膝の怪我のメカニズム

膝のQ角は怪我の原因になりうるのか?

一般的に膝のQ角が大きいことで、膝の負荷が高まりやすく怪我に繋がると考えられています。

そこで膝のQ角が大きいことで身体にどのような影響が考えられるのか?そのメカニズムについてご紹介していきたいと思います。

 

ポイント

  • Q角が大きいことで膝の筋力発揮が小さくなる傾向にあるようです。
  • Q角が大きくてもランニング動作などの負荷が著しく増えるわけではないようです。
  • Q角と怪我の発生率は微妙なところで、大きな怪我のリスクではないものの注意は必要です。

 

Q角(Qアングル)の計測方法

どの文献を引用するかで微妙に違いますが、膝のQ角は男性の平均が約14°で女性の平均が約16°となっており、女性のほうがやや大きい傾向にあります

そして、Q角が15〜20°では大きすぎると考えられているようです

(Heiderscheit et al 2000より引用)

色々な計測方法がありますが、一般的には膝蓋骨を中心に脛骨粗面とASISを結んだ角度で算出します

(Merchant et al 2020より引用)

 

筋力などへの影響について

Q角は筋力発揮が弱まる可能性があります。

  • Q角が大きいほど膝の筋力が低い傾向にあることが報告されています
  • 別の研究ではQ角が大きいほど膝が生み出すパワーが小さい傾向にあることが報告されています

このように膝のQ角が大きいことで力が働く方向が変化し、力を効率的に伝えにくくなっているのかもしれません。

 

膝の動きへの影響について

Q角が大きくても歩行動作やランニング動作にそこまで大きな違いはないのかもしれません。

  • Q角の違いによってランニング等における足部のプロネーションや脛骨の内旋などの最大値に大きな変化はみられなかったことが報告されています4・5
  • 一方でQ角の違いによって脛骨内旋などのタイミングが違ってくることが報告されています

少し意外な結果ではありますが、このようなデータも出ているようです。

 

膝への負荷への影響について

興味深いことに膝のQ角が大きいことで膝の負荷が大きくなるとは限らないようです。

(Park and Stefanyshyn 2011より引用)

ランニング動作や片足スクワットなどを解析したところ、Q角が大きくても膝関節の外反トルクが増えるわけではないことが報告されています6・7

  • 膝関節の外転トルクが増えないメカニズムとして、上記の図のようにQ角が大きいとモーメントアームが小さくなり、膝の負荷が小さく算出されるようです。
  • 一方で膝のQ角が大きいことで、軸をまっすぐに保ちにくい可能性が考えられます。これにより膝周りの不安定さが生まれるかもしれません。

このようにQ角は動作解析上の数値には大きな影響を与えないかもしれませんが、これだけでは実際に怪我につながるのかどうかはわかりません。

 

膝の怪我への影響について

Q角と怪我の発生率もあわせて確認するとより強い証明力が得られるかもしれません。

ということで怪我の発生状況を調べた研究をみていきます。

 

Q角と膝の痛みの発生率

Q角と怪我の発生率は微妙な関係にあるようです。

膝の痛み

  • 膝の痛みを抱えている人は膝のQ角が大きかったことが報告されています
  • Q角の大きさは膝の痛みの度合いとの関連性が弱いことが報告されています
  • Q角は将来の膝の痛みとは関係していないことが報告されています10

このように複数の研究結果をみてみるとQ角と怪我の発生率は微妙なようです。

怪我のリスクと関係ないとは言いませんが、怪我のリスクが著しく高くなるとも言えないようです。

 

膝蓋骨の脱臼

Q角が大きいことで膝蓋骨を外側に引っ張る力が大きくなるという考え方もあり、膝蓋骨の脱臼のリスクが考えられます。

しかし、意外にもQ角が大きいことで膝蓋骨の脱臼などにつながるというような科学的根拠は少ないようです。

膝蓋骨の脱臼

  • Q角が大きいグループに膝蓋骨のポジションの変化などはみられなかったことが報告されています11・12
  • 別の研究ではQ角が大きいことは膝蓋骨を外側ではなく、内側のポジションに変化させていたことが報告されています13
  • Q角が大きいグループは外側広筋の発達が小さい傾向にあり14、膝蓋骨を外側に引っ張る力が弱い可能性が示唆されています。
  • 実際に膝蓋骨の脱臼を起こした人達を調べたところ、Q角は小さい傾向にあったことが報告されています15
  • そもそも膝蓋骨が外側に位置しているとQ角の計測方法の関係上、Q角がより小さく算出されるという矛盾を抱えています。これが研究結果に影響を与えている可能性もあるかもしれません。

このように膝のQ角は膝蓋骨の脱臼にそこまで影響を及ぼしているわけでもないのかもしれません。

 

軟骨の怪我について

膝のQ角が大きいことで軟骨への負荷が大きくなる可能性があります。

変形性膝関節症

  • 膝のQ角が大きいことで膝への圧力が高くなることが報告されています16・17
  • 軟骨の量とQ角の関係がみられたとする研究があり18、一方で軟骨の量とQ角の関係性は見られなかったという研究報告もあります11

必ずしも変形性膝関節症などの怪我につながるかはわかりませんが、膝のQ角が大きいことで膝を圧迫するような負荷がかかりやすくなる可能性は十分に考えられるのではないでしょうか。

 

