ジャンプの着地時の衝撃吸収は怪我との関連性があると考えられていますが、パルクールの着地は一般的なスポーツの着地に比べて衝撃吸収能力に優れているようです。
パルクールにおける障害物を乗り越えてかなりの高さから無事に着地するという、この技術はもしかしたらスポーツでのジャンプの着地時に役に立つのかもしれません。
よっぽど着地の技術が上手くないとパルクールなんてできないという部分もありますし、競技特性の違いから現実的かどうかという点に疑問は残りますが。
ポイント
- 地面に伝わる力の最大値がパルクールの着地においてはスポーツの着地の半分近くになっています
- パルクールと比べると通常のスポーツの着地では急激な力が加わっている傾向にあります
パルクールの着地は何が違うのか?
パルクールの着地とスポーツ選手の着地の違いを研究したものをご紹介していきます1。この研究では次の3つの着地方法を解析しています。
Precision landing
参照https://breakingmuscle.com/fitness/stick-it-how-to-do-precision-jumps-for-distance-and-accuracy
目的地に正確に着地するPrecision landingと呼ばれるテクニックです。両手を後ろに下げながらバランスをとり、つま先から着地をします。
Roll landing
参照https://breakingmuscle.com/fitness/stick-it-how-to-do-precision-jumps-for-distance-and-accuracy
いかにもパルクールらしいカッコいい着地です。転がることで着地の衝撃を全身で和らげられるそうです。
一般のスポーツ選手の着地
(Puddle and Maulder 2013より引用)
着地の仕方の違いによる地面からの力
これら3つの着地を比べた結果は、地面に伝わる力の最大値がパルクールの着地のテクニックにおいてはスポーツジャンプの着地の半分近くになっています。パルクールでは衝撃が小さいことがわかります。
(Puddle and Maulder 2013より引用)
さらに、最大値に至るまでの時間においてパルクールの着地の方が倍近く長い時間がかかっています。
スポーツの着地とパルクールの着地を比べた時に、通常のスポーツの着地でいかに急激な力が加わっているということが読み取ることができます。
(Puddle and Maulder 2013よりTable3〜5を要約)
こういったデータを見るとパルクールの着地の技術はうまく衝撃を吸収できていることがわかるかと思います。
パルクールのような着地を取り入れることで怪我を防げるのか?
パルクールの技術を取り入れることで怪我を減らせるという強い科学的根拠はありませんが、パルクールの着地に近い概念も提唱されていることがあります。
つま先で着地することで前十字靭帯への負荷を軽減できるのではないか?という考えがあります。これはまさにパルクールがつま先着地で一般的なスポーツではかかと着地という対比に重なる部分がありますね。
他にも膝のクッションを使っての衝撃吸収で前十字靭帯への負荷を減らせるんじゃないか?という考え方もあります。パルクールが得意とする高いところからの着地時の衝撃吸収に通ずる部分があるのではないでしょうか。
ジャンパー膝を抱えている選手は柔らかいジャンプの着地動作ができていない、ジャンプの着地動作次第ではジャンパー膝のリスクになるということが言われています。
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まとめ
実際にスポーツでパルクールのように着地するわけにはいきませんが、衝撃をうまく和らげて柔らかい着地をすることで怪我のリスクを減らる可能性はあるかもしれません。
<参考文献>
Puddle DL, Maulder PS. Ground Reaction Forces and Loading Rates Associated with Parkour and Traditional Drop Landing Techniques. J Sports Sci Med. 2013;12(1):122-129.