疲労骨折は一般的に練習のし過ぎによって引き起こされていると考えられていますが、それだけでなく様々な要因の影響を受けて骨の状態が変わってきます。そこには運動や栄養、睡眠などといった生活習慣に関わっているものも多く、どのような考え方をもっているのか?というような思考も影響している可能性があります。疲労骨折の対策には練習量だけでなく、幅広い視点でのアプローチが役に立つかもしれません。
ポイント
- ウェイトトレーニングには骨を強くする効果があります
- 食事や睡眠が少ないことも疲労骨折の原因になります
- 心理的なストレスやホルモンバランスも疲労骨折に関係しています
生活習慣と疲労骨折
骨の強さには色々な要素が関わっていて、練習量だけでなく栄養・睡眠などの生活習慣も影響していると考えられています。
ここで314名の疲労骨折をしたことがある選手と健康な選手100名へのアンケート調査があります1。
(Nussbaum et al 2019より引用)
その結果、疲労骨折をしている選手に次の様な傾向がみられたそうです。
- ウェイトトレーニングに取り組んでいる頻度が少ない傾向にある
- 食事が少ない傾向にある
- 睡眠が少ない傾向にある
- よりストレスを感じている傾向にある
これは疲労骨折と生活習慣に一定の関係性があることを示していると思います。
栄養や睡眠・ホルモンなどによる影響
栄養や睡眠が十分に確保されていないと回復能力が低下してしまう可能性があります。
- 栄養状態に関してもたくさんの栄養素が関わっているのですが、よく言われるものとしてはやはり骨をつくるのに大切なミネラルやビタミンDなどの摂取不足などがあります2。
- 過度な体重制限や睡眠不足、心理的なストレスなどによるホルモンのバランスの乱れなどが骨の生成に影響を及ぼし、疲労骨折のリスクとなっています3。
- 特に女性アスリート特有の悩みにこのような問題が起こりやすいということも報告されているので3、しっかりとした体調管理が大切になるかと思います。
このように栄養や睡眠などの日々の生活習慣が骨の生成や、練習でダメージを負った骨の回復などにも影響しています。これらの生活習慣や思考をいい方向に変えていくことも疲労骨折の予防につながる可能性があるかと思います。
適度な運動は骨を強くするが
単なる練習量だけではなく、運動に関する習慣・思考も疲労骨折に関係してると考えられます。
一般的に練習のしすぎで疲労骨折が発生しますが、練習は多ければ多いほうがいいとか、休息は最小限にというような思考も少なからず影響しているのではないでしょうか。
(Mandell et al 2017より引用)
また、骨も刺激に応じて強くなる性質があり、ウェイトトレーニングなどに取り組むことによって骨が強くなる可能性があります。このため身体のコンディションを整えるためのトレーニングを取り入れるといった習慣があれば、骨に適切な刺激を与えることができて疲労骨折のリスクが下がるかと思います4。
そして、運動の種類なども重要で同じ様な練習を続けていれば負荷がうまく分散されずに、ダメージが1箇所に蓄積されやすくなってしまうかと思います。色々な種類の運動を取り入れて、負荷を分散しつつ、豊富な運動パターンを学習していくことも役に立つといわれています。
このようにどのような運動をするのか?どのように身体をケアしていくのか?といった習慣や思考も疲労骨折に関係しているのではないでしょうか。
まとめ
疲労骨折には様々な要因がありますが、生活習慣に関わる要因もあるため普段の意識から変えていくことが疲労骨折を予防するのに役に立つのではないでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
<参考文献>
- Nussbaum ED, Bjornaraa J, Gatt CJ. Identifying Factors That Contribute to Adolescent Bony Stress Injury in Secondary School Athletes: A Comparative Analysis With a Healthy Athletic Control Group. Sports Health. 2019;11(4):375-379.
- Miller TL, Best TM. Taking a holistic approach to managing difficult stress fractures. Journal of Orthopaedic Surgery and Research. 2016;11(1):98.
- Mandell J, Khurana B, Smith S, Mandell JC, Smith SE. Stress fractures of the foot and ankle, part 1: biomechanics of bone and principles of imaging and treatment. Skeletal Radiology. 2017;46(8):1021-1029.
- Rauh MJ, Macera CA, Trone DW, Shaffer RA, Brodine SK. Epidemiology of Stress Fracture and Lower-Extremity Overuse Injury in Female Recruits: Medicine & Science in Sports & Exercise. 2006;38(9):1571-1577.