脳神経

痛みの脳科学〜睡眠不足と痛みの関係

最近では痛みに関する脳科学がトレンドになりつつありますが、睡眠不足も痛みの感じ方に変化を及ぼす可能性が指摘されています。

ここで睡眠不足が神経の働きにどのような影響を及ぼすのか、怪我のリスクにどのように関わっているのか、最近の研究を交えながらご紹介していきたいと思います。

 

ポイント

  • 睡眠不足によって痛みを感じやすくなることがあるようです。
  • 睡眠が不足することで神経伝達や脳の働きにも変化が生じるようです。
  • 睡眠が足りていない膝や肩など怪我のリスクがあがる傾向にあるようです。

 

 

睡眠と痛みの関係性

睡眠には様々な役割がありますが、怪我の修復や痛みの改善などもそのひとつとして考えられています。

 

睡眠不足と痛み

睡眠が足りていないと怪我の痛みが増幅することがあるかもしれません。

  • 睡眠不足で痛みを感じやすくなることが報告されています1〜3
  • 慢性的な腰痛を抱えている人達において睡眠不足と痛みに相関関係がみられたことが報告されています4・5

このように睡眠不足が痛みの増幅につながることがあるようです。

 

睡眠不足による神経伝達の変化

睡眠不足によって神経伝達に変化が生じることもあるようです。

痛みとシナプス

  • 睡眠不足を抱えている人の手の甲にレーザーを照射した時に、抹消神経における活動電位の反応が大きい傾向にあるようです
  • 痛みを強く感じる人は、レーザー照射による抹消神経における活動電位の反応が大きい傾向にあることが報告されています6・7
  • 一般的に睡眠不足は脳の代謝の低下や、脳活動の低下につながると考えられています

このように同じ刺激を与えられたとしても、睡眠不足により過剰な神経伝達が引き起こされることもあるかもしれません。

 

睡眠不足と神経伝達物質

一般的にドーパミンは快感や幸福感などと関係していますが、睡眠や体内リズムなどにも関係していると考えられ、鎮痛効果と関わりのあるセロトニンなどにも影響を及ぼす可能性があります10

ドーパミン

 

睡眠不足は麻薬性鎮痛物質などと言われるオピオイドの働きに影響を与える可能性もあるようです10

ただ、これらの神経伝達の働きに関する強い科学的根拠はみられず、あくまでひとつの考え方にすぎないようです。

 

睡眠と怪我のリスク

睡眠不足は痛みだけでなく、怪我のリスクを高める可能性があります。

  • 睡眠時間が8時間以下の子供は怪我のリスクが1.7倍高くなるという研究結果もあるそうです11。この研究はオンラインでのアンケートによって行われており、証明力がそこまで強いわけでありません。
  • 一方で睡眠と怪我の関係がみられなかったという研究結果もありますが12、怪我のリスクと関係あるとする研究結果のほうが多いことがシステマティックレビューで明らかになっています13

このように睡眠不足が怪我につながる可能性があるわけです。

 

睡眠時間の目安

人によって適切な睡眠時間が違うという個人差がありますが、あくまで科学的には8時間以上の睡眠が望ましいとされているようです14

特に若いアスリートはより多くの睡眠時間が必要になるようで、対象者や状況によって変わってくることもあります。

 

世界的に有名なスター選手も8時間や10時間、人によっては12時間睡眠など意外と多くの睡眠時間を確保しているようです15

有名選手がやっていることというのはネットの情報だったり、統計を取っていなかったりと、客観性に欠けることが多く、そこまで信頼できるわけではありませんが・・・。

 

現代社会を生きる人達は色々と忙しいこともあり、十分な睡眠時間を確保できないこともあるかと思います。

また、短い睡眠時間で高いパフォーマンスを発揮している人もいて、たくさん寝ることは甘えているんじゃないか?と思えてしまうこともあるかもしれません。

それでも他の人がどうこうよりも、どの睡眠時間がベストコンディションを保てるのか?と自分自身の傾向を掴むことが大切になってくるかと思います。

 

