身体のケア

トリガーポイントによる痛みの解消について

痛みの原因のひとつとしてトリガーポイントが知られており、痛みを軽減させるためにトリガーポイントを抱えている筋肉などへのマッサージなどが行われています。

トリガーポイントに関するメカニズムや科学的根拠については、まだまだ多くの議論があり、明確な結論は出ていません。

そこでトリガーポイントに関するこれまでの研究結果をご紹介しつつ、トリガーポイントについて考察していきたいと思います。

 

ポイント

  • トリガーポイント周辺には筋肉の局所的な硬さや、血流低下、炎症に伴う化学物質の増加が報告されています。
  • 怪我や痛みを抱えている人はより多くのトリガーポイントを抱えているようです。
  • トリガーポイントと痛みの脳神経に関する研究は限られており、十分な科学的根拠はないようです。

 

トリガーポイントとは?

一般的にトリガーポイントは筋肉のコリなどで、押すと痛みが再現されるものをいいます

肩甲挙筋トリガーポイント

  • 活動性トリガーポイント:トリガーポイントを触らなくとも既に感じている痛みに対するもので、痛みを感じている場所から離れているところに関連痛を引き起こすトリガーポイントも多いと言われることもあります
  • 潜在性トリガーポイント:トリガーポイントを圧迫するなどの行為で痛みが出現するものをいいます

正式なトリガーポイントの定義はもう少し複雑ではありますが、論文によってトリガーポイントの定義が違いますし、トリガーポイント療法の団体によっても定義が違うこともあるかと思います。

トリガーポイントの定義や評価の仕方が違えば効果も異なり、おのずと議論が生まれるのは仕方がないことだと思います。

 

トリガーポイントのメカニズム

トリガーポイントのメカニズムの中で有名なものがSimonsによる仮説があります

"Energy Crisis"、つまりエネルギー危機などによって筋肉を収縮し続ける必要性があり、エネルギーコストも増え、血流の循環も悪くなり、酸素が十分に届きにくくなり、神経のフィードバック機能により関連痛の痛みなどが出現する、といったところでしょうか。

これまでの研究結果などを取り入れつつありますが、これはあくまで仮説に過ぎません。

というのも抽象的な概念というのは、なかなか科学的に証明しにくい側面があるためです。

 

筋電図

トリガーポイントと筋活動には何らかの関わりがあるかもしれません。

トリガーポイントの例

  • トリガーポイントを抱えている部分の筋肉は筋電計が高い反応を示す傾向にあることが報告されています
  • トリガーポイントに不快な刺激を加えると筋活動が高まりやすいことも報告されています
  • 別の研究ではトリガーポイント周辺の筋電図にはノイズが含まれていることが報告されています

筋肉の異常収縮によってトリガーポイントができるのか、トリガーポイント形成にともなう化学物質のノイズによって筋電図の計測が通常よりも高い値になってしまうのか、

筋肉の働きとトリガーポイントの関連性にはまだまだ不明な点があるかと思います。

 

エコー検査

エコー検査によりトリガーポイントの状態がより詳しく研究されつつあります。

(Sikdar et al 2009より引用)

  • エコー検査でトリガーポイントを調べたところ、エコーの信号が低く、硬くなっている傾向にあるようです1・4
  • トリガーポイントが形成されている箇所は血流も少ない傾向にあるようです
  • トリガーポイントが形成されている箇所はエコー検査での反応が不均一になっている傾向にあることが報告されています。これは筋繊維のコリや血流の滞りなどによって発生しているのではないか?と考えられています。

エコー検査により様々なことが明らかになりつつありますが、個人的にはエコー検査で人の手による触診で感じることとどのくらい一致するのだろうか?という疑問も残ります。

 

トリガーポイントの生理学

トリガーポイントの周辺では炎症や痛みなどに類似する生理学的変化が生じている可能性があります。

首の痛み

  • トリガーポイントがある筋肉の化学物質を調べたところ、痛みや炎症に関わりのある化学物質がより多く含まれていることが報告されています6・7
  • いくつかのトリガーポイントは少しばかり酸性の傾向にあったようです6・7
  • トリガーポイント周辺の筋肉の筋電図にはノイズが含まれており、これが痛みの感じ方と相関関係を示したという研究結果が報告されています

 

脳神経の働き

最近ではトリガーポイントはペインサイエンスなどの脳神経との関連性についても考えられるようになってきました。

(Niddam et al 2007より引用)

