外反母趾は歩行時の違和感や痛みを引き起こし、やっかいな怪我です。
外反母趾の改善方法には様々なものがありますが、根本的な改善にはトレーニングで筋肉を鍛えることも重要になります。
外反母趾とは?
外反母趾とは足の親指が曲がり、親指の付け根の関節が内側に突出してしまう怪我であり、この突出した部分が痛みや炎症を引き起こします。
外反母趾は関節が緩い状態にあり、筋力不足を抱えていることが多々あります1。
このため足部のトレーニングに取り組むことで外反母趾が改善することが報告されています2。
そして、母趾の筋肉の強化だけでなく、広範囲にトレーニングをすることで効果が高まります。
というのも重心が偏ると外反母趾につながりやすく、足の指に体重を乗せることや足首でバランスをとるなど、うまく重心を分散することがポイントになります3。
足の指のトレーニング
タオルギャザー
足の指のトレーニングとして有名なエクササイズであり、タオルを手繰り寄せるように足の指を動かします。
リハビリなどでタオルギャザーのエクササイズに取り組んだことがある人も多々いますが、思うようにできないという人も少なくありません。
まずはできる範囲で取り組んでみて、エクササイズが難しすぎる場合にはもっと簡単なものから始めることが大事になります。
(Tourillon et al 2019)
グーチョキパー
足の指でグーチョキパーをつくるエクササイズです。
こちらも比較的知られている足の指のエクササイズであり、苦手な人も少なくない印象です。
チューブエクササイズ
両足の親指にチューブをかけて、両側から引っ張るようにして親指の筋肉を鍛えるエクササイズです。
最初は横方向に引っ張るところから始めていき、慣れてきたらチューブをつけたまま親指を上げた状態をキープすることで負荷が高まります。
(Oztarsu and Oksuz 2023)
ショートフットエクササイズ
足の指をぎゅっと縮めるように力を入れ、足のアーチをつくって足の長さが少し短くなるような姿勢を維持するエクササイズです。
足の指で地面を掴む感覚を養うことができますし、足のアーチ改善などにも役立ちます。
(Tourillon et al 2019)
このショートフットと呼ばれる姿勢を維持しながら、様々な負荷を加えてトレーニングを行うバリエーションがあります。
集中していないと足元が緩んでしまいがちになるため、しっかりと足指に力を入れ続けることが大事になります。
(Tourillon et al 2019)
立位での指エクササイズ
立った状態で足の指を上げるエクササイズになります。
立位姿勢で足の指を動かすことで、歩行時などにも足の指が働きやすくなります。
体重がかかった状態で足の指を動かすことが求められるため、意外と思うようにできないことが多々あります。
足首の動きで誤魔化そうとすることが起こりやすく、足首ではなく足の指を動かすことが大事になります。
足首のトレーニング
チューブトレーニング
足首を鍛えることで重心を分散することができ、親指の負荷を減らすことができます。
まずは足首にチューブをひっかけて、4方向に引っ張るところから始めていきます。
(Abdelhaleem et al 2023)
慣れてきたら足首を大きく動かしていくことで、足首の筋肉をより鍛えることができます。
カーフレイズ
踵を上げるカーフレイズのエクササイズは足の指で支えるため、足の指の筋肉にもいい刺激が入ります。
(Oztarsu and Oksuz 2023)
ただ踵を上げるのではなく、踵を真っすぐ上げることがポイントになります。
足の指の筋肉が弱かったり、足首の筋肉が弱いと、踵をまっすぐ上げることが難しくなります。
つま先立ち歩き
カーフレイズに慣れてきたら、つま先立ちで歩くエクササイズを取り入れていきます。
踵が左右にぶれないように、真っすぐをキープしたまま歩いていくことで足の指の筋肉に刺激が入ります。
さらに、足指セパレーターをつけて歩くことで、足の指の筋肉をより鍛えることができます。
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足指セパレーターの効果と注意点
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ふくらはぎのストレッチ
足首の柔軟性は低下しやすく、ふくらはぎの筋肉をストレッチすることも外反母趾の改善に役立ちます。
足首が柔らかいことで重心が整いやすくなり、親指への負荷を減らすことにつながります。
よくある質問
エクササイズ中に指が思うように動かない
足の指を使うエクササイズでよくあるのが、足の指が思うように動かないことです。
これは普段足の指がうまく使えていないことが関係していて、思うように動かせない場合にはエクササイズの難易度を下げて、ちょうどいい負荷になるように難易度を調整することが役立ちます。
最初は思うように足の指を動かせなかった人であっても、エクササイズに取り組むことで徐々に足の指に運動神経が通っていき、自由自在に動かしやすくなっていきます。
一方で現状よりも難しすぎるエクササイズを選んでしまうと効果を感じられずに、諦めてしまう人も少なくない印象です。
足部の柔軟性が指の動きに影響していますか?
