ランニング

ランニングエコノミーを高める方法について

2024年7月3日

 

ランニングエコノミーとは?

ランニングエコノミーとはランニングにおけるエネルギー効率、つまり燃費のようなものであり、ある一定の速度で走る際にどれだけ少ない酸素消費量で走ることができるかを示す指標です。

ランニングエコノミーが良いランナーは、同じスピードで走っていても少ない酸素供給量で済むため有利に走り続けることができます。

このため一般的にランニングエコノミーに優れたランナーの方が競技成績が良いと言われています

ランニング

 

ランニングエコノミーに影響を及ぼす要素

ランニングエコノミーに影響を及ぼす要素は様々なものがあります。

路面の硬さ、シューズの選択、ランニングフォーム、空気抵抗や風向き、気温や深部体温、心拍数、速筋や遅筋の割合、神経伝達などなど数え切れないほど多くの要素に影響されます2・3

気温などコントロールできない外部要因、身体の中で起こる生理学的な要因、変えることが難しい遺伝的要因なども影響しているでしょう。

ランニング科学

そういった様々な要素の中でも下半身の筋肉やアキレス腱の強化、ランニングフォームの改善などはトレーニングによって伸びる可能性があります4・5

 

ランニングエコノミーを改善する方法

ランニング

ジョグや閾値走、インターバル走など一般的なランニングの練習はランニングエコノミーの改善に役立つと言われています6・7

こういった基礎的なトレーニングによってミトコンドリアや乳酸耐性を強化することもランニングエコノミーを高める上で重要になります。

ランニング

とはいえ一般的なランニングの練習だけでなく、複数の方法を取り入れていくことでランニングエコノミーをさらに高めることができます。

 

ウェイトトレーニング

中長距離ランナーはウェイトトレーニングに取り組むことでランニングエコノミーが改善されることが報告されています8・9

ウェイトトレーニングによって筋力が強化されることに加えて、アキレス腱なが強化されることによって弾性エネルギーをうまく使いやすい肉体になります。

低重量で回数を多く反復するよりも、高重量でのウェイトトレーニングの方がランニングエコノミーを高めることに役立ちます。

デッドリフト
マラソンランナーのウェイトトレーニングの効果と怪我のリスク

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プライオメトリクス

陸上トラックバウンディング

ランナーはプライオメトリクストレーニングに取り組むことでランニングエコノミーが改善する効果があることが報告されています6〜9

バウンディングなどのプライオメトリクスのトレーニングは地面からの反発力をうまく使う練習になり、バネで跳ねるような走りが強化され、ランニングエコノミーを高めることに役立ちます。

スプリント走
中長距離ランナーのスプリント走の強化について

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ランニングフォーム

陸上競技場ランニング

ランニングフォームはランニングエコノミーに影響を与える要素になります。

ランニングフォームの様々な細かい要素がありますが、その中でも膝のクッション動作が小さく、骨盤が安定しているとランニングエコノミーが高まりやすくなることが報告されています

一方で細かいランニングのテクニックについては個人差も大きく、自分に合うランニングフォームを見つけ出すことも大事になります。

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体幹トレーニング

サイドプランク

ランニングエコノミーを高めるためには体幹トレーニングも役立ちます。

体幹を強化してランニング時のブレを防ぐことで、無駄なエネルギーのロスを防ぐことに役立ちます。

腹筋
体幹の強化による走力アップについて

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ストレッチ・マッサージ

ストレッチを行うことでランニングエコノミーが少しだけ改善することが報告されていますが、ストレッチのやり方次第ではマイナスに働くこともあります

そして、継続的にストレッチに取り組んでもランニングエコノミーの改善には効果がないことも報告されています10

このようなことからランニングエコノミーを改善する場合には、ランニングの前のウォームアップとしてダイナミックストレッチを行うくらいでも十分かと思います。

ダイナミックストレッチ

また、激しい練習後のマッサージなど、大きな疲労が残った時の回復としてマッサージがランニングエコノミーを改善させる可能性があります。

しかし、継続的にマッサージを行うことでランニングエコノミーがどんどん改善していくわけではありません。

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一般的にストレッチやマッサージは怪我予防や疲労回復など良い効果があるものとして認識されていますが、ランニングエコノミーという観点では微妙なところです。

