ジャンパー膝（膝蓋腱炎）の痛みを改善するストレッチ

 

ジャンパー膝とは？

ジャンパー膝（膝蓋腱炎）とは膝の前面に炎症や痛みがある状態で、繰り返しのジャンプやランニングなどによって大腿四頭筋と膝の骨を繋いでいる膝蓋腱に慢性的な損傷が生じることによって発症します^１・２。

オーバーユースによる膝の損傷である可能性が高いため、適度な休養を取ることがジャンパー膝を回復させるために重要です。

そのまま放置して練習を続けていると痛みが悪化する可能性もあり、重大な膝の損傷の疑いがある場合には整形外科を受診することも忘れていはいけません。

 

ジャンパー膝の原因

柔軟性の低下

一般的に柔軟性の低下がジャンパー膝の原因として考えられています。

しかし、ジャンパー膝に関する論文を数多く調べたところ、ジャンパー膝を抱えているケースでは柔軟性の低下が見られなかったことが報告されています^３。なお、他の膝の怪我においては柔軟性の低下が報告されているそうです。

実際にジャンパー膝を抱えている人は筋肉の硬さを感じていることも多いのですが、可動域を計測してみると十分な柔軟性があることが珍しくありません。

身体の硬さを感じる場合や最低限の可動域を確保できていない場合にはストレッチに取り組むことが必要になります。

 

繰り返しの負荷

ジャンパー膝は繰り返しのジャンプなど慢性的なダメージの蓄積によって引き起こされると言われていて、練習量の増加はジャンパー膝のリスクになります。

特に大腿四頭筋が膝蓋腱を引っ張るような負荷を生み出すため、ジャンプなどでこの筋肉を酷使するとジャンパー膝へとつながりやすいと考えられています^１。

ジャンプ力が高くなるほど膝の負荷は大きくなり、ジャンプ力の高い選手はジャンパー膝のリスクが高まるという報告もあります^２。

 

筋肉のバランス

膝の皿などもジャンパー膝に影響を及ぼす可能性が示唆されていて、骨の位置などによって膝蓋腱に大きな負荷がかかることが報告されています^６〜８。

例えば大腿四頭筋だけは強いけれど、ハムストリングスや内転筋など他の筋肉が弱いと膝蓋骨のポジションが乱れやすくなります。

先天的な骨格による影響もありますが、日々の身体のケアや筋力トレーニングを疎かにしているといった後天的な要素で骨の位置が乱れることがあります。

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膝の強度不足

膝蓋腱の強度不足も原因として考えられており、ジャンパー膝を発症した選手は膝蓋腱の強度が弱かったということが報告されています^４〜６。

筋肉の成長や練習量に対して腱の強度が追いついていない場合には、負荷に耐えられずにジャンパー膝につながってしまう可能性があります。

膝蓋腱の強化には高重量トレーニングや爆発的動作をともなうトレーニングが役立つと言われていますが、普段からこういったトレーニングに取り組んでいないと耐性が弱い状態であることが考えられます。

徐々に耐性を獲得していくことがポイントであり、急激に練習量を増やすなど耐性が弱い状態での過度な練習には注意が必要です。

 

ジャンパー膝の改善方法

ストレッチ

ストレッチはジャンパー膝の痛みを軽減させる効果があることが報告されています^１０。

いわゆるマッサージで痛みが一時的に緩和しても、すぐに元に戻る現象に似ているのではないかと思います。

ストレッチによる痛みの軽減は一時的な効果であることも珍しくなく、治ったと勘違いして激しい運動をしてしまうと痛みを悪化させてしまうことがあるので注意が必要です。

ジャンパー膝の改善には大腿四頭筋のストレッチが役立ちますが、踵がお尻に触れるくらいの柔軟性を確保することがポイントになります。

柔軟性が高ければ高いほど良いというわけではなく、最低限の柔軟性を確保すればそれ以上の柔軟性は基本的には必要ないかと思います。

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トレーニング

リハビリで膝周りのトレーニングに取り組むことがジャンパー膝の痛みを減らすことができますし、膝蓋腱を強くすることでジャンパー膝の予防にもつながります^{１１〜１４}。

