研究手法

経頭蓋磁気刺激(TMS)による神経筋機能の評価

筋肉の機能は脳神経などからの影響を受けることもあり、それを調べるために経頭蓋磁気刺激(TMS)が用いられることがあります。ここでその仕組みや論文を読む上での注意点などをメモとして残しておきたいと思います。

 

TMS(Transcranial magnetic stimulation)の仕組み

(Lepley et al 2020より引用)

電磁石によって生み出される磁場の変化によって電流を生じさせ、脳内の神経に刺激を与えることができます1・2

このときに特定の筋肉への反応を筋電図によって計測することで、脳神経と筋肉との関連を調べることができます。

(Groppa et al 2012より引用)

 

主な指標について

経頭蓋磁気刺激(TMS)に関する論文を読み解いていく時に最初に戸惑ったのが、それが何を計測しているのか?という指標次第で大きい方が良い、あるいは小さい方が良いと変わってくることです。

 

Active Motor Threshold(AMT)

これは対象となる筋肉が反応する最小の脳への刺激を計測しています。このためより少ない刺激で筋肉が反応すれば、その筋肉の神経の興奮度が高い可能性があると考えられるわけです

 

Motor Evoked Potentials(MEP)

これは脳に刺激を与えた時に出る筋肉の反応の強さであり、これは筋電図から読み取ったものです。筋肉により大きな反応があれば、脳からの刺激が筋肉に伝わりやすいことから神経の興奮度が高いと考えられるわけです2・4・5

 

IO curve (Slope)

Input-Output (IO) curveと呼ばれるもので、脳への刺激の程度が違えば筋肉への反応が変わってくる可能性があるため、それぞれの脳への刺激の強さと筋肉の反応をグラフにして可視化しているものです。このグラフの傾きなどの興味深い情報が得られますが、骨格筋の怪我に関する論文にはあまり出てくる印象はありませ。(単に私の論文の読み込みが甘いのかもしれません)

(Kemlin et 2019より引用)

 

Cortical Motor Representations(脳支配領域)

例えば脳の特定の場所が手足や顔の動きと結びついていると考えられており、脳の中のホムンクルスなどと呼ばれることがあります。

参照https://quizlet.com/513437572/cortical-homunculus-diagram/

これは脳の特定の部位に刺激を与えて筋肉が反応するかどうか?といった方法で検証することができるようです。

解釈が難しいところですが、より脳の広範囲に反応すればその筋肉は脳によってうまくコントロールされていると言えるかもしれません。

 

 

影響する要素?

置かれている環境や状況によって筋肉の反応が変わってくる可能性があります。

  • 姿勢によって神経の興奮度が変わってくる可能性があるようです
  • 足元が不安定な状況化では足の筋肉の反応が促進されることがあるようです
  • 頭の中でのイメージによって影響を受ける可能性があります。例えば頭の中で物を掴むイメージをしている最中には手の動作に関連する筋肉が反応しやすくなったりするわけです

多くの器具に関して言えることですが、比較可能性を保つためにはできるだけ同じ条件でテストするというのが大事ですね。

 

怪我との関連性について

筋肉の機能は脳神経などからの影響を受けることもあり、経頭蓋磁気刺激(TMS)によって皮質脊髄路のどこかに神経の働きを低下させている要因が存在しているのではないか?と可能性が考えられるわけです。

脳神経と脊髄

しかしながら、この検証方法の弱点としては特定の動作において実際に筋肉がどのように働いているのか?という点までは検証できないわけです。

このため筋力や筋電図といった筋肉をより直接的に評価する指標と合わせて確認することが大切になってきます。

 

 

<参考文献>

  1. Terao Y, Ugawa Y. Basic mechanisms of TMS. J Clin Neurophysiol. 2002;19(4):322-343. doi:10.1097/00004691-200208000-00006
  2. Groppa S, Oliviero A, Eisen A, et al. A practical guide to diagnostic transcranial magnetic stimulation: report of an IFCN committee. Clin Neurophysiol. 2012;123(5):858-882. doi:10.1016/j.clinph.2012.01.010
  3. Bodkin SG, Norte GE, Hart JM. Corticospinal excitability can discriminate quadriceps strength indicative of knee function after ACL-reconstruction. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2019;29(5):716-724.
  4. Lepley AS, Ly MT, Grooms DR, Kinsella-Shaw JM, Lepley LK. Corticospinal tract structure and excitability in patients with anterior cruciate ligament reconstruction: A DTI and TMS study. NeuroImage: Clinical. 2020;25:102157.
  5. McLeod MM, Gribble PA, Pietrosimone BG. Chronic Ankle Instability and Neural Excitability of the Lower Extremity. J Athl Train. 2015;50(8):847-853. doi:10.4085/1062-6050-50.4.06
  6. Chiou S-Y, Gottardi SEA, Hodges PW, Strutton PH. Corticospinal Excitability of Trunk Muscles during Different Postural Tasks. PLoS One. 2016;11(1). doi:10.1371/journal.pone.0147650
  7. Solopova IA, Kazennikov OV, Deniskina NB, Levik YS, Ivanenko YP. Postural instability enhances motor responses to transcranial magnetic stimulation in humans. Neurosci Lett. 2003;337(1):25-28. doi:10.1016/s0304-3940(02)01297-1
  8. Aono K, Kodama M, Masakado Y, Muraoka Y. Changes in cortical excitability during and just before motor imagery. Tokai J Exp Clin Med. 2013;38(1):1-6.

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