  • トリガーポイントに電気刺激を加えたところ、痛みの感じ方の減少とPAGの活動量の増加には相関関係があったようです
  • トリガーポイントへの電気刺激で痛みが減少する人達と減少しない人達もいたようです

このようにトリガーポイントへの介入により、痛みに関する脳神経の働きが変化する可能性があるようです。

痛みの脳科学〜痛みを抑制する神経伝達(PAG)

 

一方で脳神経と痛みを検証した研究の中でトリガーポイントとの関連性を直接検証したものは数が少なく限られています。

あくまで慢性痛を対象にした脳神経の研究が多く、トリガーポイントに対する脳神経や痛みの研究の事例とは限らないことに注意は必要かなと個人的には思います。

 

トリガーポイントと痛みの感じ方

トリガーポイントによる痛みの感じ方は人それぞれ違いがありますが、トリガーポイントが痛みに何らかの関わりがあるというのは間違いないのではないかと思います。

トリガーポイント大腿四頭筋

  • トリガーポイントに針を刺して不快な刺激を与えると、離れた場所にも痛みを感じやすくなることが報告されています10
  • 一方でトリガーポイントによって痛みを感じる場所はバラツキがあるようで10、人それぞれ違うことが十分に考えられます
  • トリガーポイントに不快な刺激を加えたことで筋活動が高まり10、時には筋痙攣が引き起こされることが報告されています11

このようにトリガーポイントが痛みなどに関わっているケースは十分にあるのではないかと思います。

 

怪我とトリガーポイントの分布

怪我や痛みを抱えている人達はより多くのトリガーポイントを抱えている傾向にあるようです。

トリガーポイント背中

  • 肩の痛みを抱える車椅子バスケットボール選手はトリガーポイントが多い傾向にあることが報告されています12
  • 肘の外側上顆炎を抱える人達にも同様の傾向があるようです13

このように怪我をしている選手は多くのトリガーポイントを抱えているかもしれません。

 

トリガーポイントと鍼

トリガーポイントは東洋医学の一種である鍼との親和性があるかもしれません。

  • ある研究ではトリガーポイントと鍼を打つ場所の7割近くが類似している14
  • 一方でトリガーポイントと鍼はそこまで場所が類似しているわけではないとする説もあります15

このように議論は残るものの、もともとは別の手技ですし、団体によってトリガーポイントの定義が違うということもあると思いますし、

他の方法との違いはともかく、トリガーポイントに効き目さえあれば大きな問題ではないかと思います。

 

現場での考察

ここからは個人的な考察に過ぎません。

科学では一個人の考えというのは最も証明力が弱いものとされています。

そのような前提で読んでいただければと思います。

肩のマッサージ

 

トリガーポイントの解消には複数の選択肢がある

怪我をしている選手は多くのトリガーポイントを抱えているかもしれませんが、トリガーポイントに直接アプローチしなくとも怪我や痛みが解決する事例はたくさんあるかと思います。

トリガーポイントは色々な方法で解消しうる可能性はあるのではないかと思います。

正解はひとつではないということです。

 

直接的なトリガーポイント療法でなくとも、他の方法で間接的にトリガーポイントに効くことも珍しくないのではないかと思います。

 

トリガーポイントでしか解消できない痛み

痛みの解消に必ずしもトリガーポイントにアプローチする必要はないと思うのですが、

トリガーポイントでしか説明がつかない痛みがあるのもまた事実ではないかと思います。

 

トリガーポイントに関する書籍には載っていないパターンで痛みがでることも何度も経験しています。

書籍はあくまで一般的なパターンに過ぎず、例外やバラツキが存在するのは当たり前のことだと思います。

 

そして、筋肉の奥底にトリガーポイントが眠っていることもあると思います。

表面的な触診だけでは届かない、検出できないために、見逃されてしまうような事例もあるのではないでしょうか。

 

どのように取り入れるのか?

