足の痛み

サッカー選手の足首の捻挫の原因と改善方法

2025年2月11日

 

サッカー選手の捻挫の種類

サッカー選手の足首の捻挫は非常に多く発生する怪我であり、主な足首の捻挫の種類は足首がどの方向にひねられるかによって分けられます。

内反捻挫:サッカー選手に見られる足首の捻挫の大半がこの内反捻挫であると言われています。足首が内側に強くひねられることで発生します。足関節の外側にある靭帯(主に前距腓靭帯、次に踵腓靭帯)が過度に引き伸ばされたり、損傷したりします。

内反捻挫

 

外反捻挫:内反捻挫に比べて発生頻度は低いですが、損傷すると重症化しやすい傾向があります。足首が外側に強くひねられることで発生します。足関節の内側にある靭帯(三角靭帯)が損傷した状態です。

外反捻挫

 

足首の捻挫は損傷の程度によって以下の3段階に分類されます。

1度捻挫(軽症): 靭帯が一時的に伸びた状態です。腫れや痛みは軽く、歩行可能なことが多いです。

2度捻挫(中等症): 靭帯の一部が切れている状態です。腫れや痛みが中程度で、内出血が見られることもあり、歩行が困難になる場合もあります。

3度捻挫(重症): 靭帯が完全に切れている状態です。強い腫れと痛み、内出血が激しく、関節が不安定になり、歩行が非常に困難または不可能になります。

足首の捻挫

サッカーで足首を捻挫してしまった場合には医療機関を受診することが大切です。

 

サッカー選手の捻挫の原因

接触プレー

サッカーの捻挫は相手選手との接触プレーによって引き起こされることがよくあり、タックルや接触の瞬間に足を踏み外したり、うまく着地できなかったりして、足を捻ってしまうことがあります。

特に危険度が高い悪質なプレーは捻挫を引き起こす可能性が高くなります。

サッカーのチャンピオンズリーグを11年間分析した研究では、ファウルを伴う接触プレーが捻挫の約4割を占めていたことが報告されています

サッカーダッシュ

 

ステップ

サッカーでは接触プレーがなくとも足首を捻挫してしまうケースも多くあります

方向転換の際にステップを誤って足を捻ってしまったり、サッカーボールに意図しない形で足が乗ってしまったり、何もないところでバランスを崩して足を捻挫するようなケースもあります。

特に試合の後半など、疲労しているときに捻挫が起こりやすいことが報告されています

サッカー

 

足首の緩さ

足首が緩いサッカー選手は捻挫のリスクが高まります

特に一度捻挫をしている人は靭帯などが引き伸ばされて、足首が緩くなっていることが珍しくありません。

足首のマッサージ

足首が緩い場合にはテーピングやサポーターなどで足首を補強して関節の緩さを補強しておくことが大事になります。

 

筋力不足

足首の捻挫には筋力も関わっていて、筋力不足は捻挫のリスクを高め、

プロサッカー選手100名を対象にした研究では足首の筋力不足は捻挫のリスクを数倍以上に高めることが報告されています

足首の筋肉

また、中殿筋などのお尻の筋肉も足首の捻挫に関係があり、お尻の筋力不足はサッカー選手の捻挫のリスクを1.1倍高めることが報告されています

 

バランス感覚

バランス感覚も足首の捻挫に関わっており、足首の位置を検出する能力や姿勢を維持する能力などのバランス感覚の低下は捻挫のリスクを高めることが報告されています

サッカーでは目まぐるしく状況が変わりますし、方向転換や加速減速も多く、バランスを維持する能力は大事であると言えます。

プロサッカー選手を追跡調査した研究では、捻挫をした選手は次の図のような片足バランスのテストの成績が悪い傾向にあったことが報告されています

(Manoel et al 2020)

 

サッカー選手の捻挫の改善方法

RICE処置

捻挫の応急処置としてRICE処置は重要であり、RICE処置は安静 (Rest)、冷却 (Ice)、圧迫 (Compression)、挙上 (Elevation) の頭文字をとったものです。

足アイシング

R: Rest(安静)捻挫をしたら、安静に保つことが重要です。無理に動かすと、損傷が悪化し、治りが遅くなる可能性があります。体重をかけないようにしたり、テーピングなどで患部を固定することも有効です。

