ランニング

ランナーのピッチを改善するトレーニング

2025年1月22日

 

ランニングのピッチ(ケイデンス)とは?

ランニングにおけるピッチ(ケイデンス)とは、1分間あたりの足の歩幅や回転数のことです。

ランニングではスピード = ピッチ(歩数) X ストライド(歩幅)という式が成り立つと言われており、ランニングの速さを上げるにはこのピッチとストライドという2つの要素のどちらかを大きくすることに集約されると言っても過言ではありません。

一般的にマラソンなどでは1分間に180歩のピッチがひとつの目安であると言われています。

ピッチ型のランナーとストライド型のランナーがいるため、最適なピッチ数は個人差があります。

ランニング

 

ランナーのピッチの重要性

パフォーマンス

一般的に走るスピードが速いほど足の回転が速くなり、距離が短い競技ほどランニングのピッチが高くなる傾向にあります。

1500m走のエリート選手はピッチが1分間に約203歩であり、5000m走のエリート選手はピッチが1分間に約190歩であることが報告されています1・2

1500m走でも5000m走でもピッチが低い選手ほどタイムが遅い傾向にあり、特にレース後半などに疲労でランニングのピッチが落ちると、ランニングのタイムに悪影響を及ぼします

陸上トラックレース

(Depositphotos)

マラソンではエリート選手でもピッチが180前後であることも多いと言われており、どちらかというと一定のピッチを維持する持久力がポイントになります。

 

シューズを履きこなす能力

ランニングのピッチは厚底カーボンシューズの性能を引き出せるかに関わってくることがあります。

マラソンの最速シューズのひとつであるMETASPEED SKYは股関節の屈曲のパワーが求められることが報告されており、疲れると脚を前に引き付ける力やピッチが落ちやすい傾向にあります。

(Xu et al 2025)

一般的にフラット形状の厚底カーボンシューズではピッチが強いランナーのほうがシューズを引き出せる可能性があり、

ピッチが後半に落ち込みやすいランナーはカーブした形状の厚底カーボンシューズが適していると言われています。

いずれにしても、ランニングのピッチが弱いと最速モデルのシューズをうまく履きこなせなくなる場合があるわけです。

 

怪我予防

ランニングのピッチを高めることは怪我予防にも役立つ可能性があります。

ピッチを高めることでランニング時の上下動が減り、着地衝撃を減らすことができることが報告されています

とはいえピッチを高めることでランニングの怪我の発生率が大幅に減ったという報告は少ないため、ランニングの負荷を劇的に減らせるわけではありません。

 

ランナーのピッチを高めるトレーニング

腸腰筋のトレーニング

腸腰筋

腸腰筋は脚を前に引き付ける働きがあり、腸腰筋をトレーニング鍛えることで足をスムーズに前に振り出す力がつき、ピッチの改善につながります

 

まず、身体を起こすのと同時に脚を引き上げるVシットアップと呼ばれるエクササイズが腸腰筋に効かせることができます。

余裕が出てきたら足に重さのあるメディシンボールなどを挟むと負荷をあげることができます。

Vシットアップ

他にも、脚を引き上げるようなエクササイズも腸腰筋を鍛えるのに役立ちます。

腸腰筋エクササイズ

必要に応じて、足部にチューブや重りをつけてトレーニングを行うことで、より腸腰筋に効かせることができます。

 

とはいえ腸腰筋のトレーニングは筋力を高めるのに効果的ですが、レース後半のピッチを維持する持久力を鍛えるのには限界があります。

 

リズム走

ランニングのピッチを高めるトレーニングとして、ランニングウォッチにピッチを表示させて、リアルタイムでピッチを確認しながらランニングを行う方法があります。

ランニングウォッチを観ながらピッチを一定の値に保つように心がけて走り、ピッチが落ちてきたら意識的にピッチをキープするように走ることが役立ちます。

 

また、ランニングのピッチを高めるトレーニングとして、メトロノームアプリなどの一定のリズムに合わせてランニングをするという方法があります。

意識的にピッチを上げることで腸腰筋などの筋肉を鍛えることができます。

とはいえ、ずっと単調な音を聞き続けるというのはキツイと感じる人も少なくないかと思います。

ランニング音楽

オススメなのが、速いテンポの音楽を使ってランニングのピッチを上げるという方法です。

実際に速いビートの音楽を聴きながらランニングするとケイデンスが少し上がることが報告されています

もちろん、どんな曲を聴くかによってランニングのピッチが違ってくる可能性がありますが、目標とするケイデンスよりも速いビートの音楽がランニングのピッチを高める効果が出やすいと言われています

