肩の痛み

バレーボール選手の肩の痛みの原因と改善方法

2024年2月17日

 

バレーボール選手の肩の痛みの種類

バレーボールにおけるスパイクやサーブなど肩が酷使されやすく、様々な肩の怪我が引き起こされます。

腱板損傷:肩の腱板が損傷した状態であり、使いすぎや強い衝撃によって起こることがあります。

インピンジメント症候群:肩を上げた際に骨同士などがぶつかり、炎症や痛みを起こす状態です。

肩関節上方関節唇損傷(SLAP損傷):肩関節の関節唇(軟骨の一部)に損傷が起きるものです。スパイクなどで、上腕二頭筋長頭腱に引っ張られることなどが原因となります。

 

この他にも神経周りの炎症や腱の断裂など、様々な肩の怪我の可能性があります。

しつこい肩の痛みがある場合には医療機関を受診することが大切になります。

 

バレーボール選手の肩の痛みの原因

柔軟性の低下

肩を酷使するスポーツにおいては肩の柔軟性の低下は怪我のリスクであり、特に肩の内旋の可動域の低下に注意が必要です1・2

このような柔軟性の低下はサーブやスパイクといった腕のスイングの動きが悪くなり、肩の負荷につながります。

そして、実際に肩の痛みを抱えているバレーボール選手は肩周りの筋肉が硬い傾向にあることも報告されています

(Reinold et al 2010)

 

肩関節の緩さ

肩の柔軟性を確保することは大事なのですが、肩が柔らかすぎると肩を痛めてしまうリスクがあります。

実際に肩の痛みを抱えているバレーボール選手は肩関節の緩さがあることが報告されています

柔軟性が高くても、肩周りに適度に筋肉がついていないと筋肉のバランスが乱れやすく、肩関節が緩くなってしまう原因になります。

バレーボール選手の肩の緩さ

 

肩甲骨の機能低下

バレーボールの肩の痛みを防ぐためには肩甲骨も重要であり、肩甲骨の機能低下を抱えている選手は肩の怪我のリスクが高まることが報告されています

肩と肩甲骨は密接な関係にあり、肩甲骨が適切に働くことで肩の負荷を分散させることができ、肩の怪我を防ぐことにつながります。

しかし、肩甲骨のポジションにズレが生じていたり、肩甲骨の動きが小さいなど、肩甲骨の働きが弱いと肩の負担が増えてしまいます。

バレーボール

 

筋力不足

肩を痛めているバレーボール選手は肩のインナーマッスルの筋力が弱いことが報告されています4・5

インナーマッスルの筋力が弱いと肩が不安定になり、肩にダメージが蓄積しやすくなります。

また、インナーマッスルの筋力の弱さは肩甲骨の機能低下にもつながります。

ローテーターカフの筋肉

 

過剰な運動量

過剰な運動量は肩を痛める原因となり、特に練習量が急激に増える時期は肩を怪我するリスクが高くなります。

プレースタイルも肩の負担につながる可能性があり、ジャンプサーブを積極的にする選手は肩を怪我しやすいことが報告されています2・3

 

バレーボールジャンプサーブ

 

バレーボール選手の肩の痛みの改善方法

休養

バレーボールでの肩の痛みの改善の基本は十分な休養を取ることです。

肩の痛みを抱えていても、誤魔化しながらプレーを続けることができるかもしませんが、無理してプレーを続けていると痛みが悪化していき、重い怪我につながり長期離脱を余儀なくされてしまいます。

休養期間を最小限に抑えるためには、痛みが軽いうちに早めの休養を取ることが大事になります。

 

アイシング

肩の痛みの改善や予防にアイシングは効果的であるか?という質問を受けることがあります。

アイシングは痛みや炎症が起こった急性期(48~72時間以内)の処置としては、炎症が広がるのを防ぎ、痛みを抑えるのに役立ちます。

しかし、バレーボールにおける肩の痛みの多くは慢性的であることが多く、アイシングはそこまで役に立ちません。

肩のアイシング

また、日々の練習後にアイシングをすることで怪我を防げるのか?という質問もあるかと思いますが、アイシングで怪我を減らせるという強い科学的根拠はありません

練習後に強い炎症がある場合にはアイシングが効果的ではありますが、そもそも強い炎症が起こるようなバレーの練習は負荷が過剰になっているため、そのような練習自体がオススメできません。

 

湿布

湿布は効果があるのか?という質問を受けることがあります。

多くの湿布には非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)などの有効成分が含まれています。これらの成分は痛みの原因となる炎症を抑え、痛みを和らげる作用があります。

湿布は痛みを和らげる対症療法であり、痛みの根本原因を解決するものではありません。

痛みを誤魔化しながらバレーを続けてしまうと痛みが悪化するリスクがあるため注意が必要です。

消炎鎮痛剤を常用していると肩を痛めやすいという研究結果も報告されています

 