より怪我につながりやすい場合

先ほどの研究データは主にベッドで寝た状態で膝のQ角を計測していました。

一方でランニングやスクワットなど動きの中で膝のQ角が大きくなる(膝が内側に入る)ことは、怪我のリスクが大きくなると考えられています19

膝の外反

(Hewett et al 2005より引用)

これを膝のQ角と呼ぶかどうかは別の話ですが・・・。

膝の外反と前十字靭帯損傷について

 

まとめ

膝のQ角の違いは身体に影響を与える可能性があり、そこまで大きな怪我のリスクではないものの注意は必要かと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Merchant AC, Fraiser R, Dragoo J, Fredericson M. A reliable Q angle measurement using a standardized protocol. Knee. 2020;27(3):934-939. doi:10.1016/j.knee.2020.03.001
  2. Saç A, Taşmektepligil MY. Correlation between the Q angle and the isokinetic knee strength and muscle activity. Turk J Phys Med Rehabil. 2018;64(4):308-313. doi:10.5606/tftrd.2018.2366
  3. Binder D, Brown-Cross D, Shamus E, Davies G. Peak torque, total work and power values when comparing individuals with Q-angle differences. Isokinetics and Exercise Science. 2001;9(1):27-30. doi:10.3233/IES-2001-0060
  4. Heiderscheit BC, Hamill J, Caldwell GE. Influence of Q-angle on lower-extremity running kinematics. J Orthop Sports Phys Ther. 2000;30(5):271-278. doi:10.2519/jospt.2000.30.5.271
  5. Kernozek TW, Greer NL. Quadriceps angle and rearfoot motion: relationships in walking. Arch Phys Med Rehabil. 1993;74(4):407-410.
  6. Park S-K, Stefanyshyn DJ. Greater Q angle may not be a risk factor of patellofemoral pain syndrome. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2011;26(4):392-396. doi:10.1016/j.clinbiomech.2010.11.015
  7. Pantano KJ, White SC, Gilchrist LA, Leddy J. Differences in peak knee valgus angles between individuals with high and low Q-angles during a single limb squat. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2005;20(9):966-972. doi:10.1016/j.clinbiomech.2005.05.008
  8. Lankhorst NE, Bierma-Zeinstra SMA, van Middelkoop M. Factors associated with patellofemoral pain syndrome: a systematic review. Br J Sports Med. 2013;47(4):193-206. doi:10.1136/bjsports-2011-090369
  9. Almeida GPL, Silva AP de MCCE, França FJR, Magalhães MO, Burke TN, Marques AP. Q-angle in patellofemoral pain: relationship with dynamic knee valgus, hip abductor torque, pain and function. Rev Bras Ortop. 2016;51(2):181-186. doi:10.1016/j.rboe.2016.01.010
  10. Neal BS, Lack SD, Lankhorst NE, Raye A, Morrissey D, van Middelkoop M. Risk factors for patellofemoral pain: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2019;53(5):270-281. doi:10.1136/bjsports-2017-098890
  11. Tsakoniti AE, Mandalidis DG, Athanasopoulos SI, Stoupis CA. Effect of Q-angle on patellar positioning and thickness of knee articular cartilages. Surg Radiol Anat. 2011;33(2):97-104. doi:10.1007/s00276-010-0715-4
  12. Biedert RM, Warnke K. Correlation between the Q angle and the patella position: a clinical and axial computed tomography evaluation. Arch Orthop Trauma Surg. 2001;121(6):346-349. doi:10.1007/s004020000239
  13. Sheehan FT, Derasari A, Fine KM, Brindle TJ, Alter KE. Q-angle and J-sign: indicative of maltracking subgroups in patellofemoral pain. Clin Orthop Relat Res. 2010;468(1):266-275. doi:10.1007/s11999-009-0880-0
  14. Tsakoniti AE, Stoupis CA, Athanasopoulos SI. Quadriceps cross-sectional area changes in young healthy men with different magnitude of Q angle. J Appl Physiol (1985). 2008;105(3):800-804. doi:10.1152/japplphysiol.00961.2007
  15. Sanfridsson J, Arnbjörnsson A, Fridén T, Ryd L, Svahn G, Jonsson K. Femorotibial rotation and the Q-angle related to the dislocating patella. Acta Radiol. 2001;42(2):218-224.
  16. Bruns J, Volkmer M, Luessenhop S. Pressure distribution at the knee joint. Influence of varus and valgus deviation without and with ligament dissection. Arch Orthop Trauma Surg. 1993;113(1):12-19. doi:10.1007/BF00440588
  17. Yoo YH, Lee SJ, Jeong SW. Effects of quadriceps angle on patellofemoral contact pressure. J Vet Sci. 2020;21(5):e69. doi:10.4142/jvs.2020.21.e69
  18. Ekim AA, Hamarat H, Musmul A. Relationship Between Q-Angle and Articular Cartilage in Female Patients With Symptomatic Knee Osteoarthritis: Ultrasonographic and Radiologic Evaluation. Arch Rheumatol. 2017;32(4):347-352. doi:10.5606/ArchRheumatol.2017.6145
  19. Silva D de O, Briani RV, Pazzinatto MF, et al. Q-angle static or dynamic measurements, which is the best choice for patellofemoral pain? Clin Biomech (Bristol, Avon). 2015;30(10):1083-1087. doi:10.1016/j.clinbiomech.2015.09.002

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