ランニングの膝裏の痛み
ランニングの膝の痛みは膝の前側や外側などの痛みが一般的ですが、膝裏の痛みに悩まされるケースもあります。
ランニングの膝裏の痛みにはハムストリングス、ふくらはぎの筋肉といった膝裏の周辺の筋肉による痛みも多くあります1。
一方で膝裏の痛みには筋肉がダメージを受けていることだけでなく、軟骨を痛めている場合など様々な可能性が考えられます。
膝裏の痛みが続くようであれば医療機関を受診することが大切になります。
ランニングによる膝裏の痛みの原因
シューズ
ふくらはぎの筋肉が多く使われるようなシューズは膝裏の痛みにつながりやすくなります。
たとえばクッションが薄いシューズはふくらはぎの筋肉が使われやすく、クッションの代わりに足首で衝撃吸収を補うような動きになるためです。
クッション性が全くない裸足感覚のシューズは普段鍛えにくい筋肉に刺激を入れることができますが、ふくらはぎの筋肉への負荷が特に大きくなりやすく、長い距離を走ってしまうと膝裏の痛みにつながることがあります。
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かかとが低いようなシューズもふくらはぎの筋肉が使われやすくなります。
かかとが高いシューズは、かかとを上げる動作を補助するため、ふくらはぎへの負担が軽減されます。
一方、かかとが低いシューズは、ふくらはぎがより活発に働き、負担が増大する傾向にあります。
練習メニュー
ランニングの練習メニューの組み立て方が膝裏の痛みにつながることがあります。
特にアップダウンが続く道でのランニングや坂道ダッシュなど、傾斜がある練習メニューが膝裏にダメージがかかりやすくなります。
上り坂を走っているときにはハムストリングスやふくらはぎなど膝裏につながっている筋肉がより多く使われますが、膝の前側にある大腿四頭筋の働きはそんなに増えるわけではありません2。
一方で下り坂では大腿四頭筋といった膝の前側の筋肉が使われやすく、膝の前に負荷がかかりやすくなります。
このため上り坂でのランニングは膝の裏側の痛みにつながりやすく、私自身もアップダウンの激しいクロスカントリーや坂道ダッシュを取り入れた時期に膝裏に違和感が出たことがあります。
筋力バランス
ランニングでの膝裏の痛みには筋力バランスも関係していることがあります。
特にふくらはぎやハムストリングスといった後ろ側についている筋肉が弱いと膝裏の痛みにつながります。
近年のランニングシューズはクッション性が高かったり、かかとが高いシューズも多く、ふくらはぎへの依存度を低減するため、結果的にふくらはぎの筋力が低下しやすい傾向にあります。
また、ハムストリングスは日常的に使われることが少なく、意識的に鍛えていないと筋力が弱くなりやすい傾向にあります。
ランニングフォーム
ランニングフォーム次第では膝裏に負荷がかかりやすくなることがあります。
たとえばかかと着地ではなく、つま先付近から着地するようなフォアフットでの走り方はふくらはぎの筋肉が使われやすく、膝裏にも負荷がかかりやすくなります。
特にランニングフォームを変えた時などは耐性が弱いため、膝裏の痛みが起こりやすく注意が必要です。
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また、上体が前傾姿勢になっているようなランニングフォームはハムストリングスの筋肉が使われやすく、膝裏に負荷がかかりやすいと言えます。
こういった膝裏に負荷がかかりやすいランニングフォームはありますが、ランニングフォーム自体が悪いわけではなく、どちらかというとランニングフォームの取り入れ方などの問題であることも珍しくありません。
過剰な練習
普段やっていないような過剰な練習、いつもとは違う練習を取り入れた時などに膝裏の痛みが起こりやすくなります。
人の身体は負荷に徐々に適応することができますが、慣れていないのに急激に負荷がかかる時に怪我のリスクがあります。
ベアフットシューズ、アップダウンでのペース走、坂道ダッシュなどの練習も、身体が適応し、慣れてくるとこういった練習を多く取り入れても膝裏の痛みは出にくくなります。
ランニングの膝裏の痛みの改善方法
休養
ランニングでの膝裏の痛みの改善は十分な休養を取ることが基本になります。
練習メニューやシューズを変えるというのもひとつの方法ではありますが、十分な休養を取らずに膝裏のダメージが回復していない状況では痛みを再発してしまうリスクがあります。
膝裏の骨がぶつかっているような感覚がするといった違和感がある時にも注意が必要であり、こういった違和感がある時には無理にランニングをせずに、まずは休養を取ることが重要になります。
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ストレッチ
膝裏に痛みがある時にはふくらはぎやハムストリングスといった裏側の筋肉をストレッチでほぐすことが役立ちます。
特に足首の柔軟性は不足していることが多く、ふくらはぎを伸ばすようなストレッチで足首の可動域を高めることが役立ちます。
しかし、ストレッチ自体にはダメージを回復させる効果があるわけではないことに注意が必要です。
トレーニング
膝裏の痛みの改善にはトレーニングで弱い筋肉を鍛えることが役立ちます。
痛みがあるときにふくらはぎやハムストリングスなどのトレーニングや体重をかけたトレーニングでは過剰な負荷がかかり痛みが悪化してリスクがあります。
まずは体重をかけないようにしながら周辺の筋肉から鍛えることがポイントになります。
お尻に刺激を入れるようなトレーニングは、ハムストリングスの働きを助けてランニング時の負荷を分散させることができます。
また、タオルギャザーといった足の指を使うトレーニングは足元の安定性を高めて、ふくらはぎの負荷を減らすのに役立ちます。
膝裏の痛みが改善してきたら、徐々にふくらはぎやハムストリングスのトレーニングを徐々に取り入れていきます。
まとめ
ランニングの膝裏の痛みは不適切なランニングシューズ、アップダウンの多いコース、ランニングフォーム、ふくらはぎやハムストリングスの筋力不足、過剰な練習などが原因になります。
膝裏の痛みの改善には十分な休養やストレッチ、トレーニングで弱い筋肉を鍛えることが役立ちます。
<参考文献>
- English S, Perret D. Posterior knee pain. Curr Rev Musculoskelet Med. 2010 Jun 12;3(1-4):3-10. doi: 10.1007/s12178-010-9057-4. PMID: 21063493; PMCID: PMC2941578.
- Masamichi Okudaira, Steffen Willwacher, Seita Kuki, Takuya Yoshida, Hirohiko Maemura, Satoru Tanigawa, Effect of incline on lower extremity muscle activity during sprinting, The Journal of Physical Fitness and Sports Medicine, 2021, Volume 10, Issue 2, Pages 67-74
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