トレイルランニングとは?
トレイルランニングは未舗装路を走る競技のことを指します。通常のランニングとは異なり、トレイルのコースには林道や砂利道、岩場、登山道、草地など様々なコースが含まれます。
自然豊かなコースを走ることに魅力を感じる人も多く、トレイルランの大会に専念しているランナーも多いです。
トレイルランの大会に参加していないランナーでも、練習の一環として不整地のコースを走るといったトレーニングを取り入れているランナーも珍しくありません。
トレイルランニングの効果
通常のランニングに比べてトレイルランニングをすることでバランス感覚が良くなる、VO2max(最大酸素摂取量)が高くなるといったトレーニング効果が報告されています1。
起伏のあるコースを走ることで通常よりも大きな負荷がかかり、心肺機能や筋肉などが鍛えられやすいといった効果が生まれるのかもしれません。
また、トレイルランナーはマラソンランナーに比べてアキレス腱が約30~40%ほど大きく発達しているという報告があります2。
平地での走行距離よりも獲得標高がアキレス腱の発達に影響を与えることが示されています。
トレイルランニングを取り入れることで基礎力を高めるのに役立つかもしれませんが、それが必ずしもマラソンなどのレースでの結果につながるとは限りません。
トレイルランナーはマラソンランナーに比べてパワーが強いのですが、平地でのランニング効率が悪いことが報告されています3。
平地でのタイムを改善するためには、スピード練習などレースに対して特異的な練習も必要になってくるため、一概にトレイルランニングだけでタイムが良くなると言い切れないところがあると思います。
トレイルランニングと怪我
怪我のリスク
トレイルランにおいては主にウォームアップをしない、ランニングのプランを立てない、2部練習をするといったものが怪我のリスク要因として報告されています4・5。
これらはトレイルランニング自体の怪我のリスクというよりも、軽率なランニングによるところが大きいのではないかと思います。
そして、トレイルランで起こりうる怪我の種類としては擦り傷や豆ができたり、、かぶれたり、足がつることや捻挫などが起こりやすいことが報告されています5・6。
さらにトレイルランではランナー膝の痛みなどの慢性的な怪我も起こりやすいと言われています7。
トレイルランではアップダウンの起伏があるコースを走るため、おのずと膝などに大きな負荷がかかると考えられます。
普段とは違う刺激が入るため負荷の分散になる可能性があるとか、柔らかい地面を走ればクッション効果があって怪我をしにくいといった考え方もありますが、
起伏があるコースは体感している以上に負荷がかかりやすく、気がついた時には膝を痛めているといったことがあるので注意が必要です。
怪我予防
トレイルランニングにおける怪我予防で大切なことは、少しずつ身体を慣らしていくことです。
普段走り慣れていない量をいきなり走ってしまうと怪我のリスクが高まるので、自分の力を過信せずに少しずつトレイルランの距離を伸ばしていくことが怪我予防につながります。
これはトレイルランだけに限らずランニングに全般において極めて重要なことです。
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ランナーが安全に走行距離を伸ばすポイント
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そして、トレーニングによる筋力強化やバランス感覚、全身のコーディネーション能力を高めることもトレイルランニングの怪我を防ぐのに役立つと言われています8。
まとめ
トレイルランニングは不整地コースによって通常とは異なる刺激が入り、VO2max(最大酸素摂取量)や筋力強化、バランス感覚の向上につながることがあります。
一方で無計画なトレイルランは怪我のリスクを高めるため、過信せずに慎重に取り入れていくことがトレイルランでの怪我を防ぐポイントになります。
<参考文献>
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- Rubio-Peirotén A, Cartón-Llorente A, Mugele H, Jaén-Carrillo D. The Trail Runners' Tendon-How Do Weekly Mileage and Elevation Gain Affect Achilles and Patellar Tendon Morphology? J Funct Morphol Kinesiol. 2024 Dec 24;10(1):1. doi: 10.3390/jfmk10010001. PMID: 39846642; PMCID: PMC11755538.
- Sabater Pastor F, Besson T, Berthet M, Varesco G, Kennouche D, Dandrieux PE, Rossi J, Millet GY. Elite Road vs. Trail Runners: Comparing Economy, Biomechanics, Strength, and Power. J Strength Cond Res. 2023 Jan 1;37(1):181-186. doi: 10.1519/JSC.0000000000004226. Epub 2022 Feb 10. PMID: 36515604.
- Viljoen C, Janse van Rensburg DCC, van Mechelen W, Verhagen E, Silva B, Scheer V, Besomi M, Gajardo-Burgos R, Matos S, Schoeman M, Jansen van Rensburg A, van Dyk N, Scheepers S, Botha T. Trail running injury risk factors: a living systematic review. Br J Sports Med. 2022 May;56(10):577-587. doi: 10.1136/bjsports-2021-104858. Epub 2022 Jan 12. PMID: 35022162.
- Viljoen CT, Janse van Rensburg DC, Verhagen E, van Mechelen W, Tomás R, Schoeman M, Scheepers S, Korkie E. Epidemiology of Injury and Illness Among Trail Runners: A Systematic Review. Sports Med. 2021 May;51(5):917-943. doi: 10.1007/s40279-020-01418-1. Epub 2021 Feb 4. Erratum in: Sports Med. 2022 Jan;52(1):191-192. PMID: 33538997.
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- Viljoen CT, Janse van Rensburg DC, Verhagen E, van Mechelen W, Korkie E, Botha T. Epidemiology, Clinical Characteristics, and Risk Factors for Running-Related Injuries among South African Trail Runners. Int J Environ Res Public Health. 2021 Nov 30;18(23):12620. doi: 10.3390/ijerph182312620. PMID: 34886345; PMCID: PMC8656810.
- Vincent HK, Brownstein M, Vincent KR. Injury Prevention, Safe Training Techniques, Rehabilitation, and Return to Sport in Trail Runners. Arthrosc Sports Med Rehabil. 2022 Jan 28;4(1):e151-e162. doi: 10.1016/j.asmr.2021.09.032. PMID: 35141547; PMCID: PMC8811510.
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