腰痛

200kgスクワットでの腰痛を防ぐ体幹トレーニング

2024年7月15日

スクワット

アスリートが速く走るためには高重量のウェイトトレーニングが欠かせませんが、こういったトレーニングで腰を痛めてしまうアスリートが後を立ちません。

ここでアスリートが200kg近くのウェイトトレーニングを腰痛なしでできるようになるためのポイントについてご紹介していきたいと思います。

 

体幹トレーニングについて

近年では体幹トレーニングも普及してきており、体幹を鍛えることが広く取り入れられてきています。

その中でも医療従事者はインナーマッスルの体幹トレーニングを好む傾向がありますし、ピラティスとかヨガなどでも体幹を鍛えることができます。

こういった方法は腰痛を改善するのに効果がありますし、有名なアスリートが取り入れていることが多々あります。

プランクエクササイズ

しかし、200kg近くの高重量のウェイトトレーニングや、高強度の練習に耐えられるような身体を作るにはいわゆる一般的な体幹トレーニングだけでは不十分であると思います。

私も過去に専門家や有名な団体などから体幹トレーニングについて学んできましたが、約100kgのスクワットで腰痛が出てしまい、挫折してしまった経験があります。

こういった体幹トレーニングは腰痛を減らすのに確かに効果があったのですが、100kgを超えるウェイトトレーニングでの腰痛を防ぐことを想定されたものではなかったと今では思います。

 

その後400kg近くのスクワットを記録し、スクワットの世界一を獲得したことがある人が関わっている腰痛の勉強会に参加したことで私の考え方が大きく変わりました。

いわゆる医療従事者が好む腰痛防止のトレーニングと高重量のスクワットで腰痛を減らすトレーニングは似て非なるものであることに衝撃を受けました。

まだまだ体幹トレーニングに対する理解が浅かったことを痛感し、試行錯誤を重ねていくことで、180kgのウェイトトレーニングを腰痛なしでできるようになりました。

 

体幹トレーニングで腰痛を減らすためのポイント

全ての筋肉をバランスよく

体幹トレーニングの講座では〇〇筋が大事とか、〇〇筋を鍛えると腰痛が減る、みたいなことが言われることがよくありますが、腰痛を防ぐためには全ての体幹の筋肉が重要になります。

軽視していい筋肉というものはないのですが、腰痛を抱えているケースでは特定の筋肉が強い一方で弱い筋肉が存在することが珍しくありません。

このため医療従事者が好むような体幹のインナーマッスルのトレーニングだけでは高重量に耐えられるような強靭な体幹を作り上げることが難しいと言えます。

腹筋シックスパック

そして、高重量のトレーニングに耐えられる身体を作り上げるには全ての筋肉を強化するだけでは足りないと思います。

体幹の周りの全ての筋肉を鍛え、それらをうまく連動して筋力発揮させることが必要になってきます。

この体幹の筋肉を連動させるという部分が難しい部分であり、力やパワーだけでは解決できない部分でもあります。

 

つまり、爆発的なパワーだけでも細かい体幹のインナーマッスルだけでも、腰痛が起こりにくい強靭な体幹を作り上げることは難しいと思います。

 

綺麗な姿勢でトレーニングを行う

高重量のトレーニングになるほど姿勢が悪いと腰への負荷が高まりやすく、トレーニングで腰痛を引き起こしやすくなるので注意が必要です。

このため軽い自重でのトレーニングの段階から綺麗な姿勢でエクササイズを行うことが大切になってくるのですが、

一般的に姿勢が乱れてしまっている時には「綺麗な姿勢を意識して」という指示を出して、姿勢を改善しようとすることがよく見受けられます。

この考え方自体は間違いではないのですが、なぜ綺麗な姿勢を取れないのか?ということを考えることも大事です。

体幹トレーニング

体幹の筋肉の連動性に問題はないか、弱い筋肉が見逃されていないか、といった視点で分析して弱点を改善することで気合いを入れなくても綺麗な姿勢が取りやすくなるということは多々あります。

が、この弱点の分析が意外と難しかったりするので変なクセがついたまま体幹トレーニングを続行してしまうことも少なくない印象です。

 

体幹トレーニング

腹直筋

腹筋

体幹の筋肉の中でもシックスパックに代表されるような腹直筋を鍛えているアスリートは多くいることかと思います。

確かに強い腹筋を獲得することは大事なのですが、腰痛防止という観点からは少し効率が悪い部分があります。

というのもシックスパックを作るような腹筋のトレーニングは負荷が高すぎて腰に負担がかかりやすいですし、他の部分が腰痛の原因になっていることがあるためです。

プランク

腰に大きな負荷をかけずに腹筋を鍛えるという点ではプランク系の種目に長所があり、キャパシティを超えない範囲で鍛えていくことが腰痛防止に役立ちます。

さらにプランク系の種目はアレンジがしやすく、バリエーションも豊富であるため、体幹の筋肉の連動性を改善するという面でも優れた効果を発揮します。

しかし、プランクのトレーニングは徐々に物足りなくなってくるという問題点があり、強靭な体幹を作るという点ではプランクだけでは足りないと思います。

腹筋ローラー

強靭な体幹を作るという観点からは負荷の高いトレーニングも徐々に取り入れていくことが大事なのですが、いきなり重りをつけたりすると腰の負担が大きくなりすぎるので注意が必要です。

