膝の怪我のメカニズム

外側広筋は身体に悪影響を与える筋肉なのか?

外側広筋の解剖図

外側広筋と呼ばれる太ももの外側にある筋肉は怪我を引き起こしているのではないか?というようなイメージがつきまとっていることがあります。その一方で、太ももの内側にある内側広筋などの筋肉は鍛えた方がいいと言われることが多い印象を受けています。しかし、全ての筋肉にはそれぞれの役割があり、それを理解した上で全ての筋肉をバランスよく鍛えることが重要ではないでしょうか。

 

ポイント

  • 外側広筋が膝蓋骨の脱臼の原因となっていることがあります
  • 外側広筋も膝を安定させるために働きます
  • 特定の筋肉を悪者扱いするよりも、それぞれの筋肉をバランス良く鍛えることが大切になってきます

 

外側広筋は悪い筋肉なのか?

外側広筋にも膝を安定させる働きがあります。ですが外側広筋が怪我の原因となることもあることからあまり印象は良くないかもしれません。

 

膝蓋骨の脱臼

  • 一般的には外側広筋が膝蓋骨の位置を外側に引っ張る可能性があり、外側と内側の筋肉バランスの乱れが膝蓋骨を不安定にさせ、外側広筋が膝蓋骨の脱臼などのメカニズムであると考えられています。
  • 一方で内側広筋は反対方向に力が働くため、膝蓋骨の脱臼を防ぐのではないかと考えられています
  • 内側広筋の弱さが変形性膝関節症の症状と関係していたという報告があります4。
  • ひざ痛を持っている人は外側広筋の活動量が増えていたという報告があります

このようなことから外側広筋が悪いもので内側広筋が良いものというような印象を受けてしまうかもしれません。しかし、これらの研究だけでは一概に身体に悪影響を及ぼしているのかはわからず、身体を守るために外側広筋の活動量が増えている可能性も捨てきれません。

というのも、外側広筋のほうが大きな力を生み出しやすいため、膝を安定させるために内側広筋ではなく外側広筋が優先的に使われている可能性も考えられます。

 

外側広筋も大事な筋肉では?

外側広筋も忘れずに鍛えることで膝の負荷を軽減させる可能性があります。

  • 変形性膝関節症を持っている人と健康な人の椅子に座る動作を比べた時に、変形性膝関節症を持っている人の外側広筋の活動量が減少していたそうです7・8
  • 前十字靭帯を損傷した人達の外側広筋は弱くなっていたそうです9・10。このように怪我に伴い筋肉が弱くなってしまうことが報告されています。
  • 片足スクワットで膝の外反を意図的に増やした研究では、内側広筋と外側広筋の両方の筋肉の活動量が増えていたそうです11

このように外側広筋も膝を安定させるために働き、この筋肉が弱くなることで変形性膝関節症などへと発展してしまう可能性があります。つまり、身体を支えるためには両方の筋肉が必要であることを示しているのではないでしょうか。

しかしながら、この筋肉が強すぎることで膝への負担が高まる可能性があることもあることから、特定の筋肉だけでなくバランス良く鍛えることが重要になってくるかと思います。

 

外側広筋のエクササイズについて

外側広筋を狙って鍛えるには複雑なものよりもシンプルなエクササイズが適しているかもしれません。外側広筋

  • 股関節を外転させても外側広筋や内側広筋の活動量の割合に変化はないようです12
  • スクワット時の膝のポジションを内外反と変えても外側広筋や内側広筋の活動量の割合の変化は限られていたそうです13
  • 膝関節が90度近く曲がった状態だと内側広筋の活動量が増える傾向にあることが報告されています14
  • スクワット時においてもフルスクワットのように膝を深く曲げた状態において内側広筋の活動量の割合が増えていたそうです13

例外はあるものの基本的にはスクワットやランニング時に意図的に内側広筋や外側広筋の活動量の割合を変えることは簡単ではないようです15

このようなことからスクワットのような複雑な動作よりも、シンプルな動作で意図的に鍛えていくことが大事かもしれません。

 

まとめ

この筋肉が悪いというよりも、周辺の筋肉とのバランスが乱れていることのほうが悪影響を生み出している可能性があり、すべての筋肉には役割があるのでバランスを整えながら鍛えることが大事になってくるかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Lorenz A, Bobrowitsch E, Wünschel M, Walter C, Wülker N, Leichtle UG. Robot-aided in vitro measurement of patellar stability with consideration to the influence of muscle loading. BioMedical Engineering OnLine. 2015;14(1):1-14.

