運動後のクールダウンは疲労回復を促進し、身体に良いというイメージがあります。
しかし、クールダウンは万能な効果を発揮するものではなく、闇雲にクールダウンを行っても思うような効果を得られないことがあります。
ここで運動後のクールダウンとしての軽い運動について、科学的根拠を交えて解説していきたいと思います。
クールダウンの効果
肉体的疲労
運動後にクールダウンを行うことで肉体的疲労の回復に役立ち、クールダウンで軽く身体を動かすことで血液の循環を促す効果があります1。
しかし、クールダウンのエクササイズに筋肉痛を軽減する効果や筋損傷の回復を早める効果はありません1。
また、クールダウンとして軽いジョグやエクササイズを行うことでを怪我を減らせるといったイメージがあるかもしれませんが、実際には怪我を予防する効果はないことが報告されています1。
一方で翌日のパフォーマンスが良くなることがあるかもしれませんが、再現度は微妙なところです1。
クールダウンのエクササイズによって筋肉がリラックスしやすくなりますが、それによって筋力が回復するとは限りません2。
精神的疲労
クールダウンでは精神的疲労もひとつのポイントになります。
ただストレッチするよりもヨガでクールダウンしたほうが運動後のリカバリーが促進されることが報告されています3。
これはヨガに限ったものではなく、気持ちを空っぽにしたり、深呼吸などでも代用することができるかと思います。
というのもクールダウン時に肉体だけでなく呼吸や精神を整えながらリラックスさせることで、運動後のリカバリーを高めることができ、主観的疲労などが良くなります4。
精神的疲労は気のせいじゃないか、気持ちの持ち方次第じゃないか、という意見もあるかもしれません。
私自身が過去にそのように考えていて、精神的疲労を軽視していました。
しかし、精神的疲労は単なる気持ちの問題ではなく、脳神経の疲労に大いに関係しています。
実際にクールダウンを行うことで脳波が改善され、リラックスした脳波になることが報告されているわけです5。
脳疲労が蓄積されるとオーバートレーニングを引き起こす可能性があり、肉体的疲労だけでなく精神的疲労や脳疲労なども大事な要素になります。
このため精神的疲労と侮らずに、心身がボロボロになる前にケアしておくことが大切になります。
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クールダウンの方法
ジョグ
運動後のクールダウンとしてジョグを行う場合には、リラックスして気持ちよく身体を動かすことがポイントになります。
心地よい動きをすることで筋肉の緊張が解けやすくなり、筋肉が柔らかくなります。
また、心地よい動きは運動による興奮を鎮め、精神的にもリラックスしやすくなります。

ジョグのスピードはゆっくりとリラックスできる速度で行うことが大切で、気合いを入れてクールダウンを行う必要はありません。
練習内容やその日の体調によって最適なペースが違ってくることがあり、ジョグがきつい場合にはウォーキングなどでも問題ありません。
クールダウンの距離が長くなり過ぎてしまうとクールダウンが逆にストレスになってしまう人もいるかと思います。
クールダウンは嫌な感じがしない内容にして、あくまでリラックスした気分を保てる範囲で行うことが大切になります。
ストレッチ
運動後のストレッチもクールダウンの定番であり、ストレッチを行うことで柔軟性の改善やリカバリーの促進が期待できます。

クールダウンのストレッチ時にはリラックスしながら行うことがポイントであり、精神を整えて脳疲労を防ぐのに役立ちます。
また、ストレッチ時に深呼吸をすることで呼吸や精神を整えやすくなります。
一方でクールダウンのストレッチには筋肉痛を軽減する効果がないことが報告されています6。
筋肉痛を軽減することが目的ならばストレッチではなく、運動後にマッサージなどで筋肉をほぐしたほうが効果があります7。
まとめ
運動後のクールダウンとして軽い運動を取り入れることは血流の促進や主観的疲労を回復する効果があります。
一方でクールダウンのエクササイズには筋肉痛の軽減や怪我予防といった効果はあまり期待できません。
<参考文献>
- Van Hooren B, Peake JM. Do We Need a Cool-Down After Exercise? A Narrative Review of the Psychophysiological Effects and the Effects on Performance, Injuries and the Long-Term Adaptive Response. Sports Med. 2018 Jul;48(7):1575-1595. doi: 10.1007/s40279-018-0916-2. PMID: 29663142; PMCID: PMC5999142.
- Olsen O, Sjøhaug M, van Beekvelt M, Mork PJ. The effect of warm-up and cool-down exercise on delayed onset muscle soreness in the quadriceps muscle: a randomized controlled trial. J Hum Kinet. 2012 Dec;35:59-68. doi: 10.2478/v10078-012-0079-4. Epub 2012 Dec 30. PMID: 23486850; PMCID: PMC3588693.
- Petviset H, Pakulanon S, Rusmeeroj S, Rukdang B. Yoga vs. Static Stretching: Recovery Impact on Male Athletes' Post-HIIT Heart Rate, Respiratory Rate, Blood Pressure, and Heart Rate Variability Analysis. Int J Exerc Sci. 2025 Jan 1;18(6):79-91. doi: 10.70252/SPMN2268. PMID: 39917587; PMCID: PMC11798559.
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