肩の痛み

テニスサーブの肩の痛みの原因と改善方法

2024年1月30日

テニスサーブで腕をあげる時、あるいは強くボールをインパクトする瞬間などに肩の痛みを感じる人も少なくありません。

ここでテニスサーブ時の肩の痛みの原因や対策などについてご紹介していきたいと思います。

 

テニスサーブの肩の痛みの原因

テニスサーブの球速

サーブの種類によるという点では、フラットサーブ、キックサーブ、スライスサーブのそれぞれの動き自体には肩の痛みにつながるような負荷などに大きな違いは見られないことが報告されています

しかし、テニスサーブで最も肩に負荷がかかるのはスピードが大きいサーブであると言われています

スピードが大きければ大きいほど肩の負担は増し、サービスエース狙いで全力のサーブを連発しすぎると肩の痛みが出やすくなる可能性があります。

テニスサーブ

テニスサーブのスピードが速いほど肩に負担がかかるとはいえ、全身の力を効率的に力を伝えることで肩の負担を減らせる可能性はあります。

実際に肩を痛めているテニス選手は下半身で生み出したパワーをうまくボールにが伝えることができないという研究結果も報告されています

いわゆる腕の力だけでテニスサーブを打ってしまうと、肩に大きな負担がかかりやすくなってしまいます。

 

柔軟性の低下

肩の柔軟性が不足しているとテニスサーブのフォームが乱れやすく、肩の痛みにつながりやすくなります。

テニスサーブでは肩の柔軟性だけではなく股関節の柔軟性も重要であり、股関節がうまく使えないと全身の連動性が損なわれ、肩に力が入ったようなサーブになってしまいます。

テニスサーブ

 

筋力不足

肩周りのインナーマッスの筋力不足や肩甲骨周りの筋力が弱いと、肩の動きが乱れやすく、肩の痛みにつながる可能性があります。

実際に肩を痛めたテニス選手のサーブは肩関節の動きが悪く、肩甲骨に代償動作がみられたことが報告されています

また、肩甲骨の中でも僧帽筋下部の筋肉が弱い状態でサーブを打つと肩に負担がかかりやすく、肩の痛みにつながる可能性が報告されています

テニスのサーブ

 

肩を痛めやすいサーブのフォーム

トス

トスをまっすぐに頭上に上げてしまうと肩関節の可動域が十分でない選手には肩への負担が大きくなる可能性があります。

トスを少しだけ外側に出すことで、肩関節の可動域がそこまで求められず、肩を楽にできる可能性があります。

(Kovacs et al 2011)

 

テイクバック

テニスラケットを大きく振りかぶり、身体から大きく離れるほど肩に負担がかかりやすくなります。

コンパクトに小さな円を描くようなテイクバックにすることで肩の負担が少なくなります。

(Kovacs et al 2011)

 

加速

腕の振りの速度がそのままテニスサーブの球速につながる部分です。

腕の力に頼るのではなく、脚の力を上手に腕やラケットに伝えることがポイントです。

(Kovacs et al 2011)

ラケットを振る前にしゃがみ込むような動作があると下半身の力を使いやすくなりますが、正確なサーブが難しくなるので練習しておくことが大事かと思います。

(Kovacs et al 2011)

 

インパクト

肩がスムーズに動きやすい範囲でスイングをするが大切で、肩の可動域が少ない選手が無理に高い位置でサーブを打とうとすると肩の痛みにつながりやすくなります。

肩の可動域が不足している選手は、身体を側屈させることでサーブの到達点が高くすることができます。これによって肩関節に求められる負荷を減らせる可能性があります。

(Kovacs et al 2011)

 

テニスサーブの肩の痛みの改善方法

ストレッチ

テニスサーブをするためには腕が180度の垂直になるまでまっすぐあげられるかどうかがポイントになり、これができなければテニスサーブという動作自体がそもそも難しいということになるわけです。

例えば次のようなストレッチを行い、腕を真っ直ぐ垂直にあげられるような可動域を確保することが大切です。

肩のストレッチ

また、次のようなクロスストレッチなども肩の柔軟性の向上に役立ちます。

肩のストレッチ

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肩甲骨のトレーニング

肩甲骨の機能改善は肩の痛みを改善する効果があり、特に弱くなりやすい僧帽筋下部などの筋肉を鍛えることがテニスの肩の痛みを減らすのに役に立ちます。

肩甲骨エクササイズ

他にも肩のローテーターカフのトレーニングなどもテニスサーブの肩の痛みを減らすためには大切で、細かい筋肉も含めてバランス良く鍛えることがポイントになります。

 

まとめ

テニスサーブ時の肩の負担を減らすためにはテニスサーブの動きのクセを解消することが役立ちます。

そのためにも肩関節の十分な可動域を確保し、肩甲骨周りの筋肉を鍛え、下半身の力をうまく使ってサーブを打つことが大切です。

 

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