陸上競技では速く走るためには足首を固めることが重要だと言われることがありますが、思うように足首を固めることができず、パフォーマンスアップにつながらないことが珍しくありません。
ここで足首を固める仕組み、トレーニング方法などについて解説していきたいと思います。
足首を固めることの重要性
足首を固めた状態だと効率よく地面に力を伝えることができ、より速く、力強く走ることができます。
柔らかくてクッション性のあるシューズだと速く走れないように、接地時に足首を柔らかいクッションのように使ってしまうとエネルギーが逃げてしまいます。
陸上競技では足首を固めて走ることが重要と言われることがあり、地面からの反発力をうまく利用するためのテクニックになります。
足首の固さでよくある誤解
柔軟性
足首を固めた走りというと、足首の柔軟性を思い浮かべるかもしれません。
しかし、足首の可動域、足首の硬さはランニング時の足首の固めることに少し役に立つようですが、要因の一部であり影響は限定的とのことです1。
実際問題、足首のストレッチを行わずに、足首の柔軟性を落とすことで足首を固めた走りができるかというとそうではありません。
どちらかというとトレーニングを重ねることで足首を固くしているというイメージが近いかもしれません。
実際にスプリンターはアキレス腱が硬いことが報告されており2、これはトレーニングによってアキレス腱が強化されたと考えられます。
筋肉量
足首を固めて走るためには、ふくらはぎの筋肉量を増やすことが必要かと思うかもしれません。
確かにスプリンターはふくらはぎの筋肉が発達していますが、ふくらはぎの筋肉量は100mのタイムに関係していないことが報告されています3・4。
ふくらはぎの筋肉は重要なのですが、闇雲に筋肥大させればいいというわけではありません。
身体の使い方
足首を固めた走り方を実現するためには、身体の使い方、筋肉の使い方がポイントになります。
ふくらはぎの筋肉に限らず、足首周りのあらゆる筋肉を同時に収縮させることで、足首を固めることができます5。
そして、ランニングやジャンプの着地時の瞬間的な筋力発揮の強さが走っているときの足首の硬さと関係しているわけです6。
このように足首を固めて走るというのは、単純な筋肉量というよりも筋肉の使い方が重要になってくるわけです。
足首を固めた走り方を実現するトレーニング
プライオメトリクストレーニング
プライオメトリクストレーニングに取り組むことで足首を固めて、バネを使った走りがやりやすくなります7。
ジャンプの着地時に足首を固めるように意識して、接地時間を短くするように瞬間的にジャンプをするような練習です。
こういったプライオメトリクストレーニングには限界もあります。
慣れていないうちはトレーニング効果が大きく、特に関節を固めてバネのように使うコツを習得すると大きな効果が見込めます。
しかし、一定期間トレーニングを続けていると、徐々にパフォーマンスが伸びにくくなってきます。
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長距離ランナーのプライオメトリクストレーニング
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足の指のトレーニング
足の指の力も足首を固めるのに関係していて、足の指を鍛えることもポイントになります。
実際に足の指の筋肉の働きが悪いと、足首の力が弱まることが報告されています8。
これは足の指の筋肉の働きがテコの原理に関係しているためであり9、足首を強くするためには足の指も大事になってくるわけです。
足の指を鍛えるトレーニングとして、足の指でタオルを引っ張るタオルギャザーと呼ばれるエクササイズなどが有名です。
こういったエクササイズに限らず、より幅広いバリエーションを取り入れることが大事なポイントになります。
足首のトレーニング
足首を固めて走るためにはふくらはぎの筋肉だけでなく、足首周りの多くの筋肉が連動して働きます。
このため足首周りの筋肉を満遍なく鍛えることが、足首を固めた反発力を活かした走り方につながります。
例えば、足首をチューブで鍛えるようなトレーニングなどが役立ちますが、ふくらはぎだけでなく、4方向に満遍なく鍛えることが大事になります。
(Abdelhaleem et al 2023)
まとめ
足首を固める走り方は地面からの反発力を活かすことができ、ランニングのパフォーマンスアップにつながります。
足首を固めるには柔軟性や筋力よりも、足首周りの筋肉を同時に収縮させるような筋肉の使い方がポイントになります。
ジャンプなどのプライオメトリクストレーニングに加えて、足の指や足首のトレーニングなども足首を固めるのに役立ちます。
<参考文献>
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- Miyake Y, Suga T, Terada M, Tanaka T, Ueno H, Kusagawa Y, Otsuka M, Nagano A, Isaka T. No Correlation Between Plantar Flexor Muscle Volume and Sprint Performance in Sprinters. Front Sports Act Living. 2021 Sep 21;3:671248. doi: 10.3389/fspor.2021.671248. PMID: 34622204; PMCID: PMC8490797.
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