サッカーの弾丸シュートは得点のチャンスにつながり、試合で大きな武器になります。
しかし、闇雲にシュート練習を繰り返していても思うようにシュート力が伸びないことも珍しくありません。
ここでシュートの速度を高めるポイントについてご紹介していきます。
シュート速度を高めるテクニック
身体の使い方
速いシュートを蹴るには力任せに蹴るのだけでなくテクニックも重要であり、全身の連動性、身体のバネを使うこと、軸足を強く踏み込むことの3つがポイントになります。
全身の連動性
体幹の回転: シュートを蹴る瞬間に身体を素早く回すことで、骨盤や足の振りへと力が伝わっていき、ボールを大きな力で蹴りだしやすくなります。
股関節から脚を振る: 膝から下だけで足を振るのではなく、股関節から脚を動かすように足を振ることでより多くの筋肉を働かせることができますし、足の振り幅が大きくなり、スピードがアップします。
振り足の遠心力: 振り子のように足を大きく振ることで、遠心力が生まれて足のスピードが上がり、ボールを強く打ち出せます。遠心力を活かすためには脱力することも重要であり、脱力しながら足を振りつつ、足がボールにインパクトする瞬間に一気に力を込めます。
これらの動きがうまく連動している選手ほど、少ない力でも力強いシュートを打つことが可能になります1。
身体のバネを使う
シュートを蹴る前のバックスイングで足を後ろに引く動作も、シュートの速さに大きく影響します2。
身体を少し反らせるようにバックスイングすることで、体の前面にバネのような「ため」が生まれます。
このバネの力をうまくキックの振りに変換すると、足が速く振れるようになります。
軸足の力強い踏み込み
シュートを蹴る際には、ボールを蹴らない方の軸足で強く地面を踏み込むことも重要です3。
最初は強く踏み込むことを意識することから始めます。慣れてくると軸足の踏み込みの力が、自然と体幹をひねる動きや骨盤の回転へとつながっていきます。
最終的にはボールを蹴る足の振りのスピードを上がり、ボールに力が伝わるようになっていきます。
練習方法
シュート力アップの方法として繰り返しシュート練習を行うことが役立ちます
反復してシュート練習をすることで一定程度はシュート力がアップしますが、シュート練習のバリエーションを増やすことで効果がさらに高まります。
シュートの位置
シュート練習の際のボールの位置というのは重要なポイントであり、ゴールからの位置によって身体の使い方が変わってきます。
ゴール正面でのシュート、斜め30°からのシュート、斜め45°からのシュート、ミドルシュート、ロングシュートというように、様々な位置からシュート練習を行うことで様々な状況に対応できる力が身に付きますし、様々な筋肉に刺激が入り、シュートテクニックも向上しやすくなります。
スター選手の蹴り方の真似
シュート練習のバリエーションとして有名選手のキックの真似をすることは意外と役立ちます。
クリスティアーノロナウドの無回転シュートやメッシのコンパクトなインステップキックなど、特徴的な蹴り方をしている選手はたくさんいます。
多くの場合スター選手のようなキックを真似することは難しく、思い描いたシュートにはならないかと思います。
しかし、スター選手のようにうまくいかなくても問題はありません。いつもと違う身体の使い方、普段使っていない筋肉に刺激を入れることができるため、シュート力アップにつながります。
最終的には自分が蹴りやすい方法でのキックを見つけることが大事ですが、有名選手の真似というのは基礎能力を伸ばすのに意外と役立ちます。
シュート力向上のための筋力トレーニング
サッカーのシュートの球速を向上させるためにはテクニックだけでなく、筋力を強化することも大事なポイントになります。
サッカー選手はウェイトトレーニングに取り組むことでシュートのスピードアップに効果があります4。
大腿四頭筋
キック力を高めるには主に大腿四頭筋を鍛えることが重要であり、大腿四頭筋は膝を伸ばす働きがあり、キックで足を振る動作に近い動きをする筋肉であるためシュート力アップに効果的です。
大腿四頭筋を鍛えるにはスクワットやレッグエクステンションといったトレーニングが役立ちます。
腸腰筋
キック力を高めるには腸腰筋を鍛えることも重要であり、腸腰筋は脚を前に出す働きがあり、股関節から脚を振る動きでシュート力にアップにつながります。
腸腰筋を鍛えるには腿を上げるようなトレーニングが役立ちます。
背筋
脊柱起立筋などの背筋の筋肉は大きなパワーを生み出すことができる筋肉であり、背筋の力を骨盤や足の振りに連動させることができるようになると、シュート時の振り足のスピードを高めることにつながります。
背筋を鍛えるにはローイングやデッドリフトなどのトレーニングが役立ち、全身の筋肉を使った動きを強化することができます。
内転筋・外転筋
サッカーのシュートはいつも同じ蹴り方というわけではなく、状況によって助走の角度、スピード、蹴り方が変わってきます5。
斜めからのシュートでは内転筋や外転筋の筋力がより求められるなど、より多くの筋肉をバランスよく鍛えておくことが総合的なシュート力の向上に役立ちます6。
外転筋を鍛えるには股関節を開く動きを鍛えるようなトレーニングが役立ち、内転筋を鍛えるには股関節を閉じる動きを鍛えるトレーニングが役立ちます。
軸足
軸足の筋力を鍛えることで、キック時の軸足でのブレーキ動作の力が大きくなり、体幹を捻る力を生み出しやすくなります。
軸足の踏み込みを強化するにはランジなど、体重を支えるようなブレーキ動作があるエクササイズが役立ちます。
まとめ
サッカーでシュートのスピードを上げるためには全身の連動性を高めること、バネを使った動き、軸足での強い踏み込みといったテクニックが役立ちます。
また、シュートに必要な筋力をトレーニングで強化することも重要であり、大腿四頭筋や腸腰筋、背筋などをバランスよく鍛えることがシュート力アップにつながります。
<参考文献>
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