腰痛

悪い姿勢が本当に腰痛の原因だと言えるのか?

2024年7月2日

悪い姿勢

悪い姿勢が腰痛の原因になると耳にすることがある一方で、姿勢を改善するだけでは思うように腰痛が改善しないこともしばしばあります。

ここで姿勢と腰痛の関係について科学的根拠を交えながら詳しく説明していきたいと思います。

 

悪い姿勢と腰痛の関係

悪い姿勢が腰痛を引き起こす可能性

姿勢と腰痛に関しては少しばかり関係している可能性がありますが、腰痛の原因は悪い姿勢だと強く言えるほどの科学的根拠はないことが報告されています1・2

つまり、綺麗な姿勢であるかどうかという点はそこまで影響がなく、どちらかというと長時間座りっぱなし、長時間立ちっぱなしといった腰に負担がかかる状況が続くと腰痛を引き起こします。

悪い姿勢

例えば長時間の立ち仕事をしていると腰痛になりやすいことが報告されていますが、その時の姿勢は腰痛の発生率とは関係していなかったことが報告されています

他にもパソコンやスマホの使用時間が長いほど腰痛のリスクが高まることが報告されていて、8時間以上の長時間の運転をしているかどうかが腰痛と関係しているそうです

アスリートの腰痛を対象にした研究でも姿勢は腰痛のリスクであるという強い科学的根拠はなく、どちらかというと練習量や練習の重さなどが腰痛との関連性が強いことが報告されています6・7

このように姿勢の良し悪しよりも、腰に負担がかかっている時間や量の影響が大きいと言えるでしょう。

 

姿勢の変化による物理的負荷の違い

良い姿勢と悪い姿勢と比べた場合に腰にかかる物理的な負荷はせいぜい10%前後くらいの違いがないことが多く、腰痛を引き起こすほどの致命的な負荷がかかると言えるほどではないかと思います。

しかし、長時間の作業やスポーツは腰の負荷が数倍に跳ね上がる可能性があります。

例えばデスクワークの時間が倍になれば腰の負荷が倍ほど蓄積されていく可能性があるわけで、時間によるダメージの蓄積は想像以上に身体に影響を与えることが考えられます。

長時間のデスクワークによる腰痛

姿勢の良し悪しの影響は小さいと言いましたが、スポーツや運動の種類によっては姿勢によって腰の負荷が大きく違ってくる可能性があります。

例えばウェイトトレーニングで背中が丸まったような悪い姿勢は腰の負担を著しく高め、腰痛を引き起こす可能性が高いと言えます。

他にも腰を大きく捻るようなスイング、腰を大きく反るような投球動作なども腰の負荷が著しく高まります。

ウェイトトレーニング腰痛

このように悪い姿勢による影響はスポーツや動きの種類によっても変わってくる可能性があるということです。

 

腰痛が姿勢の悪化を引き起こす

腰痛を抱えている人は姿勢が悪いことが多いため、悪い姿勢が腰痛の原因ではないかと思うこともあるかもしれません。

実際に腰痛がある人は姿勢が悪くなる傾向にあり、痛みが酷いほど姿勢が悪いという研究結果があります8・9

腰痛

例えば腰痛を抱えている人の方が真っ直ぐの姿勢の感覚に誤りがあることが報告されています10

これは痛みが姿勢の感覚を鈍らせると考えられていて、真っ直ぐだと思っていても実際は認識がズレているということが起こります。

 

また、痛みが筋肉の働きを低下させ、綺麗な姿勢を維持するための筋肉が働きにくくなるという側面もあります11

こういったことから姿勢の悪さが腰痛を引き起こしたとは限らず、腰痛になったからこそ姿勢が悪くなったという可能性も考えられます。

 

重い腰痛を抱えている場合

重い腰痛を抱えている場合にはわずかな姿勢の違いが痛みを生み出すことがあり、ちょっと動くだけで痛みに襲われることもあります。

腰痛を抱えている人に対して腰に負担が出にくい寝返りの方法、腰に優しい立ち上がり方などをレクチャーすることも珍しくありません。

ベッド腰痛

これは良い姿勢がある悪い姿勢があるというよりも、普通の人ならば問題ない姿勢に耐えられないほど腰の状態が悪化していることが問題であると思います。

この場合にはできるだけ痛みの出にくい姿勢を取ることが腰痛の悪化を防ぎ、回復を早める可能性があります。

そして、本来ならば労働時間やスポーツの練習時間を調整した方が効果が大きいのですが、それが難しいのでやむを得ずに姿勢を調整するしかできることがないという状況も多々あるかと思います。

 

姿勢改善による腰痛への効果

椅子やデスクの調整について

腰に優しい椅子やデスクといった考え方があり、この角度が良いとかこのデザインが良いなどの議論があります。

細かい設計の話になると小難しくなってしまいますが、基本的には背もたれがあって、肘掛けがあって、体重を預けやすいことが腰の負担を減らすことにつながります。

デスクワーク姿勢腰痛

そして、工学的なデザインだけでなく主観的な感覚も大事であり、座った時に心地よいと感じられるものが腰痛を減らしやすいことが報告されています

座った瞬間の心地よさだけでなく、長時間使用している時に楽だと感じられるかどうかが重要であると思います。

そして椅子やデスクのデザインだけでなく、定期的に休憩を入れたり姿勢を変えたりすることが腰痛を減らすことに役立つことが報告されています12

 

寝る時の姿勢ついて

一般的には横になって膝に枕を挟む姿勢がいいとか、背骨を真っ直ぐにした姿勢で寝るといいとか言われていますが、

寝る姿勢と腰痛の関係性は個人差が大きく、腰痛の種類などによって痛みが出やすい姿勢が変わってくるため、どの姿勢が良いかは一概には言えるものではないと思います13

寝る時の姿勢と腰痛

そもそも寝ている時の姿勢による腰への物理的な負荷にそこまで大きな違いがあるわけではないので、寝る時の正しい姿勢というものはないかと思います。

痛みが出にくい姿勢、心地よさを感じられる姿勢で寝れば良いと思います。

 

姿勢矯正トレーニングの効果

ストレッチやエクササイズなどによる姿勢矯正は腰痛を減らすのに高い効果があることが報告されています15〜17

姿勢を良くするためのトレーニングには様々なものがあり、ヨガやピラティス、体幹トレーニングなど様々なエクササイズや運動が腰痛の軽減に効果があります。

姿勢を良くするという名目でエクササイズやトレーニングに取り組むことは腰痛の改善に役立ち、姿勢改善だけでなく体幹の強化や身体の適応など様々な効果が期待できます。

プランク

そして、体幹トレーニングの効果を高めるためには綺麗な姿勢で行うことが重要になってくるため、質の良い体幹トレーニングを行うと姿勢が良くなっていくことが多い印象です。

スプリンター
アスリートの腰痛を改善するための体幹トレーニング

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まとめ

悪い姿勢が腰痛の原因になっているかどうかは微妙なところで、腰に負荷がかかる時間の長さや運動の種類によって影響が違ってきます。

良い姿勢を取ることで腰痛が楽になることがあり、特に良い姿勢を取るためのエクササイズやトレーニングが体幹に良い刺激を与え、腰痛の解消に役立ちます。

 

<参考文献>

  1. Swain CTV, Pan F, Owen PJ, Schmidt H, Belavy DL. No consensus on causality of spine postures or physical exposure and low back pain: A systematic review of systematic reviews. J Biomech. 2020 Mar 26;102:109312. doi: 10.1016/j.jbiomech.2019.08.006. Epub 2019 Aug 13. PMID: 31451200.
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