肩の怪我のメカニズム

肩甲骨の安定性の評価 Scapular Retraction Test

肩甲骨の柔軟性や可動性は比較的わかりやすいけれども、肩甲骨の安定性というのは意外と評価しにくかったりします。肩甲骨の安定性を評価するために用いられる方法のひとつがScapular Retraction Testと呼ばれるものです。

 

Scapular Retraction Test

肩甲骨の安定性が足りているかどうかを評価する方法で、教科書に載るようなわりと知られている方法です。

 

評価方法

肩甲骨を押さえた時とそうでない時の筋力発揮を比べます。

第三者が肩甲骨を支えた時に筋力発揮が強くなるならば、肩甲骨の機能が足りていないんじゃないか?と評価できるのではないかという発想です。

 

メカニズム

なぜ第三者が肩甲骨を支えることで筋力発揮をしやすくなるのか?のメカニズムには様々な理由があると思います。

(Kibler et al 2006より引用)

  • 肩甲骨の位置の違いによって筋力発揮のしやすさが変わるという可能性があります。肩甲骨の内転・外転などポジションの違いによって筋力が変わるという研究結果が報告されています2・3
  • 第三者が肩甲骨を支えて安定性が保たれているから筋力発揮がしやすくなる可能性があります
  • 人との相性によるもの。この人だから力が出る!この人だから力が出なくなるわ〜、という不思議な現象があります。科学的ではないけれどもこういった方法にはそれなりに歴史があったりします。

いずれにしても肩甲骨にアプローチして筋力発揮が改善されることは、肩甲骨の機能を高めたほうがいい可能性があります。

 

肩甲骨テストの正確性

肩甲骨の機能評価という意味合いが強いかと思いますが、念のためテストの正確性に関する研究を調べてみました。

正確性・精度

  • 肩の怪我を抱えているかどうかに関わらず肩甲骨の筋力発揮が変化していた1・4
  • ローテーターカフの腱板断裂の評価に使えるのでは?とする意見もあるようで、ローテーターカフの腱板断裂に対する感度(Sensitivity)、特異度(specificity)がともに約80%という研究もあるようです
  • テスト結果が肩の怪我の有無にあまり左右されていない研究も少なくないことから、怪我の診断には他の方法を使ったほうがいいのでは?と個人的には思います。

科学的根拠というよりも、あくまで直感的に訴えかけるのがこのテスト方法の魅力ではないかと思います。

 

バリエーション

このテスト方法には様々なバリエーションがあるようで、仕組みを理解することで腕の位置を変えて様々な筋肉やポジションで使うことができるかと思います。

(Merolla et al 2010より引用)

肩甲骨のポジションが変わることで筋力発揮が変わる可能性がある、肩甲骨を支えることで筋力発揮が変わる可能性がある、

という点を理解することでバリエーションが広がりそうです。

 

まとめ

肩甲骨のポジションや安定性が変わることで筋力発揮が変わる可能性があり、これが肩甲骨の安定性を評価するひとつの方法となっています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Kibler WB, Sciascia A, Dome D. Evaluation of Apparent and Absolute Supraspinatus Strength in Patients with Shoulder Injury Using the Scapular Retraction Test. Am J Sports Med. 2006;34(10):1643-1647.
  2. Matthews PA, Scott M. Altering scapular position reduces isometric shoulder strength. Shoulder & Elbow. 2013;5(4):266.
  3. Smith J, Dietrich CT, Kotajarvi BR, Kaufman KR. The effect of scapular protraction on isometric shoulder rotation strength in normal subjects. J Shoulder Elbow Surg. 2006;15(3):339-343.
  4. Tate AR, McClure PW, Kareha S, Irwin D. Effect of the Scapula Reposition Test on shoulder impingement symptoms and elevation strength in overhead athletes. J Orthop Sports Phys Ther. 2008;38(1):4-11.
  5. Khazzam M, Gates ST, Tisano BK, Kukowski N. Diagnostic Accuracy of the Scapular Retraction Test in Assessing the Status of the Rotator Cuff. Orthop J Sports Med. 2018;6(10).
  6. Merolla G, De Santis E, Campi F, Paladini P, Porcellini G. Infraspinatus scapular retraction test: a reliable and practical method to assess infraspinatus strength in overhead athletes with scapular dyskinesis. J Orthop Traumatol. 2010;11(2):105-110.

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