I: Ice(冷却)アイシングで患部を冷やすことで、炎症を抑え、痛みや腫れを軽減する効果があります。氷をビニール袋やアイスバッグに入れ、タオルなどでくるんで患部に当てます。直接当てると凍傷になる可能性があるため、タオルなどを挟むことがポイントです。約20分程度冷却し、アイシングを外す、ということを繰り返します。これを受傷後24時間〜72時間程度行います。

C: Compression(圧迫)患部を適度に圧迫することで、内出血や腫れの広がりを最小限に抑えます。テーピングや包帯などで患部を軽く圧迫するように巻きます。強く圧迫しすぎると血流障害などを起こす可能性があるため、違和感を感じる場合には緩めることが大事です。

E: Elevation(挙上)患部を心臓より高い位置に保つことで、重力によって内出血による腫れを防ぎ、軽減する効果があります。座布団やクッションなどを利用して足を心臓より高くして横になります。

 

テーピング

サッカーでの捻挫を防ぐにはテーピングが役立ちます。

プロサッカーチームではトレーナーが綺麗にテーピングを施すのは日常の光景であり、捻挫予防の基本と言えます。

 

サッカーでは細かいボールコントロールが求められるためカチカチに固めるテーピングを嫌がる場合もあり、状況に応じてテーピング方法を微調整することも必要になります。

足首の捻挫を予防するためのテーピングの方法には様々なバリエーションがあり、最適なテーピング方法は専門家に相談することが大切です。

 

サポーター

足首の捻挫予防には足首のサポーターという選択肢もあり、足首のサポーターも捻挫を防ぐ効果が十分にあることが報告されています

捻挫予防のテーピングはテープの消費量が多く、サッカーをやるたびにテーピングをするとそれなりのコストがかかりますが、サポーターを使うことでコストを抑えることができるというメリットがあります。

足首のサポーター

 

ストレッチ

足首の捻挫の改善にはストレッチで柔軟性を高めることが役立ちます。

捻挫をした後は足首の柔軟性が落ちやすく、特に足首の背屈の可動域が低下してしまうことが珍しくありません

このためふくらはぎのストレッチを行い柔軟性を確保することが役立ちます。

ふくらはぎのストレッチ

また、捻挫によって足首の細かい動きが制限されることもあり、必要に応じてマッサージなどの施術を取り入れることも役立ちます。

 

筋力トレーニング

トレーニングで足首周りを鍛えることは重要であり、足首を鍛えることで捻挫の再発リスクを約4割ほど減少できることが報告されています10

最初はシンプルに足首を動かすエクササイズから始めていき、痛みや違和感がない範囲で行います。

痛みが改善していくにつれてチューブで抵抗を加えて足首の筋肉を鍛えることが役立ちます。

(Abdelhaleem et al 2023)

 

 

また、足首周りの筋肉だけでなく股関節や体幹も鍛えておくことも捻挫予防に役立ちます。

サッカーのウォームアップ
サッカー選手の怪我予防のトレーニング

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バランス感覚トレーニング

捻挫のリハビリにおいてはバランス感覚を向上させることも大事なポイントであり、バランス感覚のトレーニングを行うことでサッカーにおける捻挫を約42%減らせることが報告されています11

まずは片足バランスから始めていき、うまくバランスがとれるようになってきたら目を閉じた状態での片足バランスなどに取り組みます。

片足バランス

不安定なバランスパッドやクッションなどを取り入れることもバランス感覚の向上に役立ちます。

片足バランスにサッカーボールを組み合わせたバランストレーニングなども役立ちます。

 

捻挫を早く治す方法について

捻挫を早く治すためには、捻挫した直後からのRICE処置が基本になります。

早い段階での医療機関の受診も大切であり、電気治療や超音波治療などを受けることも役立ちます。

また、専門家の指導の下で適切なリハビリを行うことも早く回復するのに役立ちます。

ただし、痛みが残っているのに無理して動かすと、かえって回復が遅れてしまうため注意が必要です。

 

捻挫をすると思っているよりも長い期間サッカーができなくなることがありますが、余裕をもって対処することも大切です。

ドイツのプロサッカー選手を対象にした研究によると軽度の捻挫によって平均で約2週間くらい離脱してしまうことが報告されています12

捻挫の重さや症状によって復帰期間は違い、中度や重度の捻挫は平均で約6~7週間の離脱になっています12

プロサッカー選手であったとしても足首の捻挫には時間をかけて対処していることがうかがえるかと思います。

 

