肩の痛み 整体

整体での肩甲骨はがしの効果について

肩甲骨剥がしの施術

整体などで肩甲骨はがしというものを目にすることがあるかと思います。

肩甲骨を整えたほうがいいと耳にすることもあり、何だか気になるという声もあるので、肩甲骨ほぐしの効果やメリット・デメリットなどをご紹介していきます。

 

肩甲骨はがしとは?

肩甲骨剥がしは、肩甲骨周りをほぐす手技全般のことをいいます。

 

特定の手技を指すような専門用語ではなく、商品販売の宣伝文句として使われる言葉であるかと思います。

「肩甲骨のモビライゼーション」などと専門用語を言っても伝わりにくいのですが、「肩甲骨はがし」というとわかりやすくてウケがいいという商業的な側面があります。

そして、肩甲骨の視覚的なインパクトも強いのもウケやすい理由のひとつではないかと思います。

肩甲骨剥がし

施術風景をパッとみると、何だか凄く効きそうだと感じる人も多いのではないでしょうか。

痛みを伴うようなマッサージとは違い、リラックスさせるような気持ちの良い施術であるため、満足度が高くなるのも頷けます。

 

肩甲骨はがしのメリット

ここからは技術的な側面から肩甲骨のメリットについてご紹介していきたいと思います。

 

肩周りの可動域向上

肩甲骨剥がしをすることで肩甲骨周りが軽くなり、肩甲骨の動きがスムーズに改善していきます。

肩甲骨を思うように動かせないといった人達も多く、カチカチに固まってしまっていることにすら気がついていない人も珍しくありません。

手を挙げる動作

肩甲骨は周辺の関節と連動している部分が大きく、肩甲骨を整えることが周辺の部位の動きにも影響を与えます。

肩甲骨の動きが良くなることで、肩周りや腕の可動域が良くなりスムーズに動かしやすくなります。

ピッチャーの肘

例えば、肩甲骨の動きが良くなると野球の投球動作における肘の負担が減るといった研究結果があります

特にスポーツにおいては肩甲骨の動きがパフォーマンスを大きく左右することも珍しくありません。

 

姿勢の改善効果

猫背

肩甲骨周りをほぐすことで姿勢改善効果も期待できます。肩甲骨周りの筋肉が姿勢に影響を及ぼしている可能性があるわけです。

 

肩甲骨はがしのデメリット

一定の人気がある肩甲骨はがしですが、その効果には限界もあります。

 

特別優れた効果があるわけではない

ストレッチやマッサージなど他の方法と比べた時に、肩甲骨はがしが特別優れた効果を発揮するわけではないと思います。

例えば、四十肩などを抱えている人に肩甲骨へのアプローチと肩のストレッチを比べた研究では、ストレッチと大きな違いがみられなかったことが報告されています

私がアメリカのスポーツ現場にいた時の経験ですが、大学野球やメジャーリーグの選手の肩ケアのルーティーンに肩甲骨はがしは入っていないことが多く、どちらかといえば肩のストレッチが多く取り入れられている印象を受けています。

大人数のチームという環境の限られた時間で肩周り全般をバランスよくほぐすとなると、ストレッチなどの手技を交えていったほうが効率的なのかもしれません。

時間に余裕があるのならば、プラスアルファで肩甲骨周りをしっかりとほぐすことも役に立つかと思います。

 

怪我の改善には限界がある

疲労回復やリラクゼーション、コンディションを整える一環として行うのが肩甲骨はがしではないかと思います。

しかし、怪我の根本解決を図るのならば、肩甲骨はがしだけでは物足りないと思います。

例えば、肩のインピンジメントの痛みを抱えている人の肩甲骨をほぐしても痛みを軽減する効果はみられなかったとする研究結果などがあります4。

肩甲骨はがしに痛みを軽減する効果がないとは言いませんが、なんでもかんでも肩甲骨をほぐせばいいわけではありません。特定の方法だけで全てが解決するわけではありません。

肩の状態をしっかりと評価した上で、適切な方法を選ぶことが大事になってきます。

 

肩甲骨とスポーツ障害との関連性

肩甲骨はスポーツ障害に関係していることが多々ありますが、その関係性について研究結果を見ていきましょう。

 

肩甲骨の運動異常と怪我のリスク

肩甲骨の機能は肩の怪我のリスクを多少なりとも高める可能性があるようです。

  • 肩甲骨の運動異常は将来の肩の怪我のリスクを43%増加させるという研究結果があります5。

  • 2年間の追跡調査を行った研究では怪我をした人たちは肩甲骨の上方回旋が減少している傾向があるが、それ以外に決定的な特徴はみられなかったそうです6。

  • 肩甲骨の運動異常を抱えていた人で肩の怪我をしたのは約25%で、肩甲骨の運動異常を抱えていない人とわずかな違いしかみられなかったという研究結果もあります7。

  • スポーツに取り組むことで利き腕の状態が変化するため、肩甲骨に多少の左右差が生じるのは自然なことのようです8。

このように肩甲骨の機能を改善することは大事なのですが、これだけで全てが解決するほど万能なものではありません。

 

可動域が大きいほうがいいのか?