  2. Baksi DD, Pal AK, Baksi DP. Electromyographic investigation of unstable patella before and after its realignment operation. Indian Journal of Orthopaedics. 2011;45(1):69-73.

  3. Kreuz PC, Peterson L, van der Werf-Grohmann N, Vohrer M, Schwering L. Clinical and Electromyographic Results of Proximal and Distal Realignment Procedures in Young Patients With Recurrent Patellar Dislocations. Am J Sports Med. 2013;41(7):1621-1628.

  4. Yamauchi K, Kato C, Kato T. Characteristics of individual thigh muscles including cross-sectional area and adipose tissue content measured by magnetic resonance imaging in knee osteoarthritis: a cross-sectional study. Rheumatol Int. 2019;39(4):679-687.

  5. Gallina A, Hunt MA, Hodges PW, Garland SJ. Vastus Lateralis Motor Unit Firing Rate Is Higher in Women With Patellofemoral Pain. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation. 2018;99(5):907-913.

  6. Hug F, Goupille C, Baum D, Raiteri BJ, Hodges PW, Tucker K. Nature of the coupling between neural drive and force-generating capacity in the human quadriceps muscle. Proc Biol Sci. 2015;282(1819).

  7. Bouchouras G, Sofianidis G, Patsika G, Kellis E, Hatzitaki V. Women with knee osteoarthritis increase knee muscle co-contraction to perform stand to sit. Aging Clin Exp Res. 2020;32(4):655-662.

  8. Aily JB, de Noronha M, de Almeida AC, et al. Evaluation of vastus lateralis architecture and strength of knee extensors in middle-aged and older individuals with knee osteoarthritis. Clin Rheumatol. 2019;38(9):2603-2611.

  9. Li W, Li Z, Qie S, et al. Biomechanical Evaluation of Preoperative Rehabilitation in Patients of Anterior Cruciate Ligament Injury. Orthopaedic Surgery. 2020;12(2):421.

  10. Noehren B, Andersen A, Hardy P, et al. Cellular and Morphological Alterations in the Vastus Lateralis Muscle as the Result of ACL Injury and Reconstruction. J Bone Joint Surg Am. 2016;98(18):1541-1547.

  11. Tae-Lim Yoon, Ki-Song Kim, Heon-Seock Cynn. Comparison of the knee valgus angle, leg muscle activity, and vastus medialis oblique/vastus lateralis ratio during a single leg squat on flat and declined surfaces in individuals with patellofemoral pain syndrome. Isokinetics & Exercise Science. 2016;24(4):341-347.

  12. Bevilaqua-Grossi D, Monteiro-Pedro V, De Vasconcelos RA, Arakaki JC, Bérzin F. The effect of hip abduction on the EMG activity of vastus medialis obliquus, vastus lateralis longus and vastus lateralis obliquus in healthy subjects. Journal of NeuroEngineering & Rehabilitation (JNER). 2006;3:13-18.

  13. Jaberzadeh S, Yeo D, Zoghi M. The Effect of Altering Knee Position and Squat Depth on VMO : VL EMG Ratio During Squat Exercises. Physiotherapy Research International. 2016;21(3):164-173.

  14. Belli G, Vitali L, Botteghi M, Vittori LN, Petracci E, Maietta Latessa P. Electromyographic Analysis of Leg Extension Exercise During Different Ankle and Knee Positions. Journal of Mechanics in Medicine & Biology. 2015;15(2):1.

  15. Smith TO, Bowyer D, Dixon J, Stephenson R, Chester R, Donell ST. Can vastus medialis oblique be preferentially activated? A systematic review of electromyographic studies. Physiother Theory Pract. 2009;25(2):69-98.

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