ちなみに音楽を聴きながら外を走るのは事故につながることがあるため、骨伝導タイプのイヤフォンなど外の音も入ってくる状態で走ることが大切です。

 

坂道ランニング

上り坂では脚を大きく引き上げる必要があり、腸腰筋に負荷がかかるためトレーニング効果が期待できます

ピッチを上げながら上り坂を走ることで腸腰筋をより効かせることができますが、それなりにキツイトレーニングになります。

上り坂ダッシュ
坂道ダッシュの効果と怪我のリスク

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バイクトレーニング

走り込みのトレーニングに限らず、バイクを利用することでピッチの改善に役立ちます。

実際にバイクを速いケイデンスで漕いだ後は、ランニングのピッチが高まることが報告されています10

ステーショナリーバイク

バイクトレーニングではピッチ(ケイデンス)が表示され、目標とする数値をキープする意識が働きやすいのも利点です。

ロードバイクサイクリング
ランナーに効果的なクロストレーニングとは?

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まとめ

ランニングのピッチはパフォーマンスに影響を与え、レースの距離が短いほどピッチが高くなる傾向にあり、レース後半の失速はピッチの低下が関係していることがあります。

ピッチを高めるトレーニングとして、腸腰筋のエクササイズ、リズム走、坂道ランニング、バイクトレーニングなどが役立ちます。

 

<参考文献>

  1. Enomoto Yasushi, The pace pattern of the men’s 1500 m race with different levels. Journal of Physical Education & Sport/pp.2549-2556, 2022-10.
  2. Ueno H, Nakazawa S, Takeuchi Y, Sugita M. Relationship between Step Characteristics and Race Performance during 5000-m Race. Sports (Basel). 2021 Sep 17;9(9):131. doi: 10.3390/sports9090131. PMID: 34564336; PMCID: PMC8473258.
  3. Xu Y, Zhu C, Fang Y, Lu Z, Song Y, Hu C, Sun D, Gu Y. The effects of different carbon-fiber plate shapes in shoes on lower limb biomechanics following running-induced fatigue. Front Bioeng Biotechnol. 2025 Feb 11;13:1539976. doi: 10.3389/fbioe.2025.1539976. PMID: 40008032; PMCID: PMC11850346.
  4. Musgjerd T, Anason J, Rutherford D, Kernozek TW. Effect of Increasing Running Cadence on Peak Impact Force in an Outdoor Environment. Int J Sports Phys Ther. 2021 Aug 1;16(4):1076-1083. doi: 10.26603/001c.25166. PMID: 34386286; PMCID: PMC8329321.
  5. Anderson LM, Martin JF, Barton CJ, Bonanno DR. What is the Effect of Changing Running Step Rate on Injury, Performance and Biomechanics? A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Med Open. 2022 Sep 4;8(1):112. doi: 10.1186/s40798-022-00504-0. PMID: 36057913; PMCID: PMC9441414.
  6. Yamanaka R, Wakasawa S, Yamashiro K, Kodama N, Sato D. Effect of Resistance Training of Psoas Major in Combination With Regular Running Training on Performance in Long-Distance Runners. Int J Sports Physiol Perform. 2021 Jun 1;16(6):906-909. doi: 10.1123/ijspp.2020-0206. Epub 2021 Mar 5. PMID: 33668016.
  7. Meinerz C, Fritz J, Cross JA, Dziuk C, Kipp K, Vetter C. Running to the beat: Does listening to music affect running cadence and lower extremity biomechanics? Gait Posture. 2023 Jun;103:62-66. doi: 10.1016/j.gaitpost.2023.04.010. Epub 2023 Apr 13. PMID: 37116303.
  8. Brake MT, Stolwijk N, Staal B, Van Hooren B. Using beat frequency in music to adjust running cadence in recreational runners: A randomized multiple baseline design. Eur J Sport Sci. 2023 Mar;23(3):345-354. doi: 10.1080/17461391.2022.2042398. Epub 2022 Mar 29. PMID: 35176971.
  9. Yokozawa T, Fujii N, Ae M. Muscle activities of the lower limb during level and uphill running. J Biomech. 2007;40(15):3467-75. doi: 10.1016/j.jbiomech.2007.05.028. Epub 2007 Jul 30. PMID: 17662990.
  10. Gottschall JS, Palmer BM. The acute effects of prior cycling cadence on running performance and kinematics. Med Sci Sports Exerc. 2002 Sep;34(9):1518-22. doi: 10.1097/00005768-200209000-00019. PMID: 12218748.

 

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