肘の痛み

野球選手の柔軟性を高めるストレッチとトレーニング

2024年6月10日

 

ピッチャー

野球選手の柔軟性を高めるストレッチ

肩のストレッチ

肩関節屈曲

肩の柔軟性は野球選手に重要なものであり、手を真上に挙げること、つまり肩関節の屈曲の可動域の低下はピッチャーの肘の怪我のリスクが高まることが報告されています

(Camp et al 2017)

肩関節の屈曲の可動域を高めるためには広背筋のストレッチや大胸筋のストレッチなどが役立ちます。

広背筋ストレッチ

 

肩の内旋の可動域

野球選手の肩の柔軟性でよく言われるものが肩の内旋の可動域であり、内旋の可動域の低下は肩の怪我のリスクを高めることが報告されています2。

Camp et al 2017 C

(Camp et al 2017)

肩の内旋の可動域の低下は肩関節の後部の硬さが原因となることが多く、こういった部分をストレッチなどでほぐすことが役立ちます。

肩のストレッチ

ストレッチだけではほぐしきれない部分があるため、フォームローラーやマッサージなども取り入れて肩の後部をほぐすことも大事です。

 

肩の外旋の可動域

肩の外旋の可動域も野球選手に重要な要素です。

肩の外旋の可動域の低下はピッチャーの肩の怪我のリスクを高めることが報告されていますし、肩の外旋の可動域が高いピッチャーは球速が速い傾向にあることも報告されています

(Camp et al 2017)

肩の外旋の柔軟性の低下は肩の前部や胸筋の硬さが原因となることが多いため、こういったところをストレッチでほぐすことが役立ちます。

(Sakata et al 2019)

ピッチャーの肘
ピッチャーの肩の最大外旋位と球速・怪我の関係

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股関節のストレッチ

股関節の柔軟性は野球選手に重要なものであり、股関節が柔らかいことで下半身の力をうまく使い、連動性の高い効率的な動きに近づきます。

股関節の外旋の可動域 股関節の内旋の可動域の測定

特に股関節の内旋・外旋の可動域はピッチング動作との関連性が強く、股関節の内旋・外旋の可動域が高いことで球速も速くなりやすいことが報告されています5・6

また、股関節の外旋の可動域が低いと肘や肩を痛めるリスクが高まることも報告されています

こういったことから股関節の外旋や内旋の柔軟性を高めるようなストレッチに取り組むことが役立ちます。

股関節のストレッチ

股関節ストレッチ

股関節の外旋の可動域を高めるにはお尻部分のストレッチを行うことが効果的であり、股関節の内旋の可動域を高めるには股関節の前部分をストレッチでほぐすことが役立ちます。

 

大腿のストレッチ

ハムストリングスや大腿四頭筋が硬い野球選手は腰痛リスクが高まることが報告されています8・9

こういった筋肉が硬いとスムーズなピッチングやバッティングの動きの妨げになる可能性があるため、ストレッチ等でほぐしておくと良いでしょう。

大腿四頭筋のストレッチハムストリングスのストレッチ

 

足首のストレッチ

意外に思うかもしれませんが、野球選手は足首の柔らかさも重要になってくることがあり、実際に足首の背屈の可動域が低い野球選手は肩や肘の怪我のリスクが高まることが報告されています10

足首が硬いとピッチングやバッティング時の回旋動作の妨げになることがありますし、足首が硬いと適切なフォームでスクワットなどのトレーニングを行うことができません。

こういったことからふくらはぎのストレッチなどに取り組み、足首の柔軟性を高めておくことが役立ちます。

ふくらはぎのストレッチ

 

柔軟性を高めるトレーニング

肩甲骨

野球では肩甲骨の動きが重要であると言われることが多々あり、肩甲骨のトレーニングは柔軟性アップにも役立ちます。

そもそも肩甲骨を思うように動かせないという野球選手も意外と多く、まずは肩甲骨を色々な方向に動かすようなトレーニングを取り入れることが役立ちます。

 

 

野球選手の場合には肩甲骨周りのインナーマッスルが十分に発達していないことが多く、そういった筋肉を鍛えられるようなエクササイズを取り入れることで肩甲骨のスムーズな動きにつながります。

 

まとめ

野球選手の柔軟性はパフォーマンスや怪我予防に重要な要素であり、特にストレッチなどで肩関節の内外旋の可動域や股関節の内外旋の柔軟性を高めることが役立ちます。

 

