ランニング後のアイシング
ランニング後の身体のケアやリカバリー方法のひとつがアイシングであり、箱根駅伝で活躍している青山学院大学もアイシングを取り入れているそうです。
青学の選手たちは、競技会場に最後まで残っていることで有名になりました。他のチームが帰っても、クールダウンのストレッチやアイシングを念入りにしているんですよ
とはいえランニング後に毎回アイシングをするのは面倒であり、習慣化することは難しいかと思います。
そもそもランニング後のアイシングが何の役に立つのか?ということがわかっていてないと、無駄な手間を増やすだけになってしまう可能性があります。
アイシングの効果
怪我や痛みの改善
怪我や痛みなどによる炎症はアイシングをすることが効果的であると言われています1。
これはランニングなどによる初期の炎症を抑えることで腫れや痛みが広がるのを防ぐ効果が期待でき、過度な炎症は良い細胞なども破壊されてしまうことがあります。
アイシングによって炎症を止めることで、怪我や痛みの悪化を防ぐことができると考えられています。
筋肉の回復の遅延
怪我や痛みがある場合にはアイシングが効果的ではありますが、炎症がない場合にアイシングをすると逆効果になってしまう恐れがあります。
ランニング後にアイシングをすると筋肉の損傷の回復が遅かったという研究結果が報告されています2・3。
また、アイシングをするとトレーニングから数日後の疲労感も大きかったことが報告されています4。
これはアイシングによって血流を阻害してしまうなど、細胞を修復するための活動が抑制されてしまうことが関係しています。
トレーニング効果の阻害
トレーニング後のアイシングは血流を制限し、筋力強化や持久力向上を阻害する可能性があります5。
6週間の筋トレを行った実験では、トレーニング後に筋肉を冷やしたグループは筋肉量の増加が約6~7割ほど減り、筋持久力の増加は約2~3割ほど減っていたことが報告されています6。
このように運動後のアイシングはトレーニングの効果を阻害してしまうことがあるため注意が必要です。
アイシングの方法について
一般的にランニング後のアイシングの目的は痛みや炎症の対策、疲労回復かと思います。
痛みや炎症がある場合の初期対応にはアイシングが推奨されています。
アイシングは氷や冷却パックをタオルで包み、患部に15分から20分程度当てて冷やします。急性期には、1日に2~3時間おきにアイシング行うと効果的です。
ただし、直接肌に当てると凍傷の恐れがあるため必ずタオルなどで包み、冷たすぎると感じる場合は無理せず中断することが大切です。
一方で練習の疲労回復はアイシングで冷やすよりも水風呂がオススメです。
必ずしもキンキンに冷やし必要はなく、気持ちいいと感じられる温度の水風呂であればアイシングのような冷却による逆効果は起こりにくく、疲労回復も促進されます。
目的や状況に応じてアイシングを使い分けることがより高い効果を生み出すポイントになります。
まとめ
怪我や痛みを抱えている場合にはアイシングが効果的ですが、トレーニング後の疲労回復としてのアイシングは筋肉の修復やトレーニング効果を阻害する場合があります。
適度な炎症は身体を修復するために必要なものであり、状況に応じてアイシングを使うことが大切です。
<参考文献>
- Fredericson M, Weir A. Practical management of iliotibial band friction syndrome in runners. Clin J Sport Med. 2006 May;16(3):261-8. doi: 10.1097/00042752-200605000-00013. PMID: 16778549.
- Kawashima M, Iguchi S, Fujita N, Miki A, Arakawa T. Structural Changes in Skeletal Muscle Fibers after Icing or Heating on Downhill Running in Mice. Kobe J Med Sci. 2021 Sep 30;67(2):E48-E54. PMID: 34795155; PMCID: PMC8622214.
- Kawashima, Masato & Kawanishi, Noriaki & Tominaga, Takaki & Suzuki, Katsuhiko & Miyazaki, Anna & Nagata, Itsuki & Miyoshi, Makoto & Miyakawa, Motoy & Sakuraya, Tohma & Sonomura, Takahiro & Arakawa, Takamitsu. (2021). Icing after eccentric contraction-induced muscle damage perturbs the disappearance of necrotic muscle fibers and phenotypic dynamics of macrophages in mice. Journal of Applied Physiology. 130. 10.1152/japplphysiol.01069.2020.
- Tseng CY, Lee JP, Tsai YS, Lee SD, Kao CL, Liu TC, Lai C, Harris MB, Kuo CH. Topical cooling (icing) delays recovery from eccentric exercise-induced muscle damage. J Strength Cond Res. 2013 May;27(5):1354-61. doi: 10.1519/JSC.0b013e318267a22c. PMID: 22820210.
- Yamane M, Teruya H, Nakano M, Ogai R, Ohnishi N, Kosaka M. Post-exercise leg and forearm flexor muscle cooling in humans attenuates endurance and resistance training effects on muscle performance and on circulatory adaptation. Eur J Appl Physiol. 2006 Mar;96(5):572-80. doi: 10.1007/s00421-005-0095-3. Epub 2005 Dec 22. PMID: 16372177.
- Yamane M, Ohnishi N, Matsumoto T. Does Regular Post-exercise Cold Application Attenuate Trained Muscle Adaptation? Int J Sports Med. 2015 Jul;36(8):647-53. doi: 10.1055/s-0034-1398652. Epub 2015 Mar 11. PMID: 25760154.