テーピング

テーピングを使うことで肩の痛みの軽減に役立ちます。

腕を挙げる動作の役割がある筋肉を支えるようにテーピングをすることが基本になります。

最適なテーピング方法は肩の状態によって変わってくるため、専門家に相談することが大切です。

 

ストレッチ

肩周りのストレッチに取り組んで柔軟性を高めることは痛みの改善に役立ちます。

腕を前でクロスさせるようなストレッチは肩の後方を伸ばすことができ、肩の怪我のリスクとなりやすい肩の内旋の可動域の向上に役立ちます。

肩のストレッチ

また、腕を挙げて脇のあたりを伸ばすようなストレッチは広背筋などをほぐし、腕が上がりやすくなります。

広背筋のストレッチ

ただし、肩の状態が悪いとストレッチ時に痛みや違和感が出やすく、そのような場合にはストレッチを控えることが大切です。

 

マッサージ

ストレッチだけでは伸ばすことが難しい肩の筋肉があるため、必要に応じてマッサージなども取り入れることが役立ちます。

特に肩の後ろ部分が硬くなりやすく、ストレッチが十分に届きにくいためマッサージが役立ちます。

肩の後ろ部分の硬さは肩の内旋の柔軟性の低下、アタックやスパイクなどのスイング動作の悪化につながります。

肩のマッサージ

 

トレーニング

肩のインナーマッスルや肩甲骨周りの筋力低下は怪我のリスクであるため、トレーニングでしっかりと鍛えることが肩の痛みの改善に役立ちます4・5

痛みや違和感のない範囲でエクササイズを行うことが大事であり、まずは負荷が小さい肩甲骨のエクササイズやインナーマッスルのトレーニングから始めていくことがポイントです。

 

菱形筋のエクササイズ

肩インナーマッスルトレーニング

肩の状態が良くなっていくにつれて、負荷の大きいトレーニングを徐々に取り入れていくことも大切になります。

 

まとめ

バレーボールの肩の痛みは柔軟性の低下、肩関節の緩さ、肩甲骨の機能低下、筋力不足、過剰な運動などが原因になります。

肩の痛みの改善には十分な休養、ストレッチ、弱い筋肉のトレーニングなどが役立ちます。

 

<参考文献>

  1. Challoumas D, Stavrou A, Dimitrakakis G. The volleyball athlete's shoulder: biomechanical adaptations and injury associations. Sports Biomech. 2017 Jun;16(2):220-237. doi: 10.1080/14763141.2016.1222629. Epub 2016 Sep 23. PMID: 27659068.
  2. Reeser JC, Joy EA, Porucznik CA, Berg RL, Colliver EB, Willick SE. Risk factors for volleyball-related shoulder pain and dysfunction. PM R. 2010 Jan;2(1):27-36. doi: 10.1016/j.pmrj.2009.11.010. PMID: 20129510.
  3. Challoumas D, Artemiou A, Dimitrakakis G. Dominant vs. non-dominant shoulder morphology in volleyball players and associations with shoulder pain and spike speed. J Sports Sci. 2017 Jan;35(1):65-73. doi: 10.1080/02640414.2016.1155730. Epub 2016 Mar 4. PMID: 26942858.
  4. Fayão JG, Rossi DM, Oliveira AS. Risk and protective factors for shoulder complaints in indoor volleyball players: A comprehensive systematic review. Phys Ther Sport. 2024 Jan;65:145-153. doi: 10.1016/j.ptsp.2023.12.011. Epub 2023 Dec 30. PMID: 38183823.
  5. Forthomme B, Wieczorek V, Frisch A, Crielaard JM, Croisier JL. Shoulder pain among high-level volleyball players and preseason features. Med Sci Sports Exerc. 2013 Oct;45(10):1852-60. doi: 10.1249/MSS.0b013e318296128d. PMID: 23575514.
  6. Horschig A, Sonthana K, Williams B, Horgan M, Starrett K. THE EFFICACY OF ICING FOR INJURIES AND RECOVERY - A CLINICAL COMMENTARY. JCC. 2024;7(1):96-101.
  7. Sailesh V. Tummala, Romir P. Parmar, Alejandro Holle, Joseph C. Brinkman, Jeffrey D. Hassebrock, John M. Tokish. Long-term nonsteroidal anti-inflammatory drug use is associated with rotator cuff tears in adult patients. JSES International, Volume 9, Issue 3, 2025, Pages 666-671, ISSN 2666-6383.
  8. Reinold MM, Gill TJ, Wilk KE, Andrews JR. Current concepts in the evaluation and treatment of the shoulder in overhead throwing athletes, part 2: injury prevention and treatment. Sports Health. 2010 Mar;2(2):101-15. doi: 10.1177/1941738110362518. PMID: 23015928; PMCID: PMC3445082.

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