肩周りの可動域をできるだけ大きくしたいという要望を頂くことがたくさんありますが、ここには注意が必要です。

ある研究で肩の可動域が小さ過ぎても大き過ぎても怪我のリスクが高まることが報告されています9。

何事もバランスが重要で、やり過ぎてしまうと怪我につながってしまう可能性があるわけです。

ピッチング時の最大外旋位

(Aguinaldo and Chambers 2009より引用)

特にスポーツにおける投球動作などは想像以上に肩周りの関節が動くわけでして、柔らかすぎると肩の負担につながるほど激しい動きになってしまうことがあります。

肩の外旋の可動域とピッチャーの球速・怪我のリスク

 

そして、肩甲骨の柔軟性と安定性はトレードオフ関係にあると言われており、肩甲骨が柔らかすぎると関節の安定性を失ってしまい、肩のダメージへとつながります。

このため肩甲骨を柔らかくすると同時に、肩甲骨周りの筋肉を鍛えてバランスをとることが大事になってきます。

肩のトレーニング

某メジャーリーグ球団のトレーナーさんによると、柔軟性が高ければ高いほどいいわけではない、筋力が強ければ強いほどいいわけではない、そのバランスをとることが肩の怪我を減らす極意だとか・・・。

肩の痛みの整体施術について

 

まとめ

肩甲骨剥がしは可動域改善などの一定の効果があることが多く、インパクトもあるので人を集めやすい目玉商品であると思います。

しかし、あくまで肩甲骨剥がしはリラクゼーションやコンディションを整えることを目的としたものであって、怪我の根本解決を図るのならば少し物足りないところがあるのではないでしょうか。

 

<参考文献>

  1. Itami Y, Mihata T, McGarry MH, et al. Effect of Increased Scapular Internal Rotation on Glenohumeral External Rotation and Elbow Valgus Load in the Late Cocking Phase of Throwing Motion. Am J Sports Med. 2018;46(13):3182-3188.
  2. Fani M, Ebrahimi S, Ghanbari A. Evaluation of scapular mobilization and comparison to pectoralis minor stretching in individuals with rounded shoulder posture: A randomized controlled trial. J Bodyw Mov Ther. 2020;24(4):367-372. doi:10.1016/j.jbmt.2020.07.021
  3. Duzgun I, Turgut E, Eraslan L, Elbasan B, Oskay D, Atay OA. Which method for frozen shoulder mobilization: manual posterior capsule stretching or scapular mobilization? J Musculoskelet Neuronal Interact. 2019;19(3):311-316.
  4. Aytar A, Baltaci G, Uhl TL, Tuzun H, Oztop P, Karatas M. The effects of scapular mobilization in patients with subacromial impingement syndrome: a randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial. J Sport Rehabil. 2015;24(2):116-129. doi:10.1123/jsr.2013-0120
  5. Hickey D, Solvig V, Cavalheri V, Harrold M, Mckenna L. Scapular dyskinesis increases the risk of future shoulder pain by 43% in asymptomatic athletes: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2018;52(2):102-110.
  6. Struyf F, Nijs J, Meeus M, et al. Does Scapular Positioning Predict Shoulder Pain in Recreational Overhead Athletes? Int J Sports Med. 2014;35(01):75-82.

  7. Hogan C, Corbett J-A, Ashton S, Perraton L, Frame R, Dakic J. Scapular Dyskinesis Is Not an Isolated Risk Factor for Shoulder Injury in Athletes: A Systematic Review and Meta-analysis. Am J Sports Med. Published online November 19, 2020:0363546520968508.

  8. Oyama S, Myers JB, Wassinger CA, Daniel Ricci R, Lephart SM. Asymmetric Resting Scapular Posture in Healthy Overhead Athletes. J Athl Train. 2008;43(6):565-570.

  9. Tooth C, Gofflot A, Schwartz C, et al. Risk Factors of Overuse Shoulder Injuries in Overhead Athletes: A Systematic Review. Sports Health. 2020;12(5):478-487. doi:10.1177/1941738120931764
  10. Aguinaldo AL, Chambers H. Correlation of Throwing Mechanics With Elbow Valgus Load in Adult Baseball Pitchers. The American Journal of Sports Medicine. 2009;37(10):2043-2048. doi:10.1177/0363546509336721

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