足の痛み

アキレス腱断裂の原因と再断裂防止について

2024年2月16日

 

アキレス腱断裂とは?

アキレス腱断裂とはふくらはぎの筋肉とかかとの骨を繋いでいるアキレス腱に急激な力がかかって断裂してしまった状態です。

アキレス腱の断裂時にはふくらはぎを叩かれたような感覚やブチッとアキレス腱が断裂した音が聞こえる場合もあります。

アキレス腱断裂をしても歩ける場合もありますが、そのまま放置していると歩行困難な状態に陥ってしまう可能性があるので整形外科で適切な処置を受けることが大切です。

アキレス腱断裂

突発的にみえるアキレス腱の断裂ですが、日々の習慣の積み重ねによる慢性的な要因によって引き起こされる可能性にも注意が必要です。

 

アキレス腱断裂の発生状況

趣味のスポーツでのアキレス腱断裂

30歳を超えたレクリエーション目的のスポーツにおいてアキレス腱断裂が発生しやすい傾向にあり、アキレス腱断裂の平均年齢は45歳前後で近年では50代を超える人のアキレス腱断裂も増えてきているそうです1〜3

ランニングやジャンプなど急激な負荷がかかるような動きでアキレス腱断裂するケースが多く、特に週末だけスポーツをするといったケースでのアキレス腱断裂が多い傾向にあるようです

バスケ

 

プロスポーツでのアキレス腱断裂

プロスポーツ選手においてもアキレス腱断裂は起こりうるもので、過剰な負荷がかかり続けている場合には普段から運動している人でもアキレス腱断裂のリスクがあると言えます5・8

NBAのバスケットボール選手を対象とした研究では新人選手よりもベテラン選手のほうがアキレス腱断裂が起こる傾向にあるようです

相手選手との接触時のアキレス腱断裂は少なく、それよりもジャンプやダッシュなどの加速する瞬間のアキレス腱が引き伸ばされながら高い負荷がかかる時のアキレス腱断裂が顕著に起こるようです

ダンクシュート

 

アキレス腱断裂の原因

加齢にともなうアキレス腱の強度の低下

30〜40代のアキレス腱断裂が多いのは、加齢による身体の変化と若い時のままのイメージが残っていることが関係しているかもしれません。
加齢とともに血流や代謝の低下などによりアキレス腱の細胞の生成が衰え、アキレス腱の強度の低下していく傾向にあることが報告されています3・4

アキレス腱の強度の低下は将来の断裂のリスクを高め、特にアキレス腱のサイズが小さくなることが断裂のリスクとの関係性が強いようです

アキレス腱とふくらはぎの筋肉

 

運動やトレーニング不足

賛否両論ありますがアキレス腱の強度は筋力と関係があると言われており7、普段からどのような運動やトレーニングをしているかが関わってくる可能性があります。

一般的にはウェイトトレーニングなどで負荷をかけていくことがアキレス腱を強くするのに効果的であると言われています。

腓腹筋のトレーニング

 

慢性的な炎症

ある日突然アキレス腱が断裂が起こりますが、そこには慢性的なアキレス腱へのダメージが蓄積していた可能性があります。
アキレス腱断裂をした人達のアキレス腱の細胞を調べたところ慢性的な炎症が報告されています

このことから日々のアキレス腱への負荷によって微細な損傷や炎症を起こし、修復が追いつかずに慢性的な炎症を抱えアキレス腱の強度が低下してしまうことが考えられます。

運動やトレーニングなどで適度な負荷をかけることはアキレス腱の強度を保つことに役立つのですが、負荷が高すぎたり身体のケアがいまいちな状態ではアキレス腱のダメージが蓄積していく可能性があります。

アキレス腱炎

 

アキレス腱断裂の対処方法

手術について

アキレス腱を断裂した場合には手術を選択することが多いかと思います9・10

プロのバスケットボール選手でも復帰するのに平均で10ヶ月近くかかり、試合で以前と同じようなパフォーマンスを発揮するのに約2年近くかかってしまうというデータもあります5・11

アキレス腱断裂のリハビリ

アキレス腱の再断裂は30歳以下の若い人に多く、体力があるからとリハビリに十分な時間を取らないために再断裂が起こりやすいと言われています12・13

このようにアキレス腱断裂はリハビリが長期化してしまうおそれがあるため、アキレス腱の違和感は放置せずに早めの治療やリハビリなどでアキレス腱断裂を防いでいくことが大切です。

 

再断裂の予防について

アキレス腱断裂の再発予防のためにはふくらはぎの筋肉を中心にトレーニングで強くしていくことが大切です。

過剰な負荷でのトレーニングで状態を悪化させないように、少しずつ負荷を増やして慣らしていくことが大事なポイントです。

アキレス腱は筋肉のように簡単に成長するものでもないので、時間をかけて少しずつリハビリで強化していくことが大事です。

繰り返しになりますが体力があるからと過信してリハビリを疎かにしてしまうと、アキレス腱を十分に強化できないままアキレス腱を再断裂してしまうリスクがあります。

 

まとめ

アキレス腱断裂は30〜40代で起こりやすく、急激な運動などによってアキレス腱の断裂につながります。

慢性的な運動不足によってアキレス腱の強度が低下する可能性があり、また激しい運動による慢性的な炎症がアキレス腱断裂のリスクを高める可能性があり、アキレス腱断裂の予防には適度な運動が大切になってきます。

 

<参考文献>

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  11. Siu R, Ling SK, Fung N, Pak N, Yung PS. Prognosis of elite basketball players after an Achilles tendon rupture.Asia Pac J Sports Med Arthrosc Rehabil Technol. 2020;21:5-10. doi:10.1016/j.asmart.2020.03.002

  12. Park SH, Lee HS, Young KW, Seo SG. Treatment of Acute Achilles Tendon Rupture. Clin Orthop Surg. 2020 Mar;12(1):1-8. doi: 10.4055/cios.2020.12.1.1. Epub 2020 Feb 13. PMID: 32117532; PMCID: PMC7031433.
  13. Glazebrook M, Rubinger D. Functional Rehabilitation for Nonsurgical Treatment of Acute Achilles Tendon Rupture. Foot Ankle Clin. 2019 Sep;24(3):387-398. doi: 10.1016/j.fcl.2019.05.001. Epub 2019 Jun 22. PMID: 31370992.
  14. Amendola F, Barbasse L, Carbonaro R, Alessandri-Bonetti M, Cottone G, Riccio M, De Francesco F, Vaienti L, Serror K. The Acute Achilles Tendon Rupture: An Evidence-Based Approach from the Diagnosis to the Treatment. Medicina (Kaunas). 2022 Sep 1;58(9):1195. doi: 10.3390/medicina58091195. PMID: 36143872; PMCID: PMC9500605.

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