膝痛

変形性膝関節症による膝の痛みの原因と改善方法

2024年2月17日

 

変形性膝関節症とは?

変形性関節症は膝の軟骨がすり減り、骨同士が擦れ合うようになるため、痛みや腫れが出たり関節が動きにくなります。

変形性関節症は高齢者に多くみられますが、大きな怪我で膝を痛めてしまうと二次的な損傷として若い人でも変形性膝関節症を発症することがあります。

変形性膝関節症

変形性膝関節症など重大な膝の損傷の疑いがある場合には整形外科を受診することが大切です。

適切な対処ができずに変形性膝関節症の症状を悪化させてしまうと、膝の手術ということになってしまう可能性があります。

人工膝関節

 

変形性膝関節症の原因

O脚の姿勢

変形性膝関節症の特徴のひとつとしてO脚のような歩き方があり、症状がより重い人達はO脚の歩行動作があることが報告されています1〜3

このような歩き方になってしまうと膝の軟骨により大きな負荷がかかるため変形性膝関節症につながりやすいと考えられています。

膝の内反・O脚

しかし、症状の軽い人にO脚での歩き方はあまりみられていないため、O脚が変形性膝関節症の直接の原因であるかは微妙なところです3・4

 

運動をしていないと膝の軟骨が衰える

膝の軟骨の状態を良くするためには適度な運動が大事だと言われており、普段運動をしていない人は変形性膝関節症につながりやすく、筋力が弱いと変形性膝関節症の痛みが悪化しやすいことが報告されています

他にも11週間運動をしないだけで膝の軟骨量が約10%減少するという研究結果もありますし、重力のかからない宇宙空間に滞在していると膝の軟骨量が減ることも報告されています

これらの研究結果が示すことは、負荷をかけて運動をしていないと軟骨量は減少していく可能性があるということです。

高齢者ジョギング

運動の習慣がないと身体が衰え、膝の状態が悪化しやすく、変形性膝関節症につながりやすいわけですが、

運動が苦手といった声も多く、楽しく続けられる趣味を見つけられるかというのも一つのポイントになってくるかと思います。

 

過剰な運動で膝の軟骨を痛めてしまう

運動をすることで膝の軟骨の状態を良くすることができるのですが、過剰な運動でかえって膝を痛めてしまう可能性もあります。

実際に運動の習慣がある人でも変形性膝関節症の発生率は変わらないという研究結果も報告されています

サッカーなどの激しいスポーツは変形性膝関節症のリスクが高いと言われており、膝に過剰な負担をかけてしまうような運動は逆効果になってしまう可能性に注意が必要です

膝の痛み

膝の軟骨を改善するには運動が大事と運動をしてみたものの、膝の痛みを悪化させてしまうという人が後を絶ちません。

歩く量を増やしてみたり、筋トレをしてみたり、軽くテニスをしてみたりと、身体に良いと思って運動を取り入れることが多々ありますが、

本人としては軽い運動のつもりでも、自分自身のキャパシティを見極めることができずに過剰な運動となってしまう人が多いように思います。

そもそもどのくらいの負荷、どういった種類の運動が適切なのかがわかりにくいというのが変形性膝関節症の厄介なところです。

 

変形性膝関節症のケア

サプリメント

サプリメント

巷では膝の軟骨に良いと様々なサプリメントが販売されていますが、基本的にサプリメントが変形性膝関節症の痛みに効くという科学的根拠はありません。

実際に厚生労働省がそのような見解を示しています。

グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントの有効性について

コンドロイチンは変形性膝関節症または変形性股関節症の痛みに有効ではないことが研究結果から示唆されています。

グルコサミンが変形性膝関節症の痛みに有効かどうか、また、グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントがそれぞれ他関節の変形性関節症の痛みを軽減するかどうかは不明です。

厚生労働省 https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/21.html

 

しかし、販売されているサプリメントは微妙に成分が異なり、それらひとつひとつのサプリメントに対して効果がないと直接の検証がされたわけではありません。

一般にサプリメントとして販売されているものは、科学的データとして有効性が認められていないために保険では認められていません。

しかし、全く効かないというデータもないのです。あるいは個人差があるということも可能性としてはありうると思います。

従って日整会では、『これは無効であるから飲むな』と言うことを公式に述べることはできないのです。

公益社団法人 日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/public/about/supplement.html

 

膝のサポーター

膝の痛みを減らすのに役立つのが膝のサポーターであり、実際に膝のサポーターは変形性膝関節症による痛みを減らす効果があることが報告されています10

膝のサポーター

しかし、日頃の運動不足が変形性膝関節症につながっていることを考えると、膝のサポーターで膝の負荷を減らすだけでは根本的な解決に至らない可能性があります。

あくまで膝の痛みがツラい時、過剰な運動になってしまっている時に膝のサポーターを使うのが賢明ではないかと思います。

 

