ハンドボール選手の肩の痛み
ハンドボール選手の肩の痛みは接触プレーや日々のダメージの蓄積などによって引き起こされ、投球時の痛みや肩を動かしただけで痛みが生じることがあります。
ハンドボールの肩の怪我には様々な種類があり、腱板損傷、肩関節唇損傷、肩のインピンジメントなど色々な可能性が考えられます。
重大な肩の怪我の疑いがある場合には整形外科で診断を受けることが大切です。
ハンドボール選手の肩の痛みの原因
柔軟性の低下
肩の柔軟性を確保することは大事なことであり、ハンドボール選手の肩の内外旋の可動域の低下は怪我のリスクを高めることが報告されています1ー3。
柔軟性が低下すると投球フォームに変なクセがつきやすかったり、効率的な動きができずに肩の負担が増えてしまうことがあります。
肩の柔軟性だけでなく股関節の内外旋の可動域も投球動作に影響しやすく、股関節の動きが硬いと下半身で生み出したパワーがスムーズに肩に伝わらずに効率の悪い動きになってしまいます。
肩甲骨の機能不全
ハンドボールにおける投球動作では肩甲骨の働きが重要であり、肩甲骨の機能不全は肩の痛みにつながりやすいことが報告されています1・4。
肩甲骨の働きは投球のクセなどにも関係しており、肩の痛みを抱えている選手は投球時の肩甲骨周りの筋肉の活動量が低いことが報告されています5。
また、肩のインナーマッスルも肩甲骨の働きに関係しており、特にローテーターカフの筋力不足はハンドボール選手の肩の痛みのリスクを高めることが報告されています1・2・4。
さらに体幹の筋力不足などがあると肩甲骨の機能が落ちやすいとも言われていて、幅広いところから影響を受けている可能性があります。
過剰な運動量
慢性的なダメージの蓄積は肩の痛みと関係していて、特に普段に比べて急激に運動量を増やすと肩を痛めるリスクが著しく高くなります6。
身体が負荷に適応しきれていない状態でのプレーをすると痛みを起こしやすいため、徐々に負荷を上げていくことや十分な休養を取ることが大切です。
特に成長期のハンドボール選手は身体の変化が大きく、筋肉や骨が十分に適応する前にプレーの強度が上がりやすく、肩を痛めるリスクが高いと言われています7。
ハンドボール選手の肩の痛みの改善方法
柔軟性の向上
ストレッチなどで肩の柔軟性を高めることはハンドボールでの肩の痛みを改善するのに役立ちます。
怪我を防ぐだけでなくパフォーマンス向上にも役立つので、日々のケアをしっかりと行うことが大切です。
ハンドボール選手の肩の柔軟性を上げるストレッチとトレーニング
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肩甲骨のトレーニング
ハンドボール選手は肩の柔軟性を高めるだけでなく、肩周りの筋肉をしっかりと鍛えておくことが肩の痛みを防ぐために大切です。
肩を痛めたハンドボール選手は細かい筋力が低下している傾向にあり、肩のローテーターカフや菱形筋など肩甲骨周りのトレーニングに取り組むことがポイントになります。
運動量の調整
肩のダメージは想像以上に残りやすく、思っているよりも回復に時間がかかることに注意が必要です。
休むことが大切であると頭でわかっていても、見積もりが甘く休養が不足してしまうことは珍しくありません。
ストレッチやトレーニングだけで思うような効果を得られないことも珍しくないため、運動量が多くなり過ぎないように注意を払うことを忘れてはいけません。
まとめ
ハンドボール選手の肩みは日々のダメージが蓄積されて引き起こされ、肩の柔軟性不足や肩甲骨の機能不全などによってリスクが高まります。
ストレッチなどの肩のケア、肩甲骨周りのトレーニングなどに取り組むことが肩の痛みの改善に役立ちます。
<参考文献>
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