股関節の怪我のメカニズム

骨盤の動き次第で身体の負担が増えるかもしれない

骨盤の動きが大切だと耳にすることは珍しくないかと思います。骨盤の安定性が確保されていないと身体への負荷を高める可能性があると考えられており、特にお尻の筋肉が弱いことが原因であると一般的に考えられているようです。しかし、骨盤が不安定になるのは必ずしもお尻の筋肉だけとは限らず他にも原因が考えられます。

 

ポイント

  • 骨盤が落ちることで膝などに負担がかかるりやすくなります
  • 骨盤が落ちることはお尻の筋肉が原因であると一般的には考えられています
  • しかし、お尻の筋肉と骨盤の関係は限定的という研究結果も少なくありません

 

骨盤が落ちることで他の部位にも負担がかかる

骨盤が下がることで身体の他の部位にもより負担がかかってしまう可能性があります。このため骨盤周りの安定性が大切であると考えられています。

次の図は前十字靭帯断裂した瞬間ですが、骨盤が落ち身体が傾いていることが確認できるかと思います。

骨盤の位置の変化と膝への負担

(Hewett and Myer 2011より引用)

  • 具体的には骨盤が下がることで重心が傾き、物理的な優位性を少し失ってしまうため膝や股関節への負担が増す可能性があるようです2・3
  • 歩行時の骨盤の動きと変形性膝関節症には関係があるようで、特に膝が内反している人達において骨盤が下がることと痛みの程度に相関関係があったそうです
  • 骨盤が下がることだけでなく高すぎることも怪我のリスクになりうるという報告があります

 

こういったことから骨盤を安定させて適切なポジションを維持できるようにすることが大切になってくるかと思います。

 

片足立ちに関与する筋肉について

片足立ちの骨盤の動きはお尻の筋肉だけでなく様々な筋肉によって支えられています。

 

片足立ちによる簡易的な評価方法

一般的にはお尻の筋肉が重要であると考えられており、次の図のように片足立ちをしている時に軸足と反対側の骨盤が下がってしまう場合には中臀筋などのお尻の筋肉が弱っている可能性があります(これをトレンデレンブルグ徴候などと言います)。

トレンデレンブルグ兆候
参照https://www.opt.net.au/trendelenburg-gait/

しかし、骨盤が下がってしまうのはお尻の筋肉だけが原因ではありません。

 

片足立ちとお尻の筋肉の関係を調べた研究

  • 9名を対象とした実験ではお尻の筋肉の活動を抑制するための注射を行って、お尻の筋肉と片足立ちの影響を調べています。この実験で股関節外転の筋力が約半分になったのにもかかわらず片足立ちをしている時の骨盤の動きに大きな変化は生じなかったそうです
  • ある研究では同じ要領で歩行動作への影響を調べていますが、股関節外転の筋力が約半分になったにもかかわらず歩行動作に大きな変化は生じなかったそうです
  • さらに別の研究では中臀筋と片足立ちにおける骨盤の動きの相関関係は低いという報告があります。わずかな骨盤の動きだけではあまり精度が高くない傾向にあるようで、少なくとも4°以上の骨盤の動きがないとお尻の筋肉との関係性は弱くなるようです

このようにお尻の筋肉と片足立ちの骨盤の動きの関係には限界がありますが、片足立ちの時に骨盤が安定していない場合にはお尻の筋肉を調べてみるというようにあくまで簡易的に調べる方法としては価値はあるかと思います。

 

まとめ

骨盤が落ちることで膝や股関節などの負担が増える可能性があり、この場合にはお尻の筋肉だけが原因とは限らずバランス良く身体を整えていくことが大切になってきます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Hewett TE, Myer GD. The mechanistic connection between the trunk, hip, knee, and anterior cruciate ligament injury. Exerc Sport Sci Rev. 2011;39(4):161-166.
  2. Takacs J, Hunt MA. The effect of contralateral pelvic drop and trunk lean on frontal plane knee biomechanics during single limb standing. J Biomech. 2012;45(16):2791-2796.
  3. Dunphy C, Casey S, Lomond A, Rutherford D. Contralateral pelvic drop during gait increases knee adduction moments of asymptomatic individuals. Human Movement Science. 2016;49:27-35.
  4. Nie Y, Wang H, Xu B, Zhou Z, Shen B, Pei F. The Relationship between Knee Adduction Moment and Knee Osteoarthritis Symptoms according to Static Alignment and Pelvic Drop. BioMed Research International. Published online December 27, 2019:1.
  5. Leppänen M, Rossi MT, Parkkari J, et al. Altered hip control during a standing knee-lift test is associated with increased risk of knee injuries. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2020;30(5):922-931.
  6. Kendall KD, Patel C, Wiley JP, Pohl MB, Emery CA. Steps Toward the Validation of the Trendelenburg Test: The Effect of Experimentally Reduced Hip Abductor Muscle Function on Frontal Plane Mechanics. Clin J Sport Med. 2013;23(1):7.
  7. Pohl MB, Kendall KD, Patel C, Wiley JP, Emery C, Ferber R. Experimentally Reduced Hip-Abductor Muscle Strength and Frontal-Plane Biomechanics During Walking. J Athl Train. 2015;50(4):385-391.

  8. Kendall KD, Schmidt C, Ferber R. The Relationship Between Hip-Abductor Strength and the Magnitude of Pelvic Drop in Patients With Low Back Pain. Journal of Sport Rehabilitation. 2010;19(4):422-435.

  9. Bailey R, Selfe J, Richards J. The role of the Trendelenburg Test in the examination of gait. Physical Therapy Reviews. 2009;14(3):190-197.

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