要なエネルギーの総量はさほど変わらないことも上記のグラフから読み取ることができます。

実際にフォアフット走法でもマラソンのパフォーマンスはさほど変わらないという研究結果も報告されています

このため無理にフォアフット走法を取り入れても大きな効果はあまり期待できないかと思います。

 

フォアフット着地と怪我の発生率

フォアフット着地、かかと着地でも怪我の発生率には大きな差がないという研究結果が多いようです

それぞれのランニングフォームの怪我の発生率を調べた研究がいくつかあるのですが、いまのところフォアフット着地の怪我の発生率が低いとする論文は限られおり、多くの研究は怪我の発生率に差がないという結論になっています。

フォアフット着地

 

フォアフット着地で痛みが減った事例

ランニングフォームを変えてフォアフット着地にしたところ膝痛が減ったという事例があるかと思います。

これはフォアフット着地にすると膝の代わりに足首が衝撃吸収をしている、といったメカニズムが働いた可能性が考えられます

膝の痛み

走り方を変えると負荷が減る場所がある一方で、大きな負荷がかかる場所もあります。

このためフォアフット走法で膝の痛みが減ったという事例をもって、フォアフット走法は怪我を減らすといは言い切れません。

 

フォアフット走法で痛みが発生する事例

フォアフット走法で痛みが軽減する場合もあれば、フォアフット走法によって痛みが発生してしまうことがあります。

というのもフォアフット走法によって負荷がかかりにくい部分、負荷がかかりやすい部分があるためです。

足首の痛み

  • フォアフット着地は足部への負荷が高くなるため、足部の疲労骨折やアキレス腱炎などのリスクを高める可能性があることが示唆されています
  • フォアフット着地はかかと着地に比べて足底筋膜への負荷が高い可能性があるということも報告されています

このようにフォアフット走法は足の前足部で着地衝撃を吸収しているため、足部の負荷が高まる傾向にあります

 

フォアフット走法を取り入れる際のポイント

近年ではスーパーシューズの登場により、フォアフット走法の選手はカーボンプレートの反発力を使って大きな推進力を受けやすいと言われることがあります

このためタイム改善のためにフォアフット走法を新しく取り入れたい場合もあるかと思います。

しかし、慣れていないのにフォアフット走法を取り入れると怪我をして、長期離脱を余儀なくされることが珍しくありません。

厚底カーボンシューズ
厚底カーボンシューズでの怪我を防ぐ方法

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フォアフット走法を安全に取り入れる際のポイントは、ゆっくりと徐々に身体を適応させていくことです。

具体的には全力の20%くらいの距離・スピードくらいからフォアフット走法を始めていきます。

いきなり100%全力のスピード、走れなくなる限界の距離までフォアフットで走ってはいけません。高い確率で怪我をしてしまいます。

最初はフォアフットで走る頻度を1週間に1〜2回くらいが無難であり、慣れていないフォアフット走法の負荷に対して身体を回復させる時間が必要となります。

ランニング

そして、1〜2週間経過したら徐々にフォアフットで走るスピードや距離を上げていくことが怪我を防ぐポイントです。

全力のスピードと距離でフォアフット走法ができるのは6ヶ月〜1年後くらいを目安として考えておくことが無難です。

たとえ十分な筋力があってフォアフット走法で走りきることができたとしても、骨や腱などがフォアフット走法に耐えられる強度を獲得するための時間が必要になります。

 

まとめ

怪我の発生率に大きな差はないためフォアフット走法が良い悪いと一概には言えず、フォアフット走法ではなくとも活躍している選手の方が多いくらいです。

その人に合っているかどうか?という見極めが重要であり、フォアフット走法を取り入れる場合には時間をかけて骨や腱を適応させることがポイントになります。

 

ランニング
アキレス腱炎の応急処置とランニングを継続する際の注意点

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<参考文献>

  1. Hamill J, Gruber AH. Is changing footstrike pattern beneficial to runners? J Sport Health Sci. 2017;6(2):146-153.

  2. Larson P, Higgins E, Kaminski J, Decker T, Preble J, Lyons D, McIntyre K, Normile A. Foot strike patterns of recreational and sub-elite runners in a long-distance road race. J Sports Sci. 2011 Dec;29(15):1665-73. doi: 10.1080/02640414.2011.610347. Epub 2011 Nov 18. PMID: 22092253.
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