膝の軟骨の治療について

膝の軟骨は血流が乏しいため治癒効果があまり期待できないと言われています。

例えば電気治療やマッサージなどの施術は一時的に痛みを和らげる可能性があることがわずかながらの科学的根拠で示唆されていますが、長期的な効果については科学的根拠が乏しいのが現状です11・12

レーザー治療

他にも巷には様々な治療方法が溢れていますが、変形性膝関節症を治癒できるという強い科学的根拠を持った方法はほとんど存在しないのが現状かと思います。

 

再生医療(PRP)について

多血小板血漿注入は再生医療などと呼ばれることがあり、栄養価の高い血液成分を膝に注入する治療方法です。

科学的に一定の効果が認められていて、変形性膝関節症による膝の痛みの治癒に役立つ可能性があります13

膝の多血小板血漿注入

しかし、初期の軽い症状でないと効果が弱いという声もありますし、PRP治療で膝の痛みが減ったとしても運動して筋力をつけないと元に戻ってしまうと言われることもあります。

 

変形性膝関節症のリハビリ

適切な負荷での運動・トレーニング

変形性膝関節症を改善するために大事なのはやはり運動であり、運動療法は変形性膝関節症の改善に効果があることが報告されています14

しかし、過剰な運動で膝を痛めてしまう可能性も指摘されているため闇雲に運動をすればいいわけでもありません。

知識がないと適切な運動を行うことができずに膝を悪化させてしまうリスクが高まるので、医療資格を持った専門家に指導を受けることが推奨されています15

ジョギング

運動療法の欠点としては地道な努力が求められることであり、長期間にわたって運動やトレーニングを継続しないと思うような効果が得られないことも珍しくありません。

ちょっとやそっと運動すれば解決というわけではなく、安全にできる運動やトレーニングの知識を身につけ、身体のケアの方法を知り、運動を日常に取り入れるという、思考習慣から変えていくことが大事なポイントになります。

 

まとめ

変形性膝関節症は運動不足や筋力低下、過剰な運動やO脚での歩行動作などが原因として考えられています。

変形性膝関節症に対して様々な治療方法などがありますが、強い科学的根拠があるものは少なく、身体のケアに対する理解や日々の運動習慣といった生活習慣から変えていくことが重要なポイントになってくるかと思います。

 

<参考文献>

  1. Sharma L, Hurwitz DE, Thonar EJ-MA, et al. Knee adduction moment, serum hyaluronan level, and disease severity in medial tibiofemoral osteoarthritis. Arthritis & Rheumatism. 1998;41(7):1233-1240.

  2. Duffell LD, Jordan SJ, Cobb JP, McGregor AH. Gait adaptations with aging in healthy participants and people with knee-joint osteoarthritis. Gait Posture. 2017;57:246-251.

  3. Erhart-Hledik JC, Favre J, Andriacchi TP. New insight in the relationship between regional patterns of knee cartilage thickness, osteoarthritis disease severity, and gait mechanics. J Biomech. 2015;48(14):3868-3875.
  4. Duffell LD, Southgate DFL, Gulati V, McGregor AH. Balance and gait adaptations in patients with early knee osteoarthritis. Gait Posture. 2014;39(4):1057-1061.

  5. de Rooij M, van der Leeden M, Heymans MW, Holla JF, Häkkinen A, Lems WF, Roorda LD, Veenhof C, Sanchez-Ramirez DC, de Vet HC, Dekker J. Prognosis of Pain and Physical Functioning in Patients With Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-Analysis. Arthritis Care Res (Hoboken). 2016 Apr;68(4):481-92. doi: 10.1002/acr.22693. PMID: 26316234.
  6. Vanwanseele B, Lucchinetti E, Stüssi E. The effects of immobilization on the characteristics of articular cartilage: current concepts and future directions. Osteoarthritis Cartilage. 2002 May;10(5):408-19. doi: 10.1053/joca.2002.0529. PMID: 12027542.
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  8. Gates LS, Perry TA, Golightly YM, Nelson AE, Callahan LF, Felson D, Nevitt M, Jones G, Cooper C, Batt ME, Sanchez-Santos MT, Arden NK. Recreational Physical Activity and Risk of Incident Knee Osteoarthritis: An International Meta-Analysis of Individual Participant-Level Data. Arthritis Rheumatol. 2022 Apr;74(4):612-622. doi: 10.1002/art.42001. Epub 2022 Mar 10. PMID: 34730279; PMCID: PMC9450021.
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  12. Tsokanos A, Livieratou E, Billis E, Tsekoura M, Tatsios P, Tsepis E, Fousekis K. The Efficacy of Manual Therapy in Patients with Knee Osteoarthritis: A Systematic Review. Medicina (Kaunas). 2021 Jul 7;57(7):696. doi: 10.3390/medicina57070696. PMID: 34356977; PMCID: PMC8304320.
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