股関節の痛み

サッカー選手の怪我予防のためのストレッチ

2024年7月11日

 

サッカーでの怪我を防ぎたい、サッカーが上手くなりたい、そんな気持ちで毎日のようにストレッチに取り組んでも思うような結果が得られないことも珍しくありません。

私自身がサッカーをやっていたときに毎日1時間のストレッチに取り組んだことがありましたが、怪我が減るわけでもサッカーが上手くなるわけでもありませんでした。

なぜあの時上手くいかなったのか、同じような失敗をして欲しくない、そんな気持ちでサッカー選手のストレッチ方法についてご紹介していきたいと思います。

 

ストレッチ

前屈

前屈ストレッチ

前屈のストレッチはハムストリングスを伸ばすことができるストレッチ方法ですが、柔軟性が低いと悩んでいる選手も多いかと思います。

こういったストレッチに取り組んでも足が速くなったりジャンプ力が高くなる効果はないことが報告されています1。

そして、ハムストリングスのストレッチに取り組んでもハムストリングスの肉離れを防ぐ効果が弱いことが明らかになっています。

サッカー試合
サッカー選手のハムストリングス肉離れの原因と予防法

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このようなことから前屈で高い柔軟性を獲得する必要性はなく、必死になって前屈のストレッチに取り組む必要はないかと思います。

とはいえハムストリングスの柔軟性が低過ぎるのも問題なので、次の図で少なくとも70〜80°ほどの可動域は確保しておきたいところです。

レッグレイズ可動域

 

開脚

開脚ストレッチ

たまに股割りのような形での開脚のストレッチを行う選手がいますが、キーパーでもない限りサッカーにおいてはこのような股割りストレッチは必要ないかと思います。

サッカーで股割りの可動域が必要になる場面は基本的に存在せず、股割りのストレッチはやり過ぎると股関節を痛めてしまう可能性があるので注意が必要です。

一方で開脚のストレッチでも内転筋を伸ばすような形で行うことでサッカー選手に多いグロインペインの予防に役立ちます。

開脚ストレッチ

 

大腿四頭筋

サッカー大腿四頭筋ストレッチ

サッカー選手はキックによって大腿四頭筋を酷使するため、大腿四頭筋のストレッチをしておいた方が賢明です。

実際に大腿四頭筋を痛めてしまったサッカー選手は大腿四頭筋の柔軟性が低下していたことが報告されています

左右の大腿四頭筋の柔軟性を比べてみて、利き足の大腿四頭筋の方が硬い場合には重点的にストレッチをした方がいいかもしれません。

 

ふくらはぎ

ふくらはぎのストレッチ

ふくらはぎのストレッチはよく知られている方法であり、足首の可動域の向上に役立ちます。

特に足首の背屈の可動域の低下は膝の負荷が高まる、スクワットのフォームが乱れてしまうなど様々な悪影響があります。

ふくらはぎのストレッチを定期的に取り入れることは怪我予防やパフォーマンスアップに役立つかと思います。

 

股関節の内外旋

股関節の外旋のストレッチも方向転換動作がスムーズになるため、サッカー選手のアジリティーの向上に役立ちます。

股関節ストレッチ

股関節の内旋の可動域向上も大事なのですが、こちらはうまくストレッチで効かせることが難しいため、フォームローラーなど筋膜リリースで股関節周りをほぐすことが役立つかと思います。

 

体幹

サッカーのストレッチで体幹部を伸ばすようなストレッチが取り入れられていることは多くない印象ですが、

体幹部を横方向に伸ばすようなストレッチは方向転換動作がやりやすくなり、アジリティーの向上につながります。

体幹ストレッチ

 

