バドミントンの手首の痛みの種類
バドミントンによる手首の痛みはその原因や症状によっていくつかの種類に分けられ、主なものとしては以下のものが挙げられます。
手首の捻挫は靭帯が転倒時に手をつくなど急な外力によって損傷した状態です。
腱鞘炎は繰り返しの動作や負荷によって腱を覆う腱鞘という部分に炎症を起こした状態です。
手根管症候群は手首にある「手根管」を通る正中神経が圧迫されることで指先のしびれや痛み、進行すると握力の低下などが起こります。
TFCC損傷は手首の安定性に関わる軟骨組織であるTFCCが、衝撃や繰り返しの負荷によって損傷するもので手首の小指側の痛み、手首を回す際の痛みや不安定感、クリック音などが起こります。
このように手首の痛みは様々なものがあり、バドミントンをプレーすることが困難な場合には専門家の診断を受けることが大事です。
バドミントンの手首の痛みの原因
手首の動き
スイングにおいて手首の動きが大きいと手首に負荷がかかりやすく、手首の痛みにつながるリスクがあります。
いわゆる手打ちと言われるようなスイング、手首のスナップに頼った打ち方ばかりをしていると手首にダメージが蓄積しやすくなります。
他にもインパクトの瞬間は手首を曲げないニュートラルなポジションのほうがダメージを受けにくく、手首が曲がっていたり捻られていると手首の負荷も大きくなります1。
特に力を込めたスイングやスマッシュなど、強烈なショットを打つときほど手首の角度による影響が大きくなります。
グリップの握り方
バドミントンのグリップの握り方も手首の痛みに関係していることがあります。
ラケットの面を垂直にして握るイースタングリップでは親指側の手首を痛めやすく、ラケットの面を地面と平行にして握るウェスタングリップでは小指側の手首を痛めやすい傾向にあることが報告されています2。
また、バドミントンのガットのテンションの強さが手首の負担に関係していて、強いテンションのガットは手首により大きな負担がかかりやすくなります。
筋力不足
手首周りの筋力不足があるとバランスが乱れ、バドミントンでのダメージが蓄積されやすくなります。
手首の筋肉を意図的に鍛えることは少なく、知らず知らずのうちに手首の筋肉が偏っていることがよくあります。
例えば腱鞘炎の場合には手首の伸筋群の筋肉が大きく発達し、手首の屈筋群の筋肉が弱いことが多々あります3。
指の筋力の弱さがバドミントンでの手首の痛みに関係していることがあります。
親指の筋肉が弱かったり、小指の筋肉が弱かったり、指の筋肉の一部がうまく使えていないことが珍しくありません。
指の筋肉が弱いとラケットのグリップが不安定になってしまい、ラケットで打つときの手首のダメージが大きくなってしまうことがあります。
柔軟性の低下
手首を動かす筋肉の多くは前腕にありますが、こういった筋肉が硬いと手首の動きが悪くなってしまうことがあります。
また、指の筋肉の硬さも手首の痛みに関係していることがあります。
こういった部分の筋肉の硬さは自覚しにくく、あまりケアしていないことが珍しくありません。
過剰な運動量
バドミントンでの手首の痛みは過剰な運動による慢性的なダメージの蓄積が関係していることが多々あります。
いつもより練習時間が長くなった、練習の強度が高くなったなど、普段と違う練習メニューをしているなど、慣れていないことをすると痛みにつながりやすくなります。
また、休養をほとんど取っていないなど身体が回復する時間がないことも怪我の原因になります。
バドミントンの手首の痛みの改善方法
休養
手首の痛みの改善の基本は十分な休養を取ることです。
休養期間の見積もりが甘いと、休んでいるのに思うように痛みが改善しないという事態につながることがあります。
思っているよりも長い休養期間が必要となることは珍しくなく、余裕をもって休養を取ることが大事になります。
テーピング
バドミントンの手首の痛みの改善にはテーピングが役立ちます。
基本的には手首周りにテーピングを巻いて手首の動きをある程度制限しつつ、手首の安定性を高めるような巻き方になります。
腱鞘炎の場合には痛めている筋肉を補助するようなテーピングを入れるなど、手首の痛みの種類によってテーピングのバリエーションは違ってきます。
最適なテーピング方法については専門家に相談することが大事になります。
ストレッチ
手首のストレッチは柔軟性を高めるのに役立ち、手首を曲げることで前腕の筋肉を伸ばるようにストレッチしていきます。
とはいえストレッチだけではほぐせない筋肉があるため、マッサージなど他の方法を組み合わせてケアを行うことが大事になります。
マッサージ
前腕の筋肉をマッサージでほぐすことは手首の痛みの改善に役立ちます。
前腕の筋肉は意外とほぐしにくいことがあるため、マッサージ器具などを使うと効率的にほぐしやすくなります。
また、手の平や手の甲などもマッサージでほぐしておくことが手首のスムーズな動きに役立ちます。
トレーニング
手首の痛みを改善するためには手首周りの筋肉を鍛えることが役立ちます。
痛みが出るようなエクササイズは逆効果になる可能性があるため、痛みや違和感のない簡単なエクササイズから取り組むことが大事です。
手首のエクササイズだけでなく、指のエクササイズも手首の痛みの改善に役立ちます。
手首を痛めている人は指を回すようなエクササイズが意外と思うようにできないことがあり、5本指の中でも特に動きが悪い指を重点的にエクササイズを行うことが役立ちます。
また、バドミントン選手は握る力が十分にあることが多いのですが、指先を広げるような動きをすることが少ないためこの筋肉が弱くなりがちです。
このため指先を広げる力を鍛えるようなエクササイズが手首の痛みの改善に役立ちます。
まとめ
バドミントンの手首の痛みは手首に頼った打ち方、手首の角度、グリップ、手首や指の筋力、柔軟性の低下などが原因になります。
痛みの改善には休養、テーピング、ストレッチやマッサージ、手首周りのエクササイズが役立ちます。
<参考文献>
- Israel JS, Loushin SR, Tetzloff SU, Ellenbecker T, Kaufman KR, Kakar S. Wrist Motion Assessment in Tennis Players using Three-Dimensional Motion Capture and Dynamic Electromyography. J Wrist Surg. 2023 Nov 30;13(3):264-271. doi: 10.1055/s-0043-1777024. PMID: 38808185; PMCID: PMC11129886.
- Tagliafico AS, Ameri P, Michaud J, Derchi LE, Sormani MP, Martinoli C. Wrist injuries in nonprofessional tennis players: relationships with different grips. Am J Sports Med. 2009 Apr;37(4):760-7. doi: 10.1177/0363546508328112. Epub 2009 Mar 6. PMID: 19270188.
- Prasad N, LaPorte DM. Tendinitis Around the Wrist and Hand. Instr Course Lect. 2025;74:143-154. PMID: 39745557.