腰痛

ロードバイクの腰痛の原因と改善方法

2025年1月30日

 

ロードバイク選手は腰痛に悩まされることが多く、痛みが長引いてしまうことも珍しくありません。

ここでロードバイクにおける腰痛の原因、メカニズム、改善方法についてご紹介していきたいと思います。

 

ロードバイクの腰痛の原因

過剰な練習

ロードバイクでの腰痛は慢性的なダメージが蓄積して引き起こされることが多く、特に普段よりも多い練習量や、慣れない高強度の練習は腰に大きな負担をかけます。

趣味で自転車に乗っているサイクリストは1週間に160km以上走ると腰痛のリスクが3.6倍になることが報告されています

一方で競技選手など普段から多くの練習をしていると身体が適応し、徐々に怪我に強い身体になっていきます

ロードバイク練習

練習量を増やすとき、新しい練習を取り入れるときにはやり過ぎないように注意を払うことが大切であり、少しずつ負荷を増やしていったほうが腰痛のリスクが低くなります。

 

体幹の筋力不足

体幹の筋肉が弱いとロードバイクで腰に負荷がかかりやすくなります。

腰痛を抱えたサイクリストは脊柱起立筋の持久力が低いことが報告されていますし、体幹のインナーマッスルも弱い傾向にあります3・4

体幹の筋肉の弱さはロードバイクでの姿勢・ポジションの悪さにもつながります。

サイクリスト筋肉

 

乗車時の姿勢

ロードバイクに乗る時の姿勢は腰痛に大きな関係があり、腰が丸まった状態、上体の前傾姿勢などは腰の負担が大きくなります。

ロードバイク姿勢

実際に腰痛を抱えているサイクリストはロードバイクに乗っているときに腰が丸まったような姿勢になりやすいことが報告されています

これは骨盤の前傾の可動域なども関係していて、骨盤の可動域が限られていると代わりに腰を丸めてしまうことにつながります5・6

エリート選手は骨盤の前傾の可動域が大きいため、腰をニュートラルにしたままポジションを取りやすく、腰に負担がかかりにくくなります

ロードバイク
ロードバイクでの骨盤の前傾のポイントと注意点

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ロードバイクの腰痛とポジション

サドルの高さ

サドルが高すぎる場合、上体の前傾姿勢が大きくなりやすく、腰に負担がかかります。

ロードバイクサドルの高さ

また、サドルが高すぎると骨盤の動きが過剰に大きくなってしまい、腰に負担がかかってしまう可能性もあります

(Leavitt and Vincent 2022)

一方でサドルが低すぎる場合にも骨盤の後傾、腰が丸まってしまう、ハンドルから遠くなってしまうなど腰に負担がかかることがあります。

 

サドルの傾き

サドルの傾きもロードバイクでの腰痛に関係しており、サドルの傾きを調整することで腰痛が減ることが報告されています

サドルが前下がり気味のほうが腰の負担が軽減する傾向にある印象です。

(Salai et al 1999)

厳密にはX線で仙骨の岬角の角度を調べたうえで、サドルの傾きを調整すると腰の負担を減らしやすくなります

一見似たような姿勢であったとしても、目視では確認しにくい仙骨の角度が違っていることが隠れた腰痛の原因だったりすることがあります。

 

サドルの前後位置

サドルの位置を前にすることで、上体が起きやすくなり腰の負担を減らすことができます10

しかし、サドルの位置が前に位置し過ぎると、膝が前に出過ぎて膝に負担がかかりやすくなってしまいます。

(Leticia et al 2023)

 

ハンドルの高さ

ハンドルが低いと上体の前傾姿勢が深くなり空気抵抗を減らすことができますが、腰の負担が大きくなります

ロードバイクサドルの高さ

 

ハンドルの前後位置

ハンドルの位置が遠いことでより深い前傾姿勢を取ることができ、空気抵抗を減らすことなどのメリットがありますが、深い前傾姿勢は腰の負担が大きくなります11

ロードバイクハンドルのリーチ

 

ハンドルの幅

ハンドルバーが狭いことで正面投影面積を小さくし、空気抵抗を減らすことができますが、ハンドルの幅が狭すぎるとハンドルの位置が遠くなりやすく、結果的に上体が深く前傾して腰に負担がかかりやすくなります。

ロードバイクハンドルの幅

 

クランクの長さ

クランクが長いことでペダルを踏む力点から回転軸までの距離が長くなり、てこの原理によって同じ力でペダルを踏んだ場合でも、より大きなトルクを生み出すことができます。

しかし、クランクが長すぎると骨盤の後傾や股関節の屈曲が大きくなり、腰の負担が増える可能性があります13・14

ロードバイククランク

 

専門家のフィッティング

上述したロードバイクのポジションはあくまで個別の要素であり、実際には複合的に要因が重なり合って影響するため、全体的にポジションを最適化する必要があります。

より適切なポジションに調整するためには競技用自転車の専門店などに相談することが大切になります。

 