まずは自重でできる腹筋のトレーニングを数多く取り入れていくことが安全に腹筋を鍛えるポイントであり、様々なバリエーションの腹筋のトレーニングに取り組んでいくことが良いかと思います。

 

腹斜筋

腹斜筋

腹斜筋は腰痛防止において過小評価されがちな筋肉のひとつであり、十分に鍛えられていないことが多々あります。

腹斜筋を鍛える場合にはサイドプランクなどのエクササイズが有名ですが、こういったエクササイズは適度に腰の負荷を抑えながら体幹の連動性を生み出すことができます。サイドプランク

しかし、腰痛を抱えている人の場合にはこういったトレーニングは腰に過剰な負荷がかかってしまうことが珍しくないので、もっと負荷の軽いエクササイズから始めていくことが賢明です。

そして腹斜筋を鍛えていくとプランク系のエクササイズでは物足りなくなってくるので、徐々に脊柱を動かすようなエクササイズを取り入れていくことも大事です。

腹斜筋を鍛えるエクササイズでメディシンボールなどの重りを使ったトレーニングが根強い人気がありますが、こういったトレーニングは腰に大きな負担がかかりやく、やり過ぎて腰痛を引き起こすことが珍しくありません。

ロシアンツイスト

まずは自重でできる腹斜筋のトレーニングをやり尽くして、そこから脊柱を動かさない状態のトレーニングに対して徐々に重さを足していった方が安全です。

 

脊柱起立筋

脊柱起立筋

腰痛を防ぐためには脊柱起立筋のトレーニングも大事なのですが、脊柱起立筋のトレーニングは負荷が高すぎるものが多く、かえって腰痛を悪化させてしまうようなものが多数あります。

例えば、背中を反らすエクササイズは自重でできるトレーニングではありますが、腰を大きく曲げてしまうので腰の負荷が大きくなりやすいと言えます。

バックエクステンション

腰痛を抱えている人の場合には、まずは背中をまっすぐ綺麗にして四肢を動かすエクササイズで脊柱起立筋の連動性を鍛えていくことが安全にできる方法であるかと思います。

脊柱起立筋はパワーが過剰になりがちなので、連動性から鍛えていくことが腰痛に効果的だったりします。

体幹トレーニング

普段は気が付かないような姿勢の乱れや脊柱起立筋の左右差などをしっかり解消しながらトレーニングを段階的に進めていくことが大事になります。

 

腰方形筋

腰方形筋

体幹の筋肉の中でも腰方形筋は弱くなっていることが多々あり、その存在に注意を払っていないというケースも多々あるかと思います。

というのも腰方形筋を鍛えられるようなエクササイズはかなり種類が限られていて、そもそも鍛えていないということも珍しくありません。

有名なエクササイズで言えばサイドプランクで少しばかり腰方形筋に刺激を入れることができますが、十分に鍛えることは難しいと思います。

サイドプランク

腰方形筋を鍛えるには体幹の力で脚を左右に動かすようなトレーニングが役立ち、こういった腰方形筋のエクササイズが意外と腰痛に対して効果を発揮することが珍しくありません。

体幹トレーニング

 

インナーユニット

医療従事者やトレーナーは体幹のインナーユニット(腹横筋・多裂筋・骨盤底筋・横隔膜など)のトレーニングを好むことが多い印象です。

コアトレーニング

腰痛を抱えているケースでは腰に過剰に負荷がかかっていることが多いため、最小限の負荷でできるインナーマッスルのトレーニングはメリットがあります。

また、アスリートは大きな筋肉が鍛え上げられていてもインナーマッスルのトレーニングが疎かになっていることが多いため、アスリートの腰痛改善にインナーユニットのトレーニングが効果を発揮することが珍しくありません。

 

しかし、インナーマッスルのトレーニングにも欠点があり、200kg近くのウェイトトレーニングを行うには体幹のインナーマッスルを鍛えるだけでは不十分です。

 

高重量トレーニング

高重量のウェイトトレーニングを行うためには、身体を高重量の負荷に適応させる必要があります。

実際にデッドリフトなどに取り組むことで腰痛が減るという研究結果もありますし、高重量トレーニングにも腰痛を減らす効果があるという研究結果も報告されています2・3

 