サッカー選手のストレッチに対する賛否

ウォームアップ

練習前にストレッチを取り入れているチームは多いことかと思いますが、興味深いことに練習前のウォームアップが怪我を減らすかというと微妙であるという研究結果があります

やはりストレッチで怪我を防げるかどうかは、怪我の種類にもよるかと思います。

どちらかというと練習前のウォームアップはパフォーマンスの向上に貢献という面が大きいかもしれません。

サッカーウォームアップ

一般的に静的ストレッチはパフォーマンスが落ち、ダイナミックストレッチや爆発的動作などを取り入れるとパフォーマンスアップに効果的であると言われています

具体的にはJFAで公開されているFIFA11+によるウォームアップなどがサッカーのパフォーマンス向上に役立ちます。

しかし、こういったウォームアップは少しキツいメニューが含まれているため選手に喜ばれないこともあり、静的ストレッチをウォームアップに取り入れた方がなんだかんだチームの雰囲気が良かったりします。

 

怪我のリスク

サッカー選手ストレッチ

一般的に高い柔軟性があることが良いことであると考えられていますが、それが必ずしもサッカーの怪我予防につながるとは限りません。

あくまでサッカーに必要な範囲での可動域を確保できれば十分であると思います。

柔軟性が高すぎるサッカー選手は怪我のリスクが高まるという研究結果もあるので、過剰な柔軟性を求めることには注意が必要です。

ストレッチ
高い柔軟性を持っている人は意外と怪我をしやすい

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そして、ストレッチだけではサッカーの怪我を防ぐのに限界があるので、ストレッチだけでなくトレーニングも取り入れたほうが良いかと思います。

サッカーのウォームアップ
サッカー選手の怪我予防のトレーニング

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パフォーマンス

サッカーストレッチ

一般的に柔軟性が高い選手の方がサッカーで高いパフォーマンスを発揮できると考えられていますが、必ずしもそうではありません。

プロサッカー選手を対象にした研究では柔軟性が低い選手の方がアジリティやジャンプ力が高かったことが報告されています

こういったことからストレッチは適度に行い、過剰に高い柔軟性を求める必要はないかと思います。

 

まとめ

サッカーにおいてストレッチが怪我予防やパフォーマンス向上に役立ちますが、ストレッチの種類によっては効果が弱いことも珍しくありません。

そして、ストレッチで過剰な柔軟性を求めてもパフォーマンスが向上するとは限らず、適度な範囲内でストレッチを行うことが賢明かと思います。

 

<参考文献>

  1. Medeiros DM, Cini A, Sbruzzi G, Lima CS. Influence of static stretching on hamstring flexibility in healthy young adults: Systematic review and meta-analysis. Physiother Theory Pract. 2016 Aug;32(6):438-445. doi: 10.1080/09593985.2016.1204401. Epub 2016 Jul 26. PMID: 27458757.
  2. Mendiguchia J, Alentorn-Geli E, Idoate F, Myer GD. Rectus femoris muscle injuries in football: a clinically relevant review of mechanisms of injury, risk factors and preventive strategies. Br J Sports Med. 2013 Apr;47(6):359-66. doi: 10.1136/bjsports-2012-091250. Epub 2012 Aug 3. PMID: 22864009.
  3. Witvrouw E, Mahieu N, Danneels L, McNair P. Stretching and injury prevention: an obscure relationship. Sports Med. 2004;34(7):443-9. doi: 10.2165/00007256-200434070-00003. PMID: 15233597.
  4. Hammami A, Zois J, Slimani M, Russel M, Bouhlel E. The efficacy and characteristics of warm-up and re-warm-up practices in soccer players: a systematic review. J Sports Med Phys Fitness. 2018 Jan-Feb;58(1-2):135-149. doi: 10.23736/S0022-4707.16.06806-7. Epub 2016 Nov 30. PMID: 27901341.
  5. Rey E, Padrón-Cabo A, Barcala-Furelos R, Mecías-Calvo M. Effect of High and Low Flexibility Levels on Physical Fitness and Neuromuscular Properties in Professional Soccer Players. Int J Sports Med. 2016 Oct;37(11):878-83. doi: 10.1055/s-0042-109268. Epub 2016 Jul 13. PMID: 27410769.

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