シーバー病とは
シーバー病は成長期の子どもに多く見られる、かかとの痛みです。
成長期の子どものかかとの骨には、成長軟骨と呼ばれるまだ柔らかい部分があり、シーバー病は運動などによる繰り返しの負荷や牽引力が加わることで炎症が起こり、痛みが生じる怪我です。
運動後や朝起きて最初の一歩、長時間座った後に立ち上がる際などにかかとの痛みがあり、かかとに体重がかかるのを避けるため、つま先で歩くようになることもあります。
シーバー病の疑いがある場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。
シーバー病の原因
足首の柔軟性の低下
足首周りの柔軟性はシーバー病と関連があり、柔軟性を確保することは大切なことです。
実際にシーバー病を抱えている人達の足首の可動域が健康な人達に比べて著しく減少していたという研究結果があります1。
足首の柔軟性に制限があることで、スポーツでの足部の動きが悪くなり、負荷がかかりやすい効率が悪い走り方などにつながります。
特に、つま先を上に向けるような動きである、足首の背屈の可動域は標準的な20°ほど欲しいところですが、足の痛みを抱えている人はこれに届いていないことがよくあります。
偏平足
足のアーチが崩れてしまう、偏平足はシーバー病に関係していることがあります。
実際にシーバー病を抱えている選手は足のアーチが低く、偏平足気味であることが報告されています3。
生まれつきの骨格によって偏平足である場合と、筋力不足によって偏平足になっている場合などがあります。
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扁平足のランニングへの影響
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足部のプロネーション
プロネーションと呼ばれる足部のアライメントの乱れもシーバー病のリスクであることが報告されています4。
足首周りの筋肉のバランスの乱れなどによって足部が歪み、負荷がかかりやすい状態になります。
特につま先が外を向きがちな場合には足部が不安定であることが多く、足元が乱れやすくなります。
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足部のプロネーションと怪我のリスクについて
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不適切なシューズ
身体に合っていない不適切なシューズを履いているとシーバー病につながることがあります。
特に成長期の子供は身体が変化するスピードが早く、身体に合わせてシューズも定期的に買い替えることが大切になります。
身体にフィットしていないシューズ、擦り減って変形したシューズ、薄底のシューズなどは踵に負担がかかりやすくなります。
過剰な運動
過剰な運動でダメージが蓄積していくとシーバー病につながり、特に急激に運動の負荷が増えた時にリスクが高まります。
普段から運動量が多ければある程度の耐性があるため、そこまで怪我のリスクが高いわけではなく、急に慣れていない運動をすることに注意が必要です。
実際に普段の運動量が少ない選手がシーバー病を発症しやすいことが報告されています5。
このため運動量を増やすときは、少しずつ徐々に負荷を上げていくことで怪我のリスクを減らすことができます。
シーバー病の改善方法
休養
シーバー病の改善の基本は十分な休養を取ることです。
シーバー病は骨に影響していることが多く、意外と長い期間の休養が必要になることも珍しくありません。
シーバー病を発症してからスポーツに復帰するまで2ヶ月近くかかってしまうことも報告されています1・2。
状況によって必要な休養期間が変わってくるため、休養期間やスポーツの復帰については医師に相談することも大切です。
ストレッチ
ストレッチなどで柔軟性を向上させることはシーバー病の改善に役立ちます6。
特にふくらはぎのストレッチで足首の柔軟性を高めることが重要であり、足首が硬いとスムーズな体重移動ができずに負荷がかかりやすくなります。
マッサージ
足首の柔軟性を高めることは重要ですが、ストレッチだけではほぐせない硬さなどがあるためマッサージなども取り入れていくことが役立ちます。
ふくらはぎだけでなく、足の裏、足の甲など満遍なくほぐしておくと身体のバランスが整いやすくなります。
シューズ
身体に合ったシューズはシーバー病の痛みを和らげるのに役立ちます6・7。
シーバー病の負荷を減らすためには、踵が少し高くなっているシューズを選ぶことがポイントになります。
こういったシューズは踵の骨を引っ張るふくらはぎの筋肉の働きを減らすことができ、シーバー病の予防・改善に役立ちます。
また、クッション性の薄いシューズ、ミッドソールの厚みがないようなシューズはふくらはぎの筋肉に負荷がかかりやすく、シーバー病につながる可能性があるため、
クッション性のあるシューズを選ぶことで、ふくらはぎの筋肉の活動を減らし、シーバー病につながる負荷を軽減することができます。
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クッション性の高いシューズはランニングの怪我を減らすのか?
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インソール
適切なシューズを選ぶことは意外と難しいものであり、シューズの知識だけでなく、身体の状態を見極める力なども必要になります。
一方でオーダーメイドのインソールを処方することで、簡単に身体の状態にあったシューズに調整することができます。
そして、実際にオーダーメイドのインソールを取り入れることでシーバー病の痛みを和らげる効果があることが報告されています7。
オーダーメイドのインソールは性能が良いですが、費用が高くなりがちというデメリットがあります。
かかとにヒールパッドを入れるという選択肢もあり、インソールに比べてかなり安い価格で購入することができるというのがメリットです。
実際にかかとにヒールパッドを取り入れることでランニング時のシーバー病の痛みを和らげる効果が報告されています6・7。
テーピング
テーピングはシーバー病の痛みを和らげるのに役立ちます。
足底や踵からふくらはぎの筋肉へと伸縮性のテープを張ることが基本となり、必要に応じて足部をサポートする横方向のテーピングなどを加えていきます。
最適なテーピング方法は身体の状態によって異なるため、専門家に相談することが大切です。
サポーター
シーバー病に対するサポーターについて質問を受けることがたまにあります。
(Sweeney et al 2023)
シーバー病のためのサポーターが売られており、足首の機能向上や足部の安定性向上などの効果があります9。
とはいえ、テーピングのように直接の負荷を軽減する効果は弱いことがデメリットであり、一方で装着が楽であり手間がかからないという点にメリットがあります。
リハビリ・トレーニング
リハビリ、トレーニングなどで身体を鍛えることでシーバー病の予防・改善に役立ちます。
痛みや違和感のない範囲で行うことが大切であり、まずは座った状態でふくらはぎの筋肉に効かせるチューブエクササイズが負荷が軽く、痛みが悪化しにくく効率的に鍛えることができます。
また、ふくらはぎの筋肉以外にも足首周りの筋肉を鍛えることで、足部の安定性の向上、足部のアライメントの修正などの効果があり、シーバー病の改善にも役立ちます。
痛みが軽減していくにつれて、立位姿勢で踵を上げるカーフレイズなどのエクササイズでふくらはぎの筋肉を鍛えていきます。
カーフレイズでは、かかとがブレないようにまっすぐ上げることがポイントになります。
まとめ
シーバー病は成長期に見られるかかとの骨の痛みであり、足首の柔軟性の低下、偏平足などの足部のアライメントの乱れ、急激な運動量の増加などがシーバー病の原因になります。
シーバー病の改善には十分な休養、ストレッチやマッサージ、シューズの調整やテーピング、トレーニングなどが役立ちます。
<参考文献>
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