テーピングでガチガチにして、痛み止めを飲めばサッカーをできるかもしれませんが、このような状態でサッカーをプレーしてしまうと捻挫の再発リスクが高まります。

無理をすると捻挫を再発してしまい、さらに長い期間の離脱につながることがあります。

急いで復帰したいという気持ちがあるかもしれませんが、焦らずに余裕をもって対処することは大事です。

 

サッカーで捻挫を繰り返してしまう事例

サッカーの捻挫で気を付けたいことが再発を防ぐことであり、捻挫を繰り返してしまうことは珍しくありません。

ドイツのプロサッカー選手を対象にした研究では、捻挫した選手の約25%が捻挫を再発していることが報告されています12

軽い捻挫だったとしても意外と休養期間を取られてしまうため、コンディションを崩してしまう要因になることがあります。

 

私自身がサッカーをやっていて捻挫をした時に無理してプレーを続けていた経験があります。

テーピングでガチガチに足首を固めて、痛み止めを飲めば捻挫が完全に治っていなくてもサッカーをプレーすることはできますが、この状態でプレーを続けていたら何度も捻挫を引き起こしてしまいました。

捻挫がクセになってしまうと足首の関節がさらに緩くなり、筋力が失われ、バランス感覚が無茶苦茶になって、さらに捻挫を引き起こしやすくなるという悪循環にハマっていきました。

コンディションが上向いてきたところで捻挫をして台無しになってしまうという失敗を繰り返してしまいました。

 

軽い捻挫は甘く考えてしまうことがあるかもしれませんが、やはり無理してプレーを続けることには一定のリスクがあります。

焦らずに十分な休養を取ることで怪我の再発が起こりにくくなり、結果的にプレー時間が増えることにもつながります。

 

まとめ

サッカー選手の足首の捻挫は接触プレーや方向転換動作、足首の緩さや筋力不足、バランス感覚の低下などが原因になります。

足首の捻挫の改善にはRICE処置、テーピングやサポーター、ストレッチ、弱い筋肉をトレーニングで鍛えること、バランス感覚のトレーニングなどが役立ちます。

 

<参考文献>

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  2. Mineta S, Koyama T, Yamaguchi S, Inagaki H, Sekine Y. Epidemiology of lateral ankle sprain focusing on indirect contact mechanism in male and female soccer players: An 18.5-month cohort study. Injury. 2024 Aug;55(8):111699. doi: 10.1016/j.injury.2024.111699. Epub 2024 Jun 21. PMID: 38970925.
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  10. Kobayashi T, Tanaka M, Shida M. Intrinsic Risk Factors of Lateral Ankle Sprain: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Health. 2016 Mar-Apr;8(2):190-3. doi: 10.1177/1941738115623775. PMID: 26711693; PMCID: PMC4789932.
  11. Al Attar WSA, Khaledi EH, Bakhsh JM, Faude O, Ghulam H, Sanders RH. Injury prevention programs that include balance training exercises reduce ankle injury rates among soccer players: a systematic review. J Physiother. 2022 Jul;68(3):165-173. doi: 10.1016/j.jphys.2022.05.019. Epub 2022 Jun 23. PMID: 35753965.
  12. Flore Z, Hambly K, De Coninck K, Welsch G. Time-loss and recurrence rate of lateral ankle sprains in male professional football players depending on the severity grade: do we trivialise LAS? BMJ Open Sport Exerc Med. 2025 Feb 22;11(1):e002271. doi: 10.1136/bmjsem-2024-002271. PMID: 39995611; PMCID: PMC11848657.
  13. de Noronha M, Lay EK, Mcphee MR, Mnatzaganian G, Nunes GS. Ankle Sprain Has Higher Occurrence During the Latter Parts of Matches: Systematic Review With Meta-Analysis. J Sport Rehabil. 2019 May 1;28(4):373-380. doi: 10.1123/jsr.2017-0279. Epub 2019 Feb 4. PMID: 29809104.
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  15. Abdelhaleem, M.D., Abdelhay, M.I., Aly, S.M. et al. Effects of 6 weeks of ankle stability exercises on pain, functional abilities, and flexibility in patients with chronic non-specific low back pain: a randomized controlled trial. Bull Fac Phys Ther 28, 14 (2023).

 

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