股関節の怪我のメカニズム

大腿筋膜張筋は悪影響を生み出す筋肉なのか?

大腿筋膜張筋

怪我をしている時には大腿筋膜張筋が過剰に働いていたり硬くなってしまうことから、怪我の原因としてこの筋肉をほぐすことも珍しくないかと思います。この筋肉をほぐすことで脚が動かしやすくなったりと様々なメリットがありますが、この筋肉が硬くなってしまうのには理由も考えられ本当に怪我の原因であるのか?については疑問が残るところです。

 

ポイント

  • 怪我をした時などには大腿筋膜張筋が過剰に働いたり硬くなってしまうことがあります。
  • 大腿筋膜張筋と怪我との因果関係は明らかにされていないようです。
  • 大腿筋膜張筋には股関節を安定させる役割もあり、この筋肉によって代償しているという可能性も考えられます。

 

大腿筋膜張筋が悪影響を与える理由

一般的に大腿筋膜張筋は身体に悪影響を及ぼすのではないか?と考えられています。

膝を痛めているランナー

  • 怪我をしている人達の大腿筋膜張筋は硬くなっていることが多い。
  • お尻の筋肉がうまく使えないために大腿筋膜張筋で代償していると考えられる。
  • 大腿筋膜張筋をほぐすことで脚が動かしやすくなる。

というように、怪我など身体に異常がある時には大腿筋膜張筋の硬さが目立つわけで、身体に悪影響を与えていると考えるのが自然な流れかと思います。

 

大腿筋膜張筋と怪我の関係

大腿筋膜張筋が直接の怪我の原因であることを明らかにした研究は少ないです。

股関節痛

  • 股関節の怪我をしている人達の大腿筋膜張筋の大きさに重要な変化はみられなかった
  • 股関節の怪我をしている人達は大腿筋膜張筋が衰えている傾向はあまり見られず、むしろ怪我をしている場合には大腿筋膜張筋が大きく発達している場合もあったそうです
  • 変形性股関節症を抱えている人達は大腿筋膜張筋があまり発達していない傾向にあったそうです
  • 腸脛靭帯炎において、お尻の筋肉の活動量が低下し大腿筋膜張筋の活動量が増える傾向があるようです

このように大腿筋膜張筋と怪我の関係性を調べた研究報告はいくつかありますが、怪我との因果関係は明らかにされていません。

怪我の原因になっている可能性もありますが、反対に怪我した部位をかばうために大腿筋膜張筋の活動量が増えたり硬くなったりするという可能性も捨て切れないかと思います。

 

大腿筋膜張筋と膝の安定性

大腿筋膜張筋は腸脛靭帯につながっており、大腿筋膜張筋の働きによって膝のサポートする可能性があると考えられています

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股関節の内旋時に大腿筋膜張筋の活動量が増加することが報告されています

このため膝が内側に入ってしまう時などに膝の安定性を高める可能性があり、大腿筋膜張筋は前十字靭帯への負荷を減らせるのではないか?という意見もあるようです

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これらはあくまで理論上の話であり、大腿筋膜張筋によってどこまで膝の安定性に貢献するのかは疑問が残ります。

大腿筋膜張筋を鍛えることで怪我予防できるという研究結果は現時点では見つけることができませんでした。

 

大腿筋膜張筋が良い影響を与える事例

大腿筋膜張筋は一般的に悪影響を与えると考えられていますが、大腿筋膜張筋を鍛えたところ痛みが減ったという事例もあります。

片足バランス

股関節に痛みを抱えていらっしゃた方のケースですが、一般的にほぐしたほうがいいとされている大腿筋膜張筋をあえて鍛えてみたところ股関節の痛みが軽減しました。

大腿筋膜張筋を鍛えることで片足立ちなどのバランスを改善する可能性があるため、股関節の不安定さによって痛みが出ているケースなどでは試してみる価値があるかもしれません。

 

まとめ

怪我をしている時には大腿筋膜張筋が硬くなってしまうことから、怪我の原因としてこの筋肉をほぐすことも珍しくないかと思いますが、大腿筋膜張筋にも股関節などを安定させる役割があることを知ることで選択肢が広がるかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

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