膝の怪我のメカニズム

リハビリにおける内側広筋(VMO)神話について

膝の怪我やリハビリなどにおいて大腿四頭筋の内側に注目が集まることが多く、この筋肉を鍛えることがよく行われています。確かにこの筋肉は膝の安定性に貢献し、怪我予防するうえでとても重要な筋肉であると思います。

しかし、この筋肉だけが全てではなく、他の筋肉にも膝を安定させる可能性があり、他の筋肉も同様に機能低下していないかを考えていくことが重要だと思います。

 

ポイント

  • 大腿四頭筋の内側の筋肉は怪我に密接に関わっているようです
  • 他の筋肉も怪我と関わっており、全ての筋肉にはそれぞれの役割があります
  • 特定の筋肉だけを鍛えて思うような結果が得られるとは限りません

 

内側広筋斜頭の役割

大腿四頭筋の内側にある筋肉、特にVMOと呼ばれる部分が膝の機能と密接に関わっており、リハビリなどで重要視されています。

VMO内側広筋斜頭

  • 献体によってその機能を調べたところ、内側広筋斜頭の機能が低下することで膝の皿の位置が外側に移動し、膝の外側の負荷を高める可能性があるようです1。
  • 膝が不安定な状況でより活動量が高まるため、この筋肉には膝の安定性に貢献する可能性があるのではないかと考えられます。大腿四頭筋の外側の筋肉は膝の曲げ伸ばしにより適した形状をしていて、反対に内側広筋斜頭の形状は膝を安定させるために有利な形になっているようです

こういったことから内側広筋斜頭は膝の安定性において重要な役割を担っている筋肉ではないか?と考えられます。

 

内側広筋斜頭と怪我の関係について

怪我のメカニズムやリハビリにおいて内側広筋斜頭はとても重要な筋肉であると考えられています。いくつかの例をみていきましょう。

 

前十字靭帯損傷後のリハビリ

前十字靭帯損傷後のリハビリにおいて内側広筋斜頭を鍛えることはとても重要です。

特にリハビリの初期においては内側広筋斜頭を鍛えることに重点が置かれています。というのも前十字靭帯損傷をするとこのの筋肉が衰える可能性があるためです

膝の安定性を確保することは膝の負荷を軽減させることや、怪我予防につながる可能性があります。

 

膝蓋骨の脱臼

内側広筋斜頭の機能低下は膝の皿の脱臼につながる可能性があります5〜7

というのも、膝の皿は外側に脱臼することが多く、膝の内側の筋肉がこれを防ぐと考えられているためです。

膝蓋骨の脱臼

 

膝の痛み

膝の痛み

膝の痛みを抱えていた人はそうでない人に比べて内側広筋斜頭が弱っていたという報告があります8・9

しかしながら、これが怪我の原因となったとのかといった因果関係までは明らかになっていないようです。

 

全ての筋肉には役割がある

全ての筋肉にはそれぞれ役割があり、特定の筋肉だけを鍛えるだけで思うような効果を得られるとは限りません。

  • 怪我をした時に筋力低下するのは内側広筋斜頭だけではありません。他の筋肉も同様に弱っていく可能性があります4・10
  • 筋肉の活動タイミングの遅れが身体の負荷につながるのは内側広筋斜頭だけではありません。他の筋肉の筋肉も活動タイミングの遅れが怪我につながる可能性があります。
  • 膝を安定させる機能を持っている筋肉は内側広筋斜頭だけではありません。程度の差はあれ他の筋肉も膝を安定させる機能を持っています11

確かに内側広筋斜頭の機能低下が目立つことが多いもしれませんし、ここを改善していくことはとても重要です。しかし、他の筋肉が弱くなるということも起こりえることで、他の筋肉が重要になってくることがあるかと思います。

関連記事
外側広筋
外側広筋は身体に良くない筋肉なのか?

続きを見る

 

まとめ

特定の筋肉だけにアプローチするのではなく、周辺の筋肉も同様に機能低下していないかを考えていくことが重要だと思います。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Goh JC, Lee PY, Bose K. A cadaver study of the function of the oblique part of vastus medialis. J Bone Joint Surg Br. 1995;77(2):225-231.
  2. Toumi H, Poumarat G, Benjamin M, et al. New insights into the function of the vastus medialis with clinical implications. Med Sci Sports Exerc. 2007;39(7):1153-1159.
  3. Chaves SF, Marques NP, E Silva RL, et al. Neuromuscular efficiency of the vastus medialis obliquus and postural balance in professional soccer athletes after anterior cruciate ligament reconstruction. Muscles, Ligaments & Tendons Journal (MLTJ). 2012;2(2):121-126.
  4. Li W, Li Z, Qie S, et al. Biomechanical Evaluation of Preoperative Rehabilitation in Patients of Anterior Cruciate Ligament Injury. Orthopaedic Surgery. 2020;12(2):421.
  5. Van Tiggelen D, Cowan S, Coorevits P, Duvigneaud N, Witvrouw E. Delayed Vastus Medialis Obliquus to Vastus Lateralis Onset Timing Contributes to the Development of Patellofemoral Pain in Previously Healthy Men: A Prospective Study. Am J Sports Med. 2009;37(6):1099-1105.
  6. Sakai N, Luo ZP, Rand JA, An KN. The influence of weakness in the vastus medialis oblique muscle on the patellofemoral joint: an in vitro biomechanical study. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2000;15(5):335-339.
  7. Un Y-F, Lin J-J, Jan M-H, Wei T-C, Shin H-Y, Cheng C-K. Role of the Vastus Medialis Obliquus in Repositioning the Patella: A Dynamic Computed Tomography Study. Am J Sports Med. 2008;36(4):741-746.
  8. Botanlioglu H, Kantarci F, Kaynak G, et al. Shear wave elastography properties of vastus lateralis and vastus medialis obliquus muscles in normal subjects and female patients with patellofemoral pain syndrome. SKELETAL RADIOLOGY. 2013;42(5):659-666.
  9. Pattyn E, Verdonk P, Steyaert A, et al. Vastus Medialis Obliquus Atrophy: Does It Exist in Patellofemoral Pain Syndrome? Am J Sports Med. 2011;39(7):1450-1455.
  10. Giles LS, Webster KE, McClelland JA, Cook J. Atrophy of the Quadriceps Is Not Isolated to the Vastus Medialis Oblique in Individuals With Patellofemoral Pain. J Orthop Sports Phys Ther. 2015;45(8):613-619.
  11. Tae-Lim Yoon, Ki-Song Kim, Heon-Seock Cynn. Comparison of the knee valgus angle, leg muscle activity, and vastus medialis oblique/vastus lateralis ratio during a single leg squat on flat and declined surfaces in individuals with patellofemoral pain syndrome. Isokinetics & Exercise Science. 2016;24(4):341-347.

-膝の怪我のメカニズム

© 2021 Hero's Body