足の指周りの硬さが原因で足の指を動かしにくくなっているケースがあります。
足部の硬さは自覚がないケースが多々あり、思わぬところが硬くなっていたりします。
他の人が足の指を動かしてみて、簡単に動かない場合や動きがぎこちない場合などには、マッサージなどで指の動きをスムーズにしておくと足の指のエクササイズがやりやすくなります。
シューズを変えた方がいいですか?
外反母趾を抱えている場合にはシューズが気になることが多い印象です。
適切なシューズにすることで外反母趾の症状が改善しますが、シューズ選びが難しいところです。
まずは、主観的に快適なシューズに変えることが基本となり、できればオーダーメイドのインソールをつくるのが理想ではあります。
とはいえシューズの効果には限界があり、シューズを変えただけで外反母趾がきれいさっぱりなくなるかというと、そうではないケースも多々あります。
このためシューズを変えるだけでなく足部のトレーニングをきっちり行い、弱ってしまった筋肉を強化することが大切ではないかと思います。
ハイヒールを履くにはどうしたらいいですか?
ハイヒールは外反母趾に良くないと言われることがあります。
ハイヒールを問題なく履けるようにするためには、5本指がしっかりと地面を捉えることが大切になります。。
高く踵が上がった状態では足の指の働きが低下しやすいため、しっかりとエクササイズで鍛えて指の働きを改善していくことが役立ちます。
特に踵を上げた状態でのエクササイズのバリエーションを増やしていくことが重要です。
まとめ
外反母趾の改善には足の指や足首のトレーニングが役立ちます。
母趾の筋肉を鍛えるだけでなく、重心のバランスを整えて、負荷を分散することで親指への負荷を軽減し、外反母趾の改善につながります。
<参考文献>
- Uchiyama E, Kitaoka HB, Luo ZP, Grande JP, Kura H, An KN. Pathomechanics of hallux valgus: biomechanical and immunohistochemical study. Foot Ankle Int. 2005 Sep;26(9):732-8. doi: 10.1177/107110070502600911. PMID: 16174504.
- Oztarsu MB, Oksuz S. Comparison of the effects of progressive supervised and home program exercise therapy in mild-moderate hallux valgus. J Comp Eff Res. 2023 Mar;12(3):e220091. doi: 10.2217/cer-2022-0091. Epub 2023 Jan 18. PMID: 36651612; PMCID: PMC10288957.
- Liu Z, Chen S, Okunuki T, Yabiku H, Hoshiba T, Maemichi T, Li Y, Zhao H, Kumai T. Progression and risk factors of hallux valgus angle in elite adolescent dancers: a cohort study. BMC Musculoskelet Disord. 2024 Nov 30;25(1):983. doi: 10.1186/s12891-024-08005-9. PMID: 39616328; PMCID: PMC11607872.
- Tourillon R, Gojanovic B, Fourchet F. How to Evaluate and Improve Foot Strength in Athletes: An Update. Front Sports Act Living. 2019 Oct 11;1:46. doi: 10.3389/fspor.2019.00046. PMID: 33344969; PMCID: PMC7739583.
- Abdelhaleem, M.D., Abdelhay, M.I., Aly, S.M. et al. Effects of 6 weeks of ankle stability exercises on pain, functional abilities, and flexibility in patients with chronic non-specific low back pain: a randomized controlled trial. Bull Fac Phys Ther 28, 14 (2023).