バッティングのスイングスピード
バッティングにおけるスイングスピードは、野球選手にとって非常に重要な要素です。
スイングスピードが速いほどバットがボールに当たる瞬間のエネルギーが大きくなり、打球速度が向上します。これにより打球がより遠くまで飛び、長打やホームランの確率が高まります。
スイングスピードが速いとより短い時間でバットを振り切れることができます。
つまり、バットを振り出すタイミングを遅らせることができ、ピッチャーの投げるボールをより長く見極める時間を増やすことができます。
バッティング練習
重さの違うバット
重さの違うバットを使うことはスイングスピードの向上に役立ちます。
重いバットで振ることでスイングに必要な筋力とパワーを効率的に養うことができ、実際に重いバットを使って練習することでスイングスピードが向上することが報告されています1・2。
ピッチャーの投球練習においても重いボールが投球スピードの向上に役立つと言われており、重さを加えることはスピードアップのための練習として有効な方法です。
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重いボールによるピッチャーの投球練習の効果と怪我のリスク
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とはいえ重いバットだけで練習すると遅い動きが身についてしまうため、通常の重さのバット、軽いバットなどを組み合わせることでスイングスピードが向上しやすくなります。
軽いバットは神経系の反応速度を高め、素早い動きを体に覚えさせるのに役立ちます。
そして、重いバットを使ったバッティングは腰の負担が大きく、練習をやり過ぎると腰痛のリスクがあるため注意が必要です。
チューブ
チューブを使ったバッティング練習もスイングスピードの向上に役立ちます。
実際にチューブを使ったバッティング練習がスイングスピードが速くなったという研究結果が報告されています2。
バッターの腰にチューブをひっかけて、チューブを引いて負荷をかけた状態でのバッティングという練習方法があります。
(Haruna et al 2023)
また、チューブを握ってバッティング動作をするという練習方法も役に立ちます。
しかし、バッティング動作に重りや負荷を加える練習は腰の負担が大きいため、やり過ぎると腰痛のリスクがあるため注意が必要です。
メディシンボール
重さがあるメディシンボールを投げるエクササイズがバッティングのスイングスピード向上に役立ちます3。
メディシンボールを横から投げる動作はバッティングの動きに近いため、バッティングの筋肉を鍛えることができます。
このエクササイズも重りをつけた状態で腰を捻るため腰の負担が大きく、腰痛に注意が必要です。
ウェイトトレーニング
下半身のトレーニング
スイングスピードの向上にはトレーニングで下半身のパワーを強化することが役立ちます4。
スクワットは脚力を総合的に鍛えるのに役立ち、バッティングのように足の幅を広げるワイドスクワットはバッティングにより近い脚力の獲得に役立ちます。
脚力はスイングスピードの向上に重要なのですが、ジャンプやダッシュといった脚力だけではスイングスピードに直結するわけではないことが報告されています4。
スイングスピードの向上には横方向や斜め方向の脚力も重要なポイントになります3。
このため横方向や斜め方向への脚力を鍛えるような、サイドランジなど様々なトレーニングを組み合わせていくことが役立ちます。
(Haruna et al 2023)
体幹のトレーニング
バッティングでは体幹の筋肉も重要であり、その中でも特に体幹の横にある腹斜筋を鍛えることがポイントになります。
腹斜筋は体幹を捻るような動きを生み出すため、スイングスピードの向上に役立ちます。
サイドプランクに捻るような動きを加えることで、より体幹に効かせることができます。
上半身のトレーニング
上半身のパワーもスイングスピードに重要であり、特に背筋の強さがスイングスピードと強い関連性があることが報告されています4。
背筋(広背筋・脊柱起立筋)を鍛えるにはデッドリフトやベントオーバーローイングといったエクササイズが役立ちます。
ベンチプレスなどのエクササイズも胸筋や肩回りなど上半身を広範囲に鍛えることができます。
インナーマッスル
インナーマッスルなどを鍛えて動作のブレを修正することもスイングスピードの向上に役立つことが報告されています5。
野球選手の場合には、肩甲骨周りのインナーマッスルが投打ともに重要になってきます。
ストレッチ
股関節のストレッチ
スイングスピードは股関節の柔軟性も関わってきます。
バッティング時に肩と股関節の分離が大きいと、骨盤や体幹の回転速度が高まり、スイングスピードを高めるのに役立ちます6。
そして、股関節の柔軟性を高めることは投球スピードの向上にもつながるため、野球選手はストレッチやマッサージなどで股関節を柔らかくすることが役立ちます。
具体的なストレッチ方法については次の記事で解説しています。
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ピッチャーの球速と怪我予防!股関節の柔軟性を高めるストレッチ
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肩のストレッチ
肩の柔軟性を高めることもスイングスピードを上げることに役立つ可能性があります。
野球選手の場合には肩の後ろ部分が硬くなりやすいため、腕を前でクロスさせるようなストレッチなどでほぐすことができます。
そして、肩のストレッチは怪我や痛みの予防といった目的もあり、しっかりとケアをしておきたいところです。
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まとめ
スイングスピードの向上には重さの違うバット、チューブを使ったスイング練習、ウェイトトレーニングで上半身や下半身のパワーの強化、ストレッチで股関節や肩の柔軟性を高めることなどが役立ちます。
<参考文献>
- DeRenne, Coop; Buxton, Barton P.; Hetzler, Ronald K.; Ho, Kwok W.. Effects of Weighted Bat Implement Training on Bat Swing Velocity. Journal of Strength and Conditioning Research 9(4):p 247-250, November 1995.
- Crocker, E. R., Dow, M. L., & Kraft, G. L. (2021). Effects of Various Training Techniques on Bat Velocity of High School Baseball Players. International Journal for Innovation Education and Research, 9(5), 788-797.
- Tsutsui T, Maemichi T, Torii S. Identification of physical characteristics associated with swing velocity of batting in youth baseball players. J Sports Med Phys Fitness. 2022 Aug;62(8):1029-1036. doi: 10.23736/S0022-4707.21.12500-9. Epub 2021 May 24. PMID: 34028244.
- Haruna R, Doi T, Habu D, Yasumoto S, Hongu N. Strength and Conditioning Programs to Increase Bat Swing Velocity for Collegiate Baseball Players. Sports (Basel). 2023 Oct 16;11(10):202. doi: 10.3390/sports11100202. PMID: 37888529; PMCID: PMC10610610.
- Cheng HS, Chiu HT, Tsai YJ, Kuo YL. Effects of Functional Movement Training on Batting Kinematics in Adolescent Baseball Players. Pediatr Exerc Sci. 2024 Nov 27:1-8. doi: 10.1123/pes.2023-0184. Epub ahead of print. PMID: 39602921.
- Tsutsui T, Sakata J, Sakamaki W, Maemichi T, Torii S. Longitudinal changes in youth baseball batting based on body rotation and separation. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2023 Nov 28;15(1):162. doi: 10.1186/s13102-023-00774-5. PMID: 38017563; PMCID: PMC10683358.
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