サウナとパフォーマンスについて
暑い時期のパフォーマンス
サウナの熱によって暑熱順化を促し、高温環境でのランニングパフォーマンスが改善します。
暑熱順化には血中のヘモグロビンや血漿を増加させる効果があり、心臓の機能が強化され1回あたりの拍出量が増え、乳酸性閾値や最大酸素摂取量(VO2Max)が高まります。
寒い時期のパフォーマンス
サウナによって血中成分が改善されて心肺機能が強化されるのであれば、通常の気温や寒い時期にもサウナが持久力アップに役立つと思うかもしれません。
イギリスのバーギンガム大学の研究では3週間ほどランニング後にサウナ(80~85℃)に約30分を週3回ほど続けたところ、中距離ランナーの通常気温(18℃)でのパフォーマンスが向上したことが報告されています1。
具体的には最大酸素摂取量が平均で約0.22L/minほど向上し、閾値でのランニングスピードが0.5%増加したとのことです。
しかし、この研究についてはサンプルに偏りがあるなど、強いバイアスがかかっている可能性が指摘がれています2。
別の研究ではサウナによる持久力アップは効果が弱いことが報告されており2、こちらの研究はより証明力が高いメタ分析と呼ばれる方法が採用されています。
サウナに入ることで血中成分が確かに改善するのですが、残念ながら通常の気温環境ではランニングのパフォーマンス改善は起こりにくく、再現性が低いという研究結果が多いのが現状です。
私自身もランニングのパフォーマンスを高めるためにサウナをたくさん利用してみたことがありますが、思うような効果が得られませんでした。
もし、サウナという簡単な方法で本当に効果があるのならば、多くの人が実践しているはずであるという疑問が拭えません。
箱根駅伝の直前にサウナに入ってピーキングする光景が冬の名物にならないことからも、サウナの効果の再現性の低さが表れているかと思います。
サウナのリカバリー効果
一般的に血流促進や疲労回復などの効果が謳われていますが、トレーニング後のサウナは効果については微妙なところです。
トレーニング後にサウナ(80~85℃)に入ると、翌日のタイムトライルのパフォーマンスが悪化していたことが報告されています3。
一方で遠赤外線による低温サウナ(40℃前後)を利用した場合には筋力の回復が速かったことが報告されています4・5。
このように運動後に高温のサウナで身体を温め過ぎるのは好ましいとは言えません。
どちらかというと低めの温度で身体をクールダウンさせるほうがリカバリーにつながりやすくなります。
ランナーはサウナを利用すべきか?
サウナの効果については諸説ありますが、基本的にサウナが好きなランナーはサウナに入るべきであると思います。
サウナ好きの人は特に精神的な効果が大きく、トレーニング後にサウナに入ることでスッキリした気分になれる、メンタルが整う、精神的な疲れが取れる、ランニングをもっと頑張れるという人もいるかと思います。
病は気からと言われるように、精神状態をポジティブに保つことで得られるメリットは計り知れないかと思います。
気持ちよくサウナに入るためには長時間の利用は避け、水風呂とセットでサウナを利用することなどが役立ちます。
一方でサウナが好きではないけれど、パフォーマンスアップや疲労回復のために我慢してサウナに入るのはオススメできません。
サウナによってポジティブな効果が得られるとする研究結果もあるのですが、否定的な研究結果の方が多く、再現性が低いため期待した効果を得られない可能性が高いと言えます。
特に暑さが苦手なランナーにとっては、サウナに入ることで熱ストレスによる疲労が溜まってしまうリスクがあります。
まとめ
ランナーのサウナによるパフォーマンスアップ効果は再現性が低く、ランニング直後にサウナなどで身体を温め過ぎるとリカバリーに悪影響を及ぼす可能性があります。
気持ちいいと感じられる範囲でのサウナの利用が好ましく、我慢してサウナに入るのは好ましくありません。
<参考文献>
- Kirby NV, Lucas SJE, Armstrong OJ, Weaver SR, Lucas RAI. Intermittent post-exercise sauna bathing improves markers of exercise capacity in hot and temperate conditions in trained middle-distance runners. Eur J Appl Physiol. 2021 Feb;121(2):621-635. doi: 10.1007/s00421-020-04541-z. Epub 2020 Nov 19. PMID: 33211153; PMCID: PMC7862510.
- Solomon TPJ, Laye MJ. The effect of post-exercise heat exposure (passive heat acclimation) on endurance exercise performance: a systematic review and meta-analysis. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2025 Jan 6;17(1):4. doi: 10.1186/s13102-024-01038-6. PMID: 39762944; PMCID: PMC11702104.
- Skorski S, Schimpchen J, Pfeiffer M, Ferrauti A, Kellmann M, Meyer T. Effects of Postexercise Sauna Bathing on Recovery of Swim Performance. Int J Sports Physiol Perform. 2019 Dec 22;15(7):934-940. doi: 10.1123/ijspp.2019-0333. PMID: 31869820.
- Mero A, Tornberg J, Mäntykoski M, Puurtinen R. Effects of far-infrared sauna bathing on recovery from strength and endurance training sessions in men. Springerplus. 2015 Jul 7;4:321. doi: 10.1186/s40064-015-1093-5. PMID: 26180741; PMCID: PMC4493260.
- Ahokas EK, Ihalainen JK, Hanstock HG, Savolainen E, Kyröläinen H. A post-exercise infrared sauna session improves recovery of neuromuscular performance and muscle soreness after resistance exercise training. Biol Sport. 2023 Jul;40(3):681-689. doi: 10.5114/biolsport.2023.119289. Epub 2022 Sep 15. PMID: 37398966; PMCID: PMC10286597.
- Hussain J, Cohen M. Clinical Effects of Regular Dry Sauna Bathing: A Systematic Review. Evid Based Complement Alternat Med. 2018 Apr 24;2018:1857413. doi: 10.1155/2018/1857413. PMID: 29849692; PMCID: PMC5941775.
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