肩の怪我のメカニズム

僧帽筋上部と肩甲骨の働き

僧帽筋上部

僧帽筋上部が硬くなっていたり過剰に働いていたりすることが肩の怪我では珍しくありません。このため僧帽筋上部は悪者扱いされることが多く、ほぐしたりすることが一般的ですが、この筋肉も肩甲骨の働きに関与しているため単純にほぐすだけで問題が解決しないことがあります。僧帽筋上部が過剰にならないように肩甲骨の周辺の筋肉もしっかりと鍛えてバランスを整えたりすることが肩の負荷を和らげるのに役に立つかもしれません。

 

ポイント

  • 僧帽筋上部の過剰な働きは怪我の原因につながると考えられています
  • 僧帽筋上部も肩甲骨の動きに貢献しています
  • 強すぎてもよくないし、弱すぎても逆効果になってしまうことがあります

 

僧帽筋上部が怪我と関係している

僧帽筋上部の過剰な働きは怪我の原因につながると考えられています。

 

  • 肩の痛みや機能不全を抱えている人は僧帽筋上部の活動が多い傾向にあることが報告されています
  • ローテーターカフを痛めている選手は僧帽筋上部が硬くなっている傾向にあります

ローテーターカフ

この他にもこのような研究結果は数多くあり、僧帽筋上部の過剰な活動や硬さが肩の怪我に関係していることが伺えます。

肩が力むということに表されるように、上部僧帽筋に力が入りすぎることで肩のバランスに乱れが生じて、これが肩の負荷へとつながってしまう可能性があります。

これは僧帽筋上部が活動量が多いことや、他の筋肉が相対的に弱いために僧帽筋上部の活動量が増えていることも考えられます。

 

僧帽筋上部も肩甲骨の働きに関与している

何かと悪者にされがちですが、僧帽筋上部も肩甲骨の機能に貢献しています。

 

例えば、次の図のように腕をあげる動作において僧帽筋上部も肩甲骨の動きに貢献しており、複数の筋肉が働くことで釣り合いをとりながら肩甲骨が動きやすくなります。

肩甲骨のフォースカップル

(Chepeha, Bouliane, Sheps 2015より引用)

これを示すかのように僧帽筋上部の筋力が強いほうが肩甲骨の動きが大きいという研究結果もあります

 

そして、これは私自身の身体で経験したことですが、僧帽筋上部を緩めすぎると肩に痛みが生じてしまいます。おそらく僧帽筋上部にも肩を安定させるなどの役割があり、一概に悪者とも言えない部分もあるのではないかと思います。

 

絶妙なバランスが重要だったりする

僧帽筋上部はあまり鍛えずに硬くならないようにほぐすという発想が生まれるかもしれません。

しかしながら、僧帽筋上部の働きを弱めることで問題が解決するほど単純にいかないことも多くあるかと思います。

強すぎてもよくないし、弱すぎても逆効果になってしまうことがあり、絶妙なバランスが難しい所です。

肩の検査

僧帽筋上部も強さに見合うように肩甲骨周りの他の筋肉もしっかりと鍛えてバランスが取れるようにすることで、僧帽筋上部だけが過剰に発達するのを防ぐという考え方もあるかと思います。

肩が力んでしまうような動作の癖や、呼吸をするときに僧帽筋上部が過剰に働くこともあり、筋力だけでなく色々な要素からアプローチしていくことが大切かと思います。

 

科学では原理原則を明らかにすることができますが、具体的に僧帽筋をどのように調整したらいいのか、筋力と柔軟性のバランスの評価というのは経験やアートの要素が強く、単純にこうすればいいというのは簡単に示せない部分があります。

 

まとめ

何かと悪者にされがちな僧帽筋上部ですが、この筋肉も肩甲骨の働きに関与しています。強すぎてもよくないし、弱すぎてもよくないし、僧帽筋上部だけが過剰にならないように周りの筋肉とのバランスをとっていくことがポイントになるかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Ludewig PM, Hoff MS, Osowski EE, Meschke SA, Rundquist PJ. Relative Balance of Serratus Anterior and Upper Trapezius Muscle Activity during Push-Up Exercises. Am J Sports Med. 2004;32(2):484-493.
  2. Leong HT, Hug F, Fu SN. Increased Upper Trapezius Muscle Stiffness in Overhead Athletes with Rotator Cuff Tendinopathy. PLoS One. 2016;11(5).
  3. Turgut E, Duzgun I, Baltaci G. Effect of trapezius muscle strength on three-dimensional scapular kinematics. J Phys Ther Sci. 2016;28(6):1864-1867.
  4. Chepeha, J., Bouliane, M & Sheps, D. (2015). Rotator Cuff Pathology In. Magee, D., Zacharzewski, J., Quillen, W., & Manske, R. Pathology and intervention in musculoskeletal rehabilitation. (Second ed., Musculoskeletal rehabilitation series). Elsevier.

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