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ランナーが安全に走行距離を伸ばすポイント

2023年9月23日

ランニング下り

マラソンでより速く走れるようになるためには走行距離を増やすことが役立ちますが、走行距離を増やすことにこだわり過ぎて怪我をしてしまうランナーは数多くいます。

今回は安全に走行距離を増やすためのポイントをご紹介していきたいと思います。

 

走行距離が長いランナーの特徴

ランナーが走行距離を伸ばすには徐々に走行距離を伸ばして耐性をつけていくことが大切です。

 

ランニングの怪我には興味深い矛盾があり、マラソンランナーの最大の怪我のリスクは走行距離が多いという研究結果がある一方で、

怪我なく長距離を走っているランナーの特徴は普段から走行距離が多いという研究結果があります

例えば、ニューヨークマラソン参加者の怪我を調べた研究では、フルマラソン初挑戦の人よりも何度も参加している人の方が怪我をしにくいことが報告されているわけです

 

ランナーが走行距離を伸ばすのには、走る距離を徐々に増やして耐性をつけていくことが大切で、急激に走行距離を増やすと怪我につながりやすくなります。

 

走行距離を安全に伸ばすには

走行距離を伸ばすのに明確な基準があるわけではなく、経験と勘に頼らざるを得ない部分が大きいです。

 

10%ルール

走行距離を伸ばす基準として有名なものが、1週間ごとに走行距離を10%増やすという方法です。

1週間に10%ずつ走行距離を増やしていけば怪我のリスクを抑えながら、耐性をつけることができると言われることがあります。

 

しかし、この10%ルールの安全性には疑問が残ります。

実際に走行距離を10%ずつ増やしても怪我がほとんど起きなかったという研究結果がありますが

この研究結果はランニング初心者を対象にしており、しかもプロ選手並みの手厚いケアがある環境下で行われています。

 

走行距離が増えるごとに怪我のリスクが跳ね上がりやすく、月に何百キロも走っているランナーが毎週10%ずつ増やすのはリスクが高いと思います。

レベルが低い方がレベル上げが簡単であり、上級者ほど次のステージに進むのに多くの経験値が必要というわけで、

中級者や上級者こそ10%ルールの導入には慎重になった方が良いかと思います。

実際に過去30日間で走った最も長い距離のランニングに比べて、10%以上長い距離を一度に走ると、怪我をするリスクが64%高まるという研究結果も報告されています

 

ダニエルズ理論

市民ランナーのバイブルと呼ばれることがある「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」の著者、ジャックダニエルズ博士が走行距離について語っている動画をご紹介します。

動画は英語ですので、要点をまとめると・・・

週に5回走っているのならば、週間走行距離を5マイル(約8km)増やすことができる。

週に7回走っているならば、週間走行距離を7マイル(約11km)増やすことができる。

週に14回走っているならば、週間走行距離を14マイル(約22km)ではなく、10マイル(16km)増やすのが上限である。

 

そして、走行距離を増やす場合は、少なくとも4週間は同じ走行距離で走って耐性をつける必要があると。

 

ちなみにダニエルズ博士によると、走行距離を毎週10%ずつ増やす「10%ルール」というのは最も馬鹿げた方法である、とのことです・・・。

辛辣なこと言いますね。

 

定期的な休養

関節のダメージは数ヶ月後にやってくると言われることがあります。

3ヶ月トレーニングをしたら1〜2週間の休養を入れるなど、特に若い選手の場合には1年中トレーニングをすることが好ましくないという意見があります

数週間の休養を入れることに抵抗がある人も少なくないと思います。

1年中激しいトレーニングをするよりも、走行距離を伸ばす時期、走行距離にこだわらず身体を休める時期などがあってもいいと思います。

ランニング
ランニングのダメージは数ヶ月後にやってくる

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走行距離を伸ばす時の注意点

激しい練習が続いている時には走行距離を伸ばさない

筋トレをしている時、スピード練習を多く取り入れている時などは怪我のリスクが高まります。

走行距離を伸ばしている時には、負荷の高い練習は控えめにしたほうが賢明です。

 

80・20ルールと呼ばれるものがあります。

練習の80%はゆっくりとしたジョグで走り、20%はスピード練習をするというものです。

練習の多くをゆっくり走ることで怪我のリスクも抑えられるわけです。

 

身体に痛みや違和感がある時は走行距離を伸ばさない

走行距離を伸ばすときには、痛みや違和感を感じたら休むということが大切です。

違和感を放置して無理やり走り続けると、大きな怪我を引き起こしやすくなります。

 

軽い痛みや怪我ならば色々と対処できる余地があるのですが、重い怪我を抱えてしまうと対処のしようがなくなります。

ちょっと違和感があるけど、まだまだ走れるな〜と思えるうちに練習量を調整した方が好ましく、

これ以上は痛くて走れないという状態は「時すでに遅し」となっていることが多いです。

アスファルトのランニング
ランナー膝が治らない場合に考えられる原因

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怪我で長期離脱すると、以前のコンディションに戻すのに時間がかかります。

無理に走行距離を伸ばして怪我をしてしまうと成長スピードが遅くなってしまいます。

 

走行距離を伸ばすには時間がかかることを覚悟する

マラソンではペースを守ってゆっくり走ることが大切です。

走行距離を伸ばす時も同じです。

走行距離が1年間で20~30%増えるだけでも上出来だと考え、時間をかけて少しずつ増やしていくのが安全な方法だと思います。

ゆっくりコツコツと続ける、それこそがマラソンで成功する秘訣ではないでしょうか。

 

<参考文献>

  1. van Gent RN, Siem D, van Middelkoop M, van Os AG, Bierma-Zeinstra SM, Koes BW. Incidence and determinants of lower extremity running injuries in long distance runners: a systematic review. Br J Sports Med. 2007 Aug;41(8):469-80; discussion 480. doi: 10.1136/bjsm.2006.033548. Epub 2007 May 1. PMID: 17473005; PMCID: PMC2465455.
  2. Toresdahl B, McElheny K, Metzl J, Kinderknecht J, Quijano B, Ammerman B, Fontana MA. Factors associated with injuries in first-time marathon runners from the New York City marathon. Phys Sportsmed. 2022 Jun;50(3):227-232. doi: 10.1080/00913847.2021.1907257. Epub 2021 Mar 31. PMID: 33750264.
  3. Kennedy MA, Fortington LV, Penney M, Hart NH, d'Hemecourt PA, Sugimoto D. Running Marathons in High School: A 5-Year Review of Injury in a Structured Training Program. Int J Environ Res Public Health. 2023 Mar 1;20(5):4426. doi: 10.3390/ijerph20054426. PMID: 36901436; PMCID: PMC10001535.
  4. Schuster Brandt Frandsen J, Hulme A, Parner ET, Møller M, Lindman I, Abrahamson J, Sjørup Simonsen N, Sandell Jacobsen J, Ramskov D, Skejø S, Malisoux L, Bertelsen ML, Nielsen RO. How much running is too much? Identifying high-risk running sessions in a 5200-person cohort study. Br J Sports Med. 2025 Aug 26;59(17):1203-1210. doi: 10.1136/bjsports-2024-109380. PMID: 40623829; PMCID: PMC12421110.
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