まとめ

睡眠不足によって痛みを感じやすくなったり、怪我をしやすくなったりすることがあります。十分な睡眠時間を確保することは良いコンディションを保つためにとても大切です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Onen SH, Alloui A, Gross A, Eschallier A, Dubray C. The effects of total sleep deprivation, selective sleep interruption and sleep recovery on pain tolerance thresholds in healthy subjects. J Sleep Res. 2001;10(1):35-42. doi:10.1046/j.1365-2869.2001.00240.x
  2. Schuh-Hofer S, Wodarski R, Pfau DB, et al. One night of total sleep deprivation promotes a state of generalized hyperalgesia: a surrogate pain model to study the relationship of insomnia and pain. Pain. 2013;154(9):1613-1621. doi:10.1016/j.pain.2013.04.046
  3. Roehrs T, Hyde M, Blaisdell B, Greenwald M, Roth T. Sleep loss and REM sleep loss are hyperalgesic. Sleep. 2006;29(2):145-151. doi:10.1093/sleep/29.2.145
  4. Tang NKY, Wright KJ, Salkovskis PM. Prevalence and correlates of clinical insomnia co-occurring with chronic back pain. J Sleep Res. 2007;16(1):85-95. doi:10.1111/j.1365-2869.2007.00571.x
  5. Gerhart JI, Burns JW, Post KM, et al. Relationships Between Sleep Quality and Pain-Related Factors for People with Chronic Low Back Pain: Tests of Reciprocal and Time of Day Effects. Ann Behav Med. 2017;51(3):365-375. doi:10.1007/s12160-016-9860-2
  6. Tiede W, Magerl W, Baumgärtner U, Durrer B, Ehlert U, Treede R-D. Sleep restriction attenuates amplitudes and attentional modulation of pain-related evoked potentials, but augments pain ratings in healthy volunteers. Pain. 2010;148(1):36-42. doi:10.1016/j.pain.2009.08.029
  7. Schmahl C, Greffrath W, Baumgärtner U, et al. Differential nociceptive deficits in patients with borderline personality disorder and self-injurious behavior: laser-evoked potentials, spatial discrimination of noxious stimuli, and pain ratings. Pain. 2004;110(1-2):470-479. doi:10.1016/j.pain.2004.04.035
  8. Wu JC, Gillin JC, Buchsbaum MS, et al. The effect of sleep deprivation on cerebral glucose metabolic rate in normal humans assessed with positron emission tomography. Sleep. 1991;14(2):155-162.
  9. Drummond SP, Brown GG, Stricker JL, Buxton RB, Wong EC, Gillin JC. Sleep deprivation-induced reduction in cortical functional response to serial subtraction. Neuroreport. 1999;10(18):3745-3748. doi:10.1097/00001756-199912160-00004
  10. Finan PH, Goodin BR, Smith MT. The association of sleep and pain: An update and a path forward. J Pain. 2013;14(12):1539-1552. doi:10.1016/j.jpain.2013.08.007
  11. Milewski MD, Skaggs DL, Bishop GA, et al. Chronic lack of sleep is associated with increased sports injuries in adolescent athletes. J Pediatr Orthop. 2014;34(2):129-133. doi:10.1097/BPO.0000000000000151
  12. Burke TM, Lisman PJ, Maguire K, et al. Examination of Sleep and Injury Among College Football Athletes. J Strength Cond Res. 2020;34(3):609-616. doi:10.1519/JSC.0000000000003464
  13. Gao B, Dwivedi S, Milewski MD, Cruz AI. Lack of Sleep and Sports Injuries in Adolescents: A Systematic Review and Meta-analysis. J Pediatr Orthop. 2019;39(5):e324-e333. doi:10.1097/BPO.0000000000001306
  14. Simpson NS, Gibbs EL, Matheson GO. Optimizing sleep to maximize performance: implications and recommendations for elite athletes. Scand J Med Sci Sports. 2017;27(3):266-274. doi:10.1111/sms.12703
  15. https://www.huffpost.com/entry/these-famous-athletes-rely-on-sleep_n_5659345

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