ロードバイクの腰痛の改善方法

休養

ロードバイクでの腰痛を改善するためには十分な休養を取ることが大切です。

腰痛が解消するためには思っているよりも長い休養期間を必要とすることが多々あり、どのくらい休んだらいいかわからないという選手も多い印象です。

数日休めば大丈夫だろうと思っていても、1か月くらい休養が必要なこともあります。

長期間に渡って慢性的なストレスがかかり続けると休養期間は長くなる傾向にあります。

カレンダー

 

ストレッチ

ストレッチで柔軟性を高めることは腰痛の改善に役立ちます。

特にハムストリングスやお尻の柔軟性を高めることで、腰に負担がかかりにくい姿勢を取りやすくなります。

ハムストリングスのストレッチ

前屈のように両足同時にハムストリングスのストレッチをすると背中が丸まって腰に負担がかかりやすく、片足ずつストレッチで伸ばしたほうが腰に負荷がかかりにくくなります。

股関節ストレッチ

なお、腰回りのストレッチは腰を大きく曲げたり捻ったりするため、腰に負担がかかります。

痛みや違和感を抱えているときには逆効果になることがあるため、腰を直接伸ばすようなストレッチは控えておくことが賢明です。

 

トレーニング

体幹トレーニングで体幹回りの筋肉を鍛えることは腰痛の改善に役立ちます。

痛みを抱えているときにはインナーマッスルなどの負荷の軽いトレーニングに抑えておくことが大事であり、負荷が大きすぎると痛みが悪化してしまうことがあるため注意が必要です。

 

体幹には多くの筋肉があり、インナーマッスルやアウターマッスル、腹斜筋など様々な筋肉をバランスよく鍛えることでより大きな効果を得られます。

 

まとめ

ロードバイクでの腰痛は過剰な負荷での練習、不適切なポジション、姿勢の悪さ、体幹の筋力不足などが原因になります。

腰痛の改善のためにはポジションの修正、十分な休養、ストレッチ、体幹トレーニングなどが役立ちます。

 

<参考文献>

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  3. Streisfeld GM, Bartoszek C, Creran E, Inge B, McShane MD, Johnston T. Relationship Between Body Positioning, Muscle Activity, and Spinal Kinematics in Cyclists With and Without Low Back Pain: A Systematic Review. Sports Health. 2017 Jan/Feb;9(1):75-79. doi: 10.1177/1941738116676260. Epub 2016 Oct 27. PMID: 27784817; PMCID: PMC5315261.
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  9. Salai M, Brosh T, Blankstein A, Oran A, Chechik A. Effect of changing the saddle angle on the incidence of low back pain in recreational bicyclists. Br J Sports Med. 1999 Dec;33(6):398-400. doi: 10.1136/bjsm.33.6.398. PMID: 10597848; PMCID: PMC1756210.
  10. Letícia Ferreira Soares, Lucas Otávio Pozzolini Ribeiro, Marco Túlio Tavares Seixas, Viviane Gontijo Augusto, Cecilia Ferreira de Aquino, Andrei Pereira Pernambuco, Virgínia Vitalina de Araújo e Fernandes Lima. DOLOR LUMBAR Y CAMBIOS EN LA POSICIÓN DE LAS ARTICULACIONES EN CICLISTAS: UN ESTUDIO TRANSVERSAL. Rev Bras Med Esporte – 2023; Vol. 29.
  11. Antequera-Vique JA, Oliva-Lozano JM, Muyor JM. Effects of cycling on the morphology and spinal posture in professional and recreational cyclists: a systematic review. Sports Biomech. 2023 Apr;22(4):567-596. doi: 10.1080/14763141.2022.2058990. Epub 2022 Apr 19. PMID: 35440291.
  12. Schulz SJ, Gordon SJ. Riding position and lumbar spine angle in recreational cyclists: A pilot study. Int J Exerc Sci. 2010 Oct 15;3(4):174-181. doi: 10.70252/UPIH4143. PMID: 27182345; PMCID: PMC4738870.
  13. Brand A, Sepp T, Klöpfer-Krämer I, Müßig JA, Kröger I, Wackerle H, Augat P. Upper Body Posture and Muscle Activation in Recreational Cyclists: Immediate Effects of Variable Cycling Setups. Res Q Exerc Sport. 2020 Jun;91(2):298-308. doi: 10.1080/02701367.2019.1665620. Epub 2019 Nov 13. PMID: 31718522.
  14. Ferrer-Roca V, Rivero-Palomo V, Ogueta-Alday A, Rodríguez-Marroyo JA, García-López J. Acute effects of small changes in crank length on gross efficiency and pedalling technique during submaximal cycling. J Sports Sci. 2017 Jul;35(14):1328-1335. doi: 10.1080/02640414.2016.1215490. Epub 2016 Aug 3. PMID: 27484153.

 

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