外反母趾による足の痛みはシューズの影響が大きく、適切なシューズを選ぶことが大事であると言われています。
しかし、どういったシューズがいいのかわかりにくいという悩みを抱えている人も多くいます。
ここで外反母趾に対するシューズ選びのポイントについて解説していきたいと思います。
外反母趾を悪化させるシューズの特徴
つま先が細いシューズ
先の細いシューズはつま先が圧迫されやすく外反母趾につながりやすいことが報告されています1。
例えばバレエのトゥシューズはつま先が窮屈であり、バレエダンサーの外反母趾は珍しくありません。
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一般的に指先の幅が広いワイド幅のシューズが外反母趾に良いと言われています。
しかし、たとえ指先の幅が広いシューズであったとしても、履き続けて擦り減ったシューズでは外反母趾のリスクが高まります2。
理想的なシューズを見つけたとして一定期間履き続けると劣化しやすく、定期的にシューズを買い替えることも大事になります。
サイズが小さいシューズ
足のサイズに対してシューズのサイズが小さいと外反母趾につながることが報告されています3・4。
サイズが小さいシューズではつま先が圧迫され、歩いたり走ったりするときの微妙な靴ズレに対するスペース余裕がなくなってしまいます。
実際の足の長さに対して1~2cm大きいサイズのシューズが適切であると言われています。
ヒールが高いシューズ
ヒールが高いシューズも外反母趾につながるリスクがあり、特にハイヒールなどのシューズは外反母趾につながります5・6。
ヒールが高いシューズでは指先にも荷重が集中しやすく、大きな負荷がかかりやすくなります。
また、ヒールが高いシューズは不安定になりやすく、歩行時やランニング時のふらつきやブレが生じやすくなります。

プロネーション
足関節が歪んでいると負荷が大きくなりやすく、外反母趾につながります。
特につま先が外を向いてしまうような足関節のプロネーションは外反母趾のリスクがあることが報告されています7。

これは特定のシューズが誰に対しても効果を発揮するのではなく、足関節の状態や歪みに合わせてシューズを微調整する必要があるということを示しています。
また、足部のプロネーションに対してはストレッチやマッサージ、足部のトレーニングなどを行うことも大切になります。
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不安定なシューズ
不安定でグラつきやすいシューズも外反母趾につながります。
不安定だとつま先が外を向いたり足関節の歪みを引き起こしたり、歩行やランニング動作などが乱れやすくなります。
特に分厚いクッションシューズには注意が必要であり、クッションはフワフワしているため不安定になりがちです。
そもそも外反母趾を抱えている人は足関節の筋力が弱い傾向にあり、足関節が不安定であるためクッションシューズとの相性が悪いことが珍しくありません。
履き古したシューズ
どんなに良いシューズだったとしても継続的に使用していると徐々に劣化し、シューズが変形していきます。
同じシューズを長期間履いている場合にはシューズが悪影響を生み出していることが多々あります。
特にクッションシューズは継続的な使用による劣化が早いというデメリットもあり、クッション部分が変形して歪みが生じやすいという懸念があります。
そしてシューズだけでなくインソールも一定期間経過すると劣化していきます8。
使用頻度や運動量などによっても違ってきますが、半年や1年など一定期間使用したシューズや大きく削れているシューズなどは買い替えることが外反母趾を防ぐポイントになります。
シューズは使わずに保管しているだけでも2~3年経過すると徐々に劣化していくことにも注意が必要です。
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外反母趾を防ぐためのシューズ
サイズが合っているシューズ
サイズが合っているシューズ選ぶというのは基礎的なことかもしれませんが、しっかりと押さえておきたいポイントになります。
つま先がきつくならないように余裕を持たせるために横幅が広いシューズ、足の長さより1~2cm大きいシューズを選ぶこと、履いた時につま先に指1本分ほどのスペースがあることが大事です。
かといって大きすぎるシューズは靴ズレを起こしやすく、歩行動作やランニングなどに支障があります。
足の甲の締め付けなども忘れずにチェックし、きつすぎず緩すぎないシューズを選ぶことが大切です。

具体的な数値基準だけでなく、主観的に快適だと感じるシューズを選ぶことも重要です。
実際にシューズの主観的な快適さは痛みや怪我を減らすのに大きな効果があることが報告されています9。
アンチプロネーションシューズ
つま先が外側を向いてしまうような足部のプロネーションは外反母趾のリスクとなるため、こういった歪みの対策が施されているアンチプロネーションシューズも選択肢のひとつです。

とはいえ、ただアンチプロネーションシューズを選べばいいというわけではなく、足関節の歪みの程度に合わせたシューズを選ぶことがポイントになります。
その人の足の状態を確認しながらシューズを見極める必要があることも多々あり、専門家に相談することも大事になります。
ヒールが低いシューズ
ヒールが低いシューズは軸が安定しやすく、足部がブレにくいため外反母趾に対して役立つ可能性があります。

特に裸足感覚に近い靴(ミニマリストシューズ)は指の筋肉に刺激が入りやすく、外反母趾を改善する効果があるという報告もあります10。
一方でミニマリストシューズのようなヒールが低すぎるシューズはクッション性が弱い傾向にあり、足底筋膜炎や種子骨炎といった別の怪我を引き起こすことがあるため注意が必要です。
慣れていない人が長時間履き続けると痛みを引き起こすリスクがあるため、少しずつ慣らしていくことが大切になります。
いきなり裸足感覚に近いような極端にヒールが低いシューズは避けること、ミニマリストシューズを選ぶ場合でも短い時間での使用から始めていくことがポイントです。
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クッションシューズ
適度なクッション性があるシューズは拇趾への負荷を軽減でき、外反母趾に役立つと言われています。
しかし、クッションシューズが外反母趾の痛みや症状を改善するという研究結果は意外と少ないのが現状です。

クッション性の見極めは意外と難しく、クッションが厚すぎると足関節が不安定になるというリスクがあり、一方でクッションが少なすぎると衝撃吸収が弱く負荷がかかりやすいというリスクがあります。
クッションが多いほど良いというわけでも、クッションが少ないほど良いというわけでもありません。
その人の足の状態によって最適なクッション量は違ってきます。判断に迷う場合には専門家に相談することも大切になります。
シューズのクッション性は足の指の筋力にも左右され、足の指の筋力が強いほどクッション性の高いシューズを履いても足部が安定しやすく、問題が起こりにくくなります。
このため足の指の筋肉をしっかり鍛えることも大事であり、履きこなせるシューズの選択肢を広げるのに役立ちます。
インソール
シューズ選びに迷ったときの選択肢のひとつがインソールになります。
特にオーダーメイドのインソールはその人の足の状態に合わせて作られるため、外反母趾に対して効果的です7。
しかし、オーダーメイドのインソールは価格が高いというデメリットがありますし、一定期間使用すると劣化してしまうという点を踏まえるとコストが高くなりがちです。

一方で市販のインソールは相対的に価格が安いというメリットがありますが、足の状態に合うものを選ぶことが難しいというデメリットがあります。
また、適切なシューズを見極めることができればインソールを買わずに済むという点も忘れてはいけません。
まとめ
指先が狭いシューズ、サイズが小さいシューズ、ヒールが高いシューズ、不安定なシューズ、足部の軸が歪むようなシューズは外反母趾につながる可能性があります。
外反母趾を防ぐためには適切なサイズのシューズ、快適さ、ヒールが高すぎないもの、適度なクッションと安定性があるシューズを選ぶことが役に立ちます。
<参考文献>
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