しかし、ジャンパー膝の痛みがある状態で膝に大きな負荷をかけると痛みが悪化してしまう可能性があるので、まずはお尻の筋肉や内転筋など膝の負担が少ないトレーニングから始めていくことが賢明です。

こういった筋肉も鍛えることでジャンパー膝の改善に役立つことが報告されています^{１５・１６}。

痛みが治ってきたらハムストリングスなど徐々に膝周りの筋肉のトレーニングに移行することで、強い身体を作ることができジャンパー膝の再発防止につながります。

ジャンパー膝は大腿四頭筋が過剰に発達していることが珍しくないので、大腿四頭筋以外の筋肉をバランスよく鍛えていくことがポイントになります。

 

まとめ

ジャンパー膝は繰り返しのジャンプによって発症しますが、大腿四頭筋の過剰な働きや膝蓋腱の強度不足、筋力不足などによってリスクが高まります。

ジャンパー膝の痛みの改善にはストレッチなどに加えて、エクササイズなどで少しずつ脚を強化していくことが役立ちます。

 

＜参考文献＞

1. Dan M, Parr W, Broe D, Cross M, Walsh WR. Biomechanics of the knee extensor mechanism and its relationship to patella tendinopathy: A review. J Orthop Res. 2018 Dec;36(12):3105-3112. doi: 10.1002/jor.24120. Epub 2018 Sep 5. PMID: 30074265.
2. Visnes H, Aandahl HÅ, Bahr R. Jumper's knee paradox--jumping ability is a risk factor for developing jumper's knee: a 5-year prospective study. Br J Sports Med. 2013 May;47(8):503-7. doi: 10.1136/bjsports-2012-091385. Epub 2012 Oct 11. PMID: 23060653.
3. Lopes HS, Waiteman MC, Priore LB, Glaviano NR, Bazett-Jones DM, Briani RV, Azevedo FM. There is more to the knee joint than just the quadriceps: A systematic review with meta-analysis and evidence gap map of hamstring strength, flexibility, and morphology in individuals with gradual-onset knee disorders. J Sport Health Sci. 2024 Jul;13(4):521-536. doi: 10.1016/j.jshs.2023.08.004. Epub 2023 Sep 3. PMID: 37669706.
4. Couppé C, Kongsgaard M, Aagaard P, et al. Differences in tendon properties in elite badminton players with or without patellar tendinopathy. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports.
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6. Dan MJ, McMahon J, Parr WCH, Broe D, Lucas P, Cross M, Walsh WR. Evaluation of Intrinsic Biomechanical Risk Factors in Patellar Tendinopathy: A Retrospective Radiographic Case-Control Series. Orthop J Sports Med. 2018 Dec 20;6(12):2325967118816038. doi: 10.1177/2325967118816038. PMID: 30622997; PMCID: PMC6302276.
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8. Park K, Keyak JH, Kulig K, Powers CM. Persons with Patellar Tendinopathy Exhibit Greater Patellar Tendon Stress during a Single-Leg Landing Task. Med Sci Sports Exerc. 2023 Apr 1;55(4):642-649. doi: 10.1249/MSS.0000000000003084. Epub 2022 Nov 17. PMID: 36730611.
9. Rosen AB, Wellsandt E, Nicola M, Tao MA. Clinical Management of Patellar Tendinopathy. J Athl Train. 2022 Jul 1;57(7):621-631. doi: 10.4085/1062-6050-0049.21. PMID: 34623447; PMCID: PMC9528703.
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11. Malliaras P, Cook J, Purdam C, Rio E. Patellar Tendinopathy: Clinical Diagnosis, Load Management, and Advice for Challenging Case Presentations. J Orthop Sports Phys Ther. 2015 Nov;45(11):887-98. doi: 10.2519/jospt.2015.5987. Epub 2015 Sep 21. PMID: 26390269.
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