最近の子供たちは塾や習い事によってカバンやリュックサックに重い荷物を抱えていることが珍しくないようです。
重い荷物を日常的に抱えて通学していると、これが時には腰への負荷へとつながることがあります。
通学用リュックサックと腰痛
複数の研究で通学用リュックサックと腰痛には一定の関係があることが明らかになっています。
海外ではリュックサックを用いることが多いため、通学用カバンではなくリュックサックに関する研究をご紹介していきます。
重さ
重いリュックやカバンは腰の負荷へとつながる可能性があります。
ある研究ではリュックサックの重さが4kg増えるごとに腰痛のリスクが25%あがるということが報告されています2。
他の研究でも腰痛を抱えている人はリュックサックが重い傾向にあったことが報告されています1・3。
このように重すぎるリュックが知らず知らずのうちに腰に負荷をかけてしまっているかもしれません。
時間
長時間リュックサックを背負うことで腰に負荷がかかるかもしれません。
ある研究では通学距離が長くリュックサックを背負っている時間が長いほど腰痛を抱えている傾向にあることが報告されています1。
姿勢
リュックサックを背負うことで姿勢が変化することがありますが、これが腰痛につながるかは微妙なところです。
腰痛を抱えている人はリュックサックを背負った時の姿勢が悪いと感じている傾向にあるようです1。
一方で別の研究では腰が反ったり、背中が丸まったりする姿勢と腰痛の関連性はみられなかったそうです4。
姿勢が悪いから腰痛になるのか、腰が痛いから姿勢が気になってしまうのか、そこには議論が残ります。
カバンの種類
リュックサックを片方の肩にかけるのは何だか身体に良くなさそうな雰囲気があるかもしれません
しかし、リュックの片方掛けやワンショルダーのリュックサックは腰痛の発生率に大きな違いはみられなかったそうです4。
リュックサックによる身体の変化
姿勢の変化
リュックサックを背負うことで姿勢が悪くなったりすることがあります。
リュックサックを背負うことで胸椎の屈曲が増え、リュックサックの重量が重いほどそれが顕著になるようです5・6。
別の研究ではリュックサックを背負うことで骨盤の前傾とともに腰の反りが減少し、重いほどその傾向が強まったことが報告されています6。
リュックサックを背負うことで首が前に移動するという研究結果がありますが7、首の位置に大きな変化は見られなかったとする研究結果もあります5。
このように異なる研究結果もありますが、リュックサックをどのように調整するかによっても姿勢への影響が変わってくるかもしれません。
リュックの背負い方
リュックサックの背負い方次第では身体に及ぼす影響も変わってきます。
リュックサックを高く背負うことで腰が反り気味に、一方でリュックサックを低く背負うことで腰椎に大きな変化はみられないことが報告されています5・10。
リュックサックの片方掛けやワンショルダーのリュックサックは脊柱を左右に曲げる力が働き8、少しばかり腰の痛みも増す傾向にあるようです9。
できるだけ自分にフィットした形を探すことが望ましいと思います。
筋活動
リュックサックを背負うことで体幹部の筋肉の活動に変化がみられるようです。
リュックサックを背負うことで腹直筋や腹斜筋の活動が増加する一方で、脊柱起立筋の活動量は減少する傾向にあることが報告されています5。
別の研究ではリュックサックが重くなると腹直筋の活動が増加する一方で、脊柱起立筋の活動量は少しだけ増加するにとどまることが報告されています11。
腰椎への負荷
興味深いことにリュックサックを背負っても、腰椎への負荷がそこまで増えるとは限らないようです。
ある研究で腰椎への負荷を直接調べたところ、4・5kgや9kgのリュックサックを背負っても腰椎への負荷はほんの少ししか増えないことが報告されています12。
リュックサックを背負うことで重心が後ろに傾き、脊柱起立筋などの活動量が低下し、結果として腰椎への負荷はそこまで変わらないようです。
そもそも楽に荷物を運べるのがリュックサックなので、腰の負担がそんなに増えないというのはある意味では当然の結果なのかもしれません。
リュックサックの推奨事項など
絶対的なものではありませんが、もしかしたら何かの役に立つかもしれないということで参考程度にご紹介したいと思います。
本当に腰痛を防ぎたいのならばもっと別のことに取り組んだ方がいいと思うのですが・・・
重量制限
腰痛を減らすためにリュックサックの重量を一定の範囲内にしたほうがいいのではないか?という考え方があります。
ある研究では体重の10%以下にしたほうがいいと推奨されています13。しかし別の研究では体重の10%以下であっても腰痛の発生率に大きな違いがないことが報告されています2。
別の論文ではリュックサックの重量は体重の5〜20%を推奨しています14。
腰痛のリスクを抑えられるような明確な基準はないようです15。
腰の負荷はリュックサックの重さだけではなく、リュックサックの背負い方、姿勢の変化、体幹の筋活動などによって左右されるため、腰痛を減らせる明確な重量制限というものは難しいようです。
重すぎるものを背負うよりも快適な範囲内の重量にしたほうがいいと思いますが・・・。
リュックサックの掛け方
腰の負荷を減らすためにリュックサックの背負い方にいくつかの工夫をする余地があるようです。
地面が荒くリュックサックが大きく揺れることが想定される場合には、リュックサックのストラップをきつく締めて身体に密着させることで負荷を減らすことができる可能性があります16。
なだらかで綺麗な地面を歩く場合にはリュックの位置を高くすることで腰回りの筋肉の負荷を減らせる可能性があります16。
絶対的なものではありませんし大きな効果が見込めるというものではないですが、何もしないよりはいいのかもしれません。
まとめ
通学用のカバンやリュックサックだけが腰痛の原因ではありませんが、重すぎるものを長時間背負うなど知らず知らずのうちに腰に負荷がかかってしまうこともあるので注意が必要です。
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