そもそも柔軟性が低いランナーはランニングエコノミーが良く、柔軟性が高いランナーはランニングエコノミーが悪い傾向にあります11・12

 

ランニングエコノミーに対する賛否

誤解も多い

ランニングエコノミーという言葉からはスマートでスムーズな走り方という印象を受けるかもしれませんが、そういった一般的な考え方とは少し違う部分もあります。

ランニングエコノミーが良い走りというのはバネのように弾むような動きであり、関節を固めて反発力を高めることが大事なポイントになります。

いってみれば厚底カーボンシューズでの弾むような走りが、まさにランニングエコノミーが高い走り方になります。

 

一方でランニングエコノミーが悪い走り方というのは分厚いクッションシューズで走るようなものです。

着地時にクッションがぐしゃっと潰れることで衝撃吸収が行われますが、地面からの反発力を失ってスピードが遅くなります。

関節を固めずに柔らかくクッションのように使う走り方ではエネルギーが逃げてしまい、ランニングエコノミーが悪くなります。

 

速く走るための厚底カーボンシューズにはカーボンという硬い素材が使われていて、ゆっくり走るためのクッションシューズには柔らかい素材が使われています。

厚底カーボンシューズのようにランニングエコノミーが良い走り方をするためには、硬くて剛性の高い肉体に仕上げていく必要があります。

このためウェイトトレーニングやプライオメトリクスなどのトレーニングを行い、関節を固めて弾むようなランニングフォームにすることが役立つわけです。

 

怪我のリスク

ランニングエコノミーが良い走り方は、少ないエネルギー消費で走れるから身体のダメージが小さいという印象があるかもしれません。

しかし、ランニングエコノミーの良い走り方というのは関節を固めて弾むような走り方が求められる部分があり、そこには怪我のリスクがあります。

地面からの反発力を使うことの反動によって身体にダメージを与えてしまうわけです。

こういった関節を固めてバネのように弾む走り方への耐性を高めるためには、高重量トレーニングなどで徐々に肉体の強度を高めていくことがポイントになります。

厚底カーボンシューズ
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高重量トレーニングをやり過ぎると怪我を引き起こしてしまうリスクがあるわけで、ゆっくりと少しずつ慣らしていくことが大事になります。

焦らずに余裕を持って、時間をかけて取り組むことが怪我を防ぐことにつながります。

デッドリフト
マラソンランナーのウェイトトレーニングの効果と怪我のリスク

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パフォーマンスとの関連性

ランニング

ランニングエコノミーを改善することでパフォーマンスが向上するという研究報告がありますが、一方でランニングエコノミーを高めてもパフォーマンス改善につながらないという研究結果もあります13・14

ランニングエコノミーはあくまで一つの要素に過ぎないため、ランニングエコノミーだけを改善しても思うような効果が出ないことは十分にあり得ます。

ランニングのパフォーマンスを高めるためには様々な要素をバランスよく鍛えていくことが大切になりますし、中長距離ランナーはランニングの練習の優先度が高いと言えます。

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まとめ

ランニングエコノミーを高めるためには剛性を高めて地面からの反発力を活かす走り方がポイントであり、トレーニングで筋肉や腱の強化、バウンディングなどの練習による反発力の使い方のトレーニング、体幹トレーニングでブレを抑えることなどが役立ちます。

 