トリガーポイントが毎回効果的とは限りません。

全てを解消できる万能な方法はなく、長所や短所があるわけです。

となると、いつ、どのように取り入れるのか?ということを考えておくことが役に立つと思います。

 

個人的な選択基準としては・・・

  • 筋肉へのマッサージは広く行われており、すでに他の専門家が試して効果がなかったケースでは他の方法を試す。
  • エクササイズやスタビリティの強化など他の方法が効果を発揮する場合はそれを行えばいい。
  • 筋肉の奥底にあるトリガーポイントには最初から届かない場合がある。
  • 念のため触診などのスクリーニングは最初にやっておいて損はない。

日本では筋肉へのマッサージやストレッチが広く行われているため、こういったアプローチではあまり効果が出なくなってしまっている痛みを抱えた人も珍しくないように思います。

 

まとめ

トリガーポイントに関するメカニズムはまだまだ解明されていないものも多くありますが、トリガーポイントへのアプローチによって痛みが減少することは珍しくなく、うまく取り入れることができれば十分に役に立つものであるかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Shah JP, Thaker N, Heimur J, Aredo JV, Sikdar S, Gerber L. Myofascial Trigger Points Then and Now: A Historical and Scientific Perspective. PM R. 2015;7(7):746-761. doi:10.1016/j.pmrj.2015.01.024
  2. Simons DG. New views of myofascial trigger points: etiology and diagnosis. Arch Phys Med Rehabil. 2008;89(1):157-159. doi:10.1016/j.apmr.2007.11.016
  3. Hubbard DR, Berkoff GM. Myofascial trigger points show spontaneous needle EMG activity. Spine (Phila Pa 1976). 1993;18(13):1803-1807. doi:10.1097/00007632-199310000-00015
  4. Sikdar S, Shah JP, Gebreab T, et al. Novel Applications of Ultrasound Technology to Visualize and Characterize Myofascial Trigger Points and Surrounding Soft Tissue. Arch Phys Med Rehabil. 2009;90(11):1829-1838. doi:10.1016/j.apmr.2009.04.015
  5. Turo D, Otto P, Shah JP, et al. Ultrasonic characterization of the upper trapezius muscle in patients with chronic neck pain. Ultrason Imaging. 2013;35(2):173-187. doi:10.1177/0161734612472408
  6. Shah JP, Danoff JV, Desai MJ, et al. Biochemicals associated with pain and inflammation are elevated in sites near to and remote from active myofascial trigger points. Arch Phys Med Rehabil. 2008;89(1):16-23. doi:10.1016/j.apmr.2007.10.018
  7. Shah JP, Phillips TM, Danoff JV, Gerber LH. An in vivo microanalytical technique for measuring the local biochemical milieu of human skeletal muscle. J Appl Physiol (1985). 2005;99(5):1977-1984. doi:10.1152/japplphysiol.00419.2005
  8. Kuan T-S, Hsieh Y-L, Chen S-M, Chen J-T, Yen W-C, Hong C-Z. The myofascial trigger point region: correlation between the degree of irritability and the prevalence of endplate noise. Am J Phys Med Rehabil. 2007;86(3):183-189. doi:10.1097/PHM.0b013e3180320ea7
  9. Niddam DM, Chan R-C, Lee S-H, Yeh T-C, Hsieh J-C. Central modulation of pain evoked from myofascial trigger point. Clin J Pain. 2007;23(5):440-448. doi:10.1097/AJP.0b013e318058accb
  10. Xu Y-M, Ge H-Y, Arendt-Nielsen L. Sustained nociceptive mechanical stimulation of latent myofascial trigger point induces central sensitization in healthy subjects. J Pain. 2010;11(12):1348-1355. doi:10.1016/j.jpain.2010.03.010
  11. Ge H-Y, Zhang Y, Boudreau S, Yue S-W, Arendt-Nielsen L. Induction of muscle cramps by nociceptive stimulation of latent myofascial trigger points. Exp Brain Res. 2008;187(4):623-629. doi:10.1007/s00221-008-1331-y
  12. Ortega-Santiago R, González-Aguado ÁJ, Fernández-de-Las-Peñas C, et al. Pressure pain hypersensitivity and referred pain from muscle trigger points in elite male wheelchair basketball players. Braz J Phys Ther. 2020;24(4):333-341. doi:10.1016/j.bjpt.2019.05.008
  13. Fernández-Carnero J, Fernández-de-Las-Peñas C, de la Llave-Rincón AI, Ge H-Y, Arendt-Nielsen L. Prevalence of and referred pain from myofascial trigger points in the forearm muscles in patients with lateral epicondylalgia. Clin J Pain. 2007;23(4):353-360. doi:10.1097/AJP.0b013e31803b3785
  14. Melzack R, Stillwell DM, Fox EJ. Trigger points and acupuncture points for pain: correlations and implications. Pain. 1977;3(1):3-23. doi:10.1016/0304-3959(77)90032-X
  15. Birch S. Trigger point--acupuncture point correlations revisited. J Altern Complement Med. 2003;9(1):91-103. doi:10.1089/107555303321222973

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