ランニング

バック走のトレーニング効果について

2024年10月15日

 

後ろ向きでのランニングであるバック走は、普段のランニングでは得られない独特のトレーニング効果をもたらします。

 

バック走の効果

持久力の向上

バック走でのランニングを行うことで持久力を高めることができます。

実際に長距離ランナーがトレッドミルで15~20分のバック走を5週間ほど行ったところ、ランニングエコノミーが改善したことが報告されています

非効率な動きをあえて行うことで、心肺機能などに負荷をかけ、持久力を高めることができます。

バック走

 

スプリント走の向上

バック走でのスプリント走のトレーニングは瞬発力を高める効果があります。

実際にバック走のダッシュに取り組むことでスプリント走の加速が速くなったことが報告されています

これはスタート時や加速局面で重要となる筋肉の使い方を、バック走が補強してくれるためと考えられます。

 

バック走のメカニズム

消費エネルギーが多い

バック走は普段とは違う身体の使い方による走り方になります。

バック走では走り方の効率が悪く、同じスピードでも消費エネルギーが約35%増えることが報告されています

というのもバック走では反動や弾性エネルギーを効率的に使うことができないため、速く走ることが難しくなります。

このため普段よりも筋肉の活動量が多くなり、消費エネルギーも大きくなります。

陸上トラック

 

鍛えられる筋肉

バック走では筋肉がより多く使われ、普段使わないような筋肉にも刺激を入れることができます。

バック走では特に大腿四頭筋の活動量が増える傾向にあり、着地の安定性を高めることやストライドの歩幅を支えることなどに役立ちます。

大腿四頭筋

また、バック走ではハムストリングスの活動量が増えることもあり、推進力を生み出す筋肉を鍛えられる可能性があります。

ハムストリングス

 

怪我のリスク

バック走では筋肉が多く使われますが、走るスピード自体は遅いため怪我のリスクが小さいと言われています

走るスピードが遅いことで着地衝撃が小さくなり、勢いや反動がつきにくく、関節や腱への負荷が軽くなります。

このためバック走はリハビリなどにも適していると言われることがあります。

脚の痛み

ただし、バック走ではつま先に負荷がかかりやすく、中足骨の疲労骨折や種子骨炎などの指先の怪我がある場合には注意が必要です。

 

バック走のトレーニング方法

トレッドミル(長距離)

バック走では進行方向を確認することができないため、障害物がない安全を確保した状態で行う必要があります。

トレッドミルでのバック走では障害物や人にぶつかるリスクがなく、長時間のバック走を行うことができます。

トレッドミル

慣れていないのにトレッドミルを速いスピードに設定してバック走を行うと、バランスを崩して転倒してしまうリスクがあります。

最初は早歩きくらいのゆっくりしたスピードで行うことが重要であり、手すりに捕まりながら足を動かします。慣れてきたら手を離して走り、少しずつ走るスピードを速くしていきます。

バック走では身体が疲労するのが早いため、時間が経過するにつれて脚が重くなりやすく、転倒のリスクを避けるためには余裕を持ったスピード設定が大事になります。

トレッドミルランニングフォーム
トレッドミルでのランニングの効果と注意点

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陸上競技場(短距離)

バック走でのダッシュを行う場合には陸上競技場や運動場などの広い場所で行うことが大事であり、地面がボコボコしていないこと、進行ルートが確認できるラインや目印となるマーカーなどがあるのが好ましいです。

陸上競技場では50m~100mくらいの距離での全力でのインターバル走などの練習メニューがあります。

陸上トラック

 

まとめ

バック走でのランニングには持久力アップやスプリント走向上などの効果があります。

普段とは違う筋肉に刺激が入り、筋肉を強化するのに役立ちます。

バック走を行う際には安全な場所で行うことが大切であり、転倒事故を避けるためにも余裕を持ったペース設定なども忘れてはいけません。

 

<参考文献>

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