<参考文献>

  1. Camp CL, Zajac JM, Pearson DB, Sinatro AM, Spiker AM, Werner BC, Altchek DW, Coleman SH, Dines JS. Decreased Shoulder External Rotation and Flexion Are Greater Predictors of Injury Than Internal Rotation Deficits: Analysis of 132 Pitcher-Seasons in Professional Baseball. Arthroscopy. 2017 Sep;33(9):1629-1636. doi: 10.1016/j.arthro.2017.03.025. PMID: 28865566.
  2. Keller RA, De Giacomo AF, Neumann JA, Limpisvasti O, Tibone JE. Glenohumeral Internal Rotation Deficit and Risk of Upper Extremity Injury in Overhead Athletes: A Meta-Analysis and Systematic Review. Sports Health. 2018
  3. Wilk KE, Macrina LC, Fleisig GS, Aune KT, Porterfield RA, Harker P, Evans TJ, Andrews JR. Deficits in Glenohumeral Passive Range of Motion Increase Risk of Shoulder Injury in Professional Baseball Pitchers: A Prospective Study. Am J Sports Med. 2015 Oct;43(10):2379-85. doi: 10.1177/0363546515594380. Epub 2015 Aug 13. PMID: 26272516.
  4. Matsuo T, Escamilla RF, Fleisig GS, Barrentine SW, Andrews JR. Comparison of Kinematic and Temporal Parameters between Different Pitch Velocity Groups. Journal of Applied Biomechanics. 2001;17(1):1-13.

  5. Albiero ML, Kokott W, Dziuk C, Cross JA. Hip Flexibility and Pitching Biomechanics in Adolescent Baseball Pitchers. J Athl Train. 2022 Jul 1;57(7):704-710. doi: 10.4085/1062-6050-0103.21. PMID: 34543423; PMCID: PMC9528701.

  6. Solomito MJ, Garibay EJ, Cohen A, Nissen CW. The Role of the Lead Hip in Collegiate Baseball Pitching: Implications for Ball Velocity and Upper-Extremity Joint Moments. J Appl Biomech. 2024 Aug 22;40(5):399-405. doi: 10.1123/jab.2023-0277. PMID: 39179223.
  7. Hamano N, Shitara H, Tajika T, Ichinose T, Sasaki T, Kamiyama M, Miyamoto R, Kuboi T, Endo F, Yamamoto A, Takagishi K, Chikuda H. Relationship between tightness of the hip joint and shoulder/elbow injury in high school baseball pitchers: a prospective study. Sci Rep. 2020 Nov 17;10(1):19979. doi: 10.1038/s41598-020-76894-6. PMID: 33203930; PMCID: PMC7673013.
  8. Kato K, Otoshi KI, Tominaga R, Kaga T, Igari T, Sato R, Konno SI. Influences of limited flexibility of the lower extremities and occurrence of low back pain in adolescent baseball players: A prospective cohort study. J Orthop Sci. 2022 Mar;27(2):355-359. doi: 10.1016/j.jos.2021.01.008. Epub 2021 Feb 25. PMID: 33640222.
  9. Kato K, Otoshi K, Tominaga R, Kaga T, Igari T, Sato R, Kaneko Y, Konno SI. Age-Related Differences in the Limited Range of Motion of the Lower Extremity and Their Relation to Low Back Pain in Young Baseball Players: A Cross-Sectional Study of 1215 Players. Sports Med Open. 2023 May 3;9(1):26. doi: 10.1186/s40798-023-00572-w. PMID: 37138150; PMCID: PMC10156885.
  10. Shitara H, Tajika T, Kuboi T, Ichinose T, Sasaki T, Hamano N, Endo T, Kamiyama M, Honda A, Miyamoto R, Nakase K, Yamamoto A, Kobayashi T, Takagishi K, Chikuda H. Ankle dorsiflexion deficit in the back leg is a risk factor for shoulder and elbow injuries in young baseball players. Sci Rep. 2021 Mar 9;11(1):5500. doi: 10.1038/s41598-021-85079-8. PMID: 33750882; PMCID: PMC7943763.
  11. Sakata J, Nakamura E, Suzuki T, Suzukawa M, Akeda M, Yamazaki T, Ellenbecker TS, Hirose N. Throwing Injuries in Youth Baseball Players: Can a Prevention Program Help? A Randomized Controlled Trial. Am J Sports Med. 2019 Sep;47(11):2709-2716. doi: 10.1177/0363546519861378. Epub 2019 Jul 23. PMID: 31336051.

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