<参考文献>

  1. Jones AM, Kirby BS, Clark IE, Rice HM, Fulkerson E, Wylie LJ, Wilkerson DP, Vanhatalo A, Wilkins BW. Physiological demands of running at 2-hour marathon race pace. J Appl Physiol (1985). 2021 Feb 1;130(2):369-379. doi: 10.1152/japplphysiol.00647.2020. Epub 2020 Nov 5. PMID: 33151776.
  2. Moore IS. Is There an Economical Running Technique? A Review of Modifiable Biomechanical Factors Affecting Running Economy. Sports Med. 2016 Jun;46(6):793-807. doi: 10.1007/s40279-016-0474-4. PMID: 26816209; PMCID: PMC4887549.
  3. Saunders PU, Pyne DB, Telford RD, Hawley JA. Factors affecting running economy in trained distance runners. Sports Med. 2004;34(7):465-85. doi: 10.2165/00007256-200434070-00005. PMID: 15233599.
  4. Folland JP, Allen SJ, Black MI, Handsaker JC, Forrester SE. Running Technique is an Important Component of Running Economy and Performance. Med Sci Sports Exerc. 2017 Jul;49(7):1412-1423. doi: 10.1249/MSS.0000000000001245. PMID: 28263283; PMCID: PMC5473370.
  5. Fletcher JR, MacIntosh BR. Running Economy from a Muscle Energetics Perspective. Front Physiol. 2017 Jun 22;8:433. doi: 10.3389/fphys.2017.00433. PMID: 28690549; PMCID: PMC5479897.
  6. Barnes KR, Kilding AE. Strategies to improve running economy. Sports Med. 2015 Jan;45(1):37-56. doi: 10.1007/s40279-014-0246-y. PMID: 25164465.
  7. Rodriguez-Barbero S, González Ravé JM, Juárez Santos-García D, Rodrigo-Carranza V, Santos-Concejero J, González-Mohíno F. Effects of a Regular Endurance Training Program on Running Economy and Biomechanics in Runners. Int J Sports Med. 2023 Dec;44(14):1059-1066. doi: 10.1055/a-2151-2063. Epub 2023 Oct 6. PMID: 37802083.
  8. Llanos-Lagos C, Ramirez-Campillo R, Moran J, Sáez de Villarreal E. Effect of Strength Training Programs in Middle- and Long-Distance Runners' Economy at Different Running Speeds: A Systematic Review with Meta-analysis. Sports Med. 2024 Apr;54(4):895-932. doi: 10.1007/s40279-023-01978-y. Epub 2024 Jan 2. PMID: 38165636; PMCID: PMC11052887.
  9. Konrad A, Močnik R, Nakamura M, Sudi K, Tilp M. The Impact of a Single Stretching Session on Running Performance and Running Economy: A Scoping Review. Front Physiol. 2021 Jan 20;11:630282. doi: 10.3389/fphys.2020.630282. PMID: 33551850; PMCID: PMC7857312.
  10. Nelson AG, Kokkonen J, Eldredge C, Cornwell A, Glickman-Weiss E. Chronic stretching and running economy. Scand J Med Sci Sports. 2001 Oct;11(5):260-5. doi: 10.1034/j.1600-0838.2001.110502.x. PMID: 11696209.
  11. Trehearn TL, Buresh RJ. Sit-and-reach flexibility and running economy of men and women collegiate distance runners. J Strength Cond Res. 2009 Jan;23(1):158-62. doi: 10.1519/JSC.0b013e31818eaf49. PMID: 19050648.
  12. Liu B, Wu J, Shi Q, Hao F, Xiao W, Yu J, Yu F, Ren Z. Running economy and lower extremity stiffness in endurance runners: A systematic review and meta-analysis. Front Physiol. 2022 Nov 28;13:1059221. doi: 10.3389/fphys.2022.1059221. PMID: 36518102; PMCID: PMC9742541.
  13. Blagrove RC, Howatson G, Hayes PR. Effects of Strength Training on the Physiological Determinants of Middle- and Long-Distance Running Performance: A Systematic Review. Sports Med. 2018 May;48(5):1117-1149. doi: 10.1007/s40279-017-0835-7. PMID: 29249083; PMCID: PMC5889786.
  14. O Sullivan IJ, Johnson MI, Hind K, Breen S, Francis P. Are changes in running economy associated with changes in performance in runners? A systematic review and meta-analysis. J Sports Sci. 2019 Jul;37(13):1521-1533. doi: 10.1080/02640414.2019.1575177. Epub 2019 Feb 27. PMID: 30810467.

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