しかし、体幹が十分に鍛え上げられていないまま高重量トレーニングを行うと腰痛を引き起こしやすくなります。

このため高重量トレーニングを行う前に体幹の筋肉を徹底的に鍛えておくことが大事になってきます。

スクワット

高重量を扱うことに不安を感じる場合などは、十分に体幹の筋肉が鍛えられていない可能性が考えられます。

高重量のウェイトトレーニングを進めていく中で不安がない状態、むしろ少し余裕を感じるくらいにまで体幹の筋肉を仕上げてから身体を高重量トレーニングに適応させていくことが腰痛を防ぐポイントになるかと思います。

不安を感じる場合には高重量トレーニングをやめて、体幹の筋肉で見逃している部分がないかを確認しながら、身体作りをやり直すという選択も大事ではないでしょうか。

 

注意点

適度なストレッチとマッサージ

体幹トレーニングを続けていると体幹の筋肉が硬くなってくることがあるので、適度なストレッチやマッサージなどで身体をほぐすことが役立ちます。

しかし、高重量トレーニングなどを続けていると次第にしつこい腰が張りが生まれることがあり、ストレッチやマッサージでほぐせないことも珍しくありません。

この場合にストレッチやマッサージをしつこく行うことは好ましくなく、どちらかというと休養が足りていないことが原因だったりします。

腰フォームローラー

整体などで腰をほぐした直後は楽になるのですが、すぐに元に戻ってしまう、何度も通って腰をメンテナンスしている人も見受けられますが、

そういった人に数週間のウェイトトレーニングの休みを入れると腰の張りが緩和されることが多々あります。

柔軟性が足りていないのではなく、休養が足りていないという可能性も頭の中に入れておいた方がいいかと思います。

 

強靭な体幹とは?

高重量のウェイトトレーニングでの腰痛を防ぐ身体にするためには強靭な体幹を獲得することがポイントになります。

強靭な体幹というのは甘く見られがちであり、一般的に自分自身の体幹の強さを過大評価しがちだと思います。

「体幹が強くなったぞ!」とアスリート言い始めるくらい自信がついてきた時、その2〜3倍は体幹を強化する必要があるというのが私の印象です。

腹筋

具体的には体幹トレーニングの書籍、体幹トレーニングに関する主なYouTubeの動画にあるエクササイズをやり尽くすくらいになると「体幹が強くなった」と思い始めることが多いように思いますが、それくらいでは強靭な体幹を獲得したとは言い難いと思います。

それまで体幹トレーニングに費やしてきた努力の2〜3倍くらい、まだまだ体幹を鍛えていくことで本当に強い体幹になったと言えると思います。

書籍やYouTubeにある体幹トレーニングではわりと簡単な内容を上級者向けと表現することが多々ありますし、本当に上級者向けの体幹トレーニングは地味すぎてバズりにくい印象です。

 

そして、体幹トレーニングや腹筋に5kgや10kg重りをつけてできるようになったら強い体幹を獲得できた、というのもよくある勘違いではないかと思います。

重りをつけて腹筋をやっている人でも、手足を動かすという簡単な動作で身体の軸がブレっぶれになってしまうことはよくあります。

腰痛を防ぐことができる体幹の強さというのは、フルパワーで手脚を動かしても身体の軸がブレないといった強さであり、高重量で腹筋ができる筋肉の強さとは少し違ってきます。

 

まとめ

腰痛防止のために体幹トレーニングに取り組む人が増えてきていますが、200kg近くのウェイトトレーニングで腰痛を防ぐための体幹トレーニングは一般的なものと少し違ってきます。

体幹の全ての筋肉を徹底的に鍛え上げ、それらを連動させて筋力発揮できるような状態に仕上げ、そこから高重量の負荷に身体を適応させていくことが大事になります。

 

<参考文献>

  1. Fischer SC, Calley DQ, Hollman JH. Effect of an Exercise Program That Includes Deadlifts on Low Back Pain. J Sport Rehabil. 2021 Feb 24;30(4):672-675. doi: 10.1123/jsr.2020-0324. PMID: 33626500.
  2. Aasa B, Berglund L, Michaelson P, Aasa U. Individualized low-load motor control exercises and education versus a high-load lifting exercise and education to improve activity, pain intensity, and physical performance in patients with low back pain: a randomized controlled trial. J Orthop Sports Phys Ther. 2015 Feb;45(2):77-85, B1-4. doi: 10.2519/jospt.2015.5021. PMID: 25641309.
  3. Michaelson P, Holmberg D, Aasa B, Aasa U. High load lifting exercise and low load motor control exercises as interventions for patients with mechanical low back pain: A randomized controlled trial with 24-month follow-up. J Rehabil Med. 2016 Apr 28;48(5):456-63. doi: 10.2340/16501977-2091. PMID: 27097785.
  4. Stuart McGill. Gift of Injury: The Strength Athlete's Guide to Recovering from Back Injury and Winning Again. Backfitpro, Incorporated, 2017. ISBN